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「あの、ハズミから少し聞いたんだけど、わたしが操られていたって言うのは、本当なの?」
「それは残念ながら、本当だね」
コウガが苦笑しながら、答えた。
「わっわたしは一体、何に操られていたと言うの?」
答えが返ってきても、未だ信じられなかった。
「じゃあオレから説明しようか? マカに依頼されて、キミのことを一番知っているのは、オレだと思うし」
「…だな。じゃあコウガ、お前が説明してやれ」
「うん。じゃあまず、キミが亡くなった時のことから話をはじめようか」
「わたしが死んだ時…?」
どうしてそこが原点なのだろう?
始まりはわたしが都市伝説になったところじゃないんだろうか?
「ナナオ。キミは生前、学校からイジメを受けて、別の所に通っていただろう?」
「えっええ…」
それは小説にも書いていたことだった。
高校を入学してすぐ、イジメに合ったわたしは、親や学校の先生の勧めで、とある施設に通っていた。
そこはわたしみたいに学校でイジメを受けていたコや、一般的に問題視された子供が集まる所だった。
そこに通えば、高校に通ったことと同じことになると言われ、数ヶ月間、通っていたのだ。
「キミはそこを、死ぬ直前まで通っていたよね?」
「…それが何? あの施設では別におかしなことなんて…」
「残念ながら、あったんだよ」
「…えっ?」
コウガはニッコリ笑顔で話を続ける。
「そこはね、キミみたいないわゆる学校で問題児になっている生徒達が集まっていた。そういうコ達は多かれ少なかれ、心に闇を持っていただろう?」
「そっれは…」
―否定はできなかった。
学校から、親から邪魔者として弾かれてしまったのだ。
その現実が、簡単には受け入れられない人は多かった。
わたしも…そう、だったから。
「その施設、実はちょっとオカルトが絡んでいてね。キミが記憶が無いまま操られていたのも、そこに通っていたせいなんだ」
「オカルト? でもそんなっ、普通の施設だった…」
「普通の施設には、黒い十字架なんてないと思わなかった?」
黒い…十字架?
…言われて、思い出す。
あの施設…一見は教会のように見えた。
白くて、キレイなステンドグラスがある教会…。
……でも、あそこの大人達は、黒き十字架に祈りを捧げて……。
「あっ、あっ…あああああっ!」
強く痛み出す頭。
フラッシュバックする記憶。
次から次へと、封じられていた記憶が溢れ出す。
そして耳の奥からよみがえる、一人の女性の優しげな表情と声。
―復讐、したくはない?―




