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マカの体調の悪さは、夜更しのせいかと思っていた。
いつもわたしが先に寝てしまうので、マカがどのぐらい後で眠っているのか分からなかった。
けれど今の言葉を聞いて、不安が過ぎる。
「んっ? そんなに顔色悪いか?」
マカは自分の顔を両手で包み込む。
「…少なくとも、今のわたしよりも白いわよ」
「そうだったか。最近、デスクワークが多くてな。夜更かししていたせいだろう。気にするな」
「うっうん…」
本当は多分、わたしのせいなんだろう。
ずっと気の力を送り続けていれば、いくらマカでも体調を崩す。
けれどそれを言っても、マカは否定するだろう。
そのことが嬉しくもあり、また申し訳もなかった。
夕方近くになり、一人の青年がマカの元に訪れた。
「はじめまして、ナナオさん。私はソウマと言うものです」
柔らかな物腰と雰囲気を持つソウマさんは、頭を下げてきた。
「あっ、どうも」
「ハズミとマミヤからお噂は聞いております。ウチのマカがいろいろご面倒をおかけしているようですね」
「…ソウマ。久しぶりに会うイトコを前に、言う言葉じゃないだろう?」
「イトコっ!?」
あまりに雰囲気の違う二人に、目が丸くなる。
「歳は少し離れていますけどね。私もマカと同じ同属のモノです。もっとも彼女は次期当主、私はしがない小物屋の店主ですけどね」
「その嫌味ったらしい言い方をやめんかっ!」
ビュッ
「おっと」
バシンッ
マカが手元にあった新聞を投げつけたものの、ソウマさんは軽くよけて、新聞は壁にぶつかった。
…って言うか、後ろから投げつけられたのに、何でよけられたんだろう?
後頭部に目でもあるんだろうか?
……マカの血縁者なら、ありうるかも。
「おい、ナナオ。お前何かおかしなこと、考えていないか?」
ぎくっ
「あっ、わたし、お茶入れてくるね」
わたしは急いでキッチンに逃げた。
「ふふっ。相変わらず元気そうで良かったですよ、マカ。顔色は少々悪いみたいですけどね」
「余計なお世話だっ! それより浴衣、持ってきたんだろうな?」
「ちゃんと持って着ましたよ」
ソウマさんの両手には、二つの紙袋がある。
中から取り出したのは、白い箱だった。




