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「…そうか。ナナオは元に戻ったんだね」
「ああ」
「でも驚いた」
「何がだ?」
「てっきり無理やりにでも引き止めるのかと思ってたから」
コウガはパソコンの画面の向こうのマカに、ニヤッと笑って見せる。
「割と気に入っていたんじゃないの? ナナオのこと」
「やかましい。それより追加の情報をとっとと寄越せ」
「はいはい」
コウガは苦笑しながら、キーボードを操作する。
「…よし。これで良いはずだよ」
「ああ、ちゃんと送られてきた」
マカも自分のパソコンを操作する。
「マカの依頼はなかなか楽しめたよ」
「そりゃあどうも。こちらはこれから動かなければならないがな」
今、マカの後ろにはハズミとソウマの二人が控えている。
「携帯彼氏か…。便利そうで良いね」
コウガの無邪気な笑みに、ハズミは苦笑して肩を竦め、マミヤは僅かに眉を寄せた。
「便利なものが好きだからな。…っとよし。それじゃあコウガにシキ、お前達はこれから自由だ。好きに生きると良い」
「それはどうも。良かったね、シキ」
相変わらずコウガの背後にいるシキは、だが硬い表情を崩さない。
「無愛想な相棒でゴメンね? これでも一応感謝はしているから」
「…まあ本当に一応だろうな。まっ、別に構わんが。とりあえず、今回はご苦労」
「いえいえ。また何かあったら、ぜひ連絡を」
「ああ」
そして二人の通信は切られた。
マカは次に、コウガから送られてきた情報を、甥のセツカに送る。
「やれやれ…。パソコンの画面ばかり見ていたせいで、眼がショボショボするな」
そう言いつつも、キーボードを叩く手は止まらない。
「マカ。ナナオが帰る道も、セツカに作らせたんだって?」
パソコンの画面を覗き込みながら、ハズミが声をかける。
「ああ、まずコウガにナナオのサイトへのアクセス法を探り出してもらい、そこからセツカに依頼した」
「セツカはそういうの得意だからな」
マミヤは肩を竦めた。
「お前達にも同じ方法を使ったからな。…っとコレで良いだろう」
キーボードを打ち終えたマカは、ソファーに背をあずける。
「ハズミ、悪いが生クリーム入りのアイスココアを頼む」
「夜中に甘い物は控えた方が良いんじゃないの?」
そう言いつつもハズミはキッチンへ向かう。
「頭を使いすぎた。セツカが実家に帰省していたから、連絡を取るのが遅くなったんだ」
「マカは帰らなかったんだって? ソウマさんが嘆いていたよ」
「そう言うな、マミヤ。気が向いたら帰ることにしているんだ」
「相変わらず気まぐれだな」
マミヤはため息を付きながら、マカの斜め向かいのソファーに座る。




