相反する二人の性格
その後、ソウマさんに着付けを直してもらい、髪も飾った後、マカの前に出た。
「どう? マカ」
「ああ、なかなか似合っている。それじゃあ行こうか」
「うん!」
「ソウマ。留守番頼んだぞ」
「はいはい。楽しんできてくださいね」
ソウマさんに見送られて、わたしはマカと共にマンションの外に出た。
けれど何だか居心地が悪くて、思わずキョロキョロしてしまう。
「どうした?」
「えっと…本当にわたしの姿、普通の人にも見えているのかなぁって」
「見えているさ。今、お前の体は実体化しているも同然だからな。なのでそんなキョロキョロしていると、逆におかしいぞ」
「うっ…。そっそうね」
わたしは顔を引き締め、マカの少し後ろを歩く。
「お祭りの場所って、遠いの?」
「いや、すぐ近くだ。川原と公園がつながっている場所があってな。そこに屋台が出る」
「うわぁ、楽しみ! マカは何食べたい?」
「カキ氷と焼きそば」
「わたしは久しぶりにわたあめ食べたいなぁ」
「買ってやるから、はぐれるなよ?」
「うん!」
不思議なことに、マカは夕闇の中でも強く存在感を放っている。
だから見失っても、すぐに見つけられるだろう。
「あっ、あと知り合いに会うかもしれんが、黙って私の言うことに頷いておけ」
「そうだね、そういう可能性もあるのよね。設定はどうする?」
「田舎から遊びに来た親戚で良いだろう」
…遊びに来た親戚、まで良いけれど、田舎って…。
そんなに田舎臭いかな? わたし。
「ほれ、そろそろ見えてきたぞ」
「わあっ!」
公園の入口近くになると、祭囃子や提灯の明かりが見えてくる。
それに屋台の良い匂いもしてくる。
大勢の人が、吸い込まれるように公園の中へ入っていく。
「あの公園の奥に川原があってな。そこで花火が見れるが…人が多い。花火はウチの庭で見よう」
…そうだった。
マカのマンションには、ベランダではなく庭がある。
「あそこからの方が良く見えるし、静かだ。ここではある程度飲み食いして、土産も買って、花火を見よう」
「うん! 楽しみ」
マカは淡々と語るけれど、その横顔はどこか嬉しそう。
「あっ、ソウマさんのお土産も買わなきゃね。ソウマさんは何が好きなの?」
「ヤツは雑食だから、基本何でも食べる。まあ持ち帰れるものをやれば良いさ」
「うっうん…」
結構な言われ方だなぁ…。
でもさっきの二人を見ると、こういう会話は日常茶飯事なんだろう。
「あっ、でもカバン持って来れば良かったね」
お土産を持ち帰るにしても、両手が塞がっているとちょっとカッコ悪い。




