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いつもの暗い空間の中に戻ってきても、マカと過ごした日々を思い出していた。
しばらく留守にしていたせいか、アクセスしてくる人はいなかった。
でも今は…それがありがたい。
また昔と同じことをやれるのかと言えば、正直、自信がなかったからだ。
「ダメだなぁ。わたし…」
マカの前で、バカバカしいことを誇らしげに語ったのに…。
それをやり遂げる心の強さは無いのだろうか?
「ふう…」
誰も何も無い空間で、膝を抱える。
バチッ
「えっ?」
暗い空間に、白い火花が散った。
バチバチっバチィッ!
「きゃあっ!」
白い閃光は徐々に大きくなり、音も大きくなった。
「あっ、ゴメンゴメン。驚かせた?」
その白い閃光から、何とハズミが現れた!
「えっ…ええっ!?」
「迎えに来たよ、ナナオ。キミはこんな所にいちゃいけない」
人なつっこい笑みを浮かべ、ハズミはわたしに手を差し伸べる。
「マカが待っている。帰ろう?」
「マカ…が?」
「うん。ナナオを本当の意味で開放する為に、このサイトのことを詳しく調べていたんだ。だから今まで時間がかかった」
ふとハズミは険しい表情で、周囲を見回す。
「こんな所に女の子一人を閉じ込めるなんて、ヒドイやり方だ」
「えっ…? どっどういう意味?」
「あまり時間がないから、短く説明するね。―ナナオ、キミは操られているんだ」
「操られて…?」
それはマカにも聞かれた。
誰かの、何かの差し金かと…。
「ちっ違うわ! わたしはわたしの意思で…」
「じゃあ聞くけど、キミは生前、何か特別な能力を持っていた?」
「それは…ないけど」
「そうだね。キミは普通の人間だった」
ハズミは分かっているように、頷く。
「だからこそおかしいと思わないか? キミが死んだのは、そもそも近年じゃない。生前のキミは、今のやり方で人を殺そうだなんて思っていたのか?」
「そっそれは…」
わたしはわたしをイジメた人間達を殺したかった。
それにウソはない。
けれど他の何の関係もない人を、不幸にして苦しめて殺したかったワケじゃない。
「それにナナオ、キミは自分が取り付いて殺した人間がどういう人間だったのか、知っていた?」
「えっ?」
ハズミの言いたいことが分からない。
「どういうって…ただ単に、わたしのサイトにアクセスして、小説を読んだ読者の一人…」
「じゃない。そうじゃないんだ」
ハズミは苦しそうに、首を横に振った。
「キミが殺してきたのは、イジメをしていた人間なんだ。つまり…キミが憎しみの対象としていた人だね」




