ナナオの居場所
けれど暗い気持ちになっているヒマもなく、マカは活き活きとなっていく。
持ち帰れる物は袋に次々と入れていき、その場で食べなければならない物は食べていった。
それは例えばチョコバナナやクレープ、カキ氷にリンゴ飴など、甘い物ばかり。
「マカぁ、口の中が甘いよぉ」
「しょっぱいものは家に帰ってからな。ほれ、後もう少しで買い物は終わる」
マカは本当に片っ端から買っていく。
全種類を制覇するのが、いつものお祭りの参加の仕方らしい。
…いつもは誰が彼女に付き合っているんだろう?
と言うか、さっきのマカの豹変ぶりを見ると、普通の人間の前では大人しくしているのかもしれない。
大きいと思っていたナイロンの袋は、あっと言う間に満杯になった。
空いている手もわたあめの袋や水風船を持っているし、帰りはヨロヨロしていた。
「お帰りなさい。また今年も買いましたねぇ」
「今年の味はまあまあだな。B級だから、腹がふくらめば良いか」
ソウマに荷物をあずけ、肩を鳴らしながらマカは庭に出た。
「ああ、ナナオさんの荷物も下ろして良いですよ。今から私が持っていきますから」
「はっはい…」
わたしはフラフラしながらマカの後を追った。
庭は洗濯物を干す台の他、イスとテーブルのセットもある。
芝生や鉢植えもあるけれど、…池や木まであるのは何故?
「ここって最上階なのよね? だからこんなのまであるの?」
「いや? 全フロアには同じ物がある。ちなみにこのマンションはフロアに一室ずつ貸し出してはいない。フロア一つを一室として、貸し出しているんだ」
つまり、部屋ではなくフロアカウント?
…お金持ちって…。
「ここはウチの血族の所有しているマンションでしてね。普通のマンションとは違うんですよ」
ソウマさんが苦笑しながらやって来た。
大皿に買ってきた食品を載せて。
「ソウマ、ラムネは?」
「はいはい」
マカはラムネも買っていた。
ソウマさんから受け取り、二人で開けた。
「んじゃ、ナナオ」
マカがビンを持ち上げたので、わたしも同じようにする。
「乾杯」
「ふふっ。乾杯」
ビンが触れ合った瞬間、夜空に花火がうち上がった。
ひゅるるる…ドォーン!
「わあ!」
「おっ。始まったな」
マカの言った通り、ここから花火は良く見えた。
次から次へと上がっていく中、マカは花火を見つつ屋台で買った食品を食べていく。
気付けば半分以上も減っていた。
「わっ!? もうこんなに食べたの?」




