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「マカって学校の成績、良さそうだよね」
「…上位に入らないと、実家に戻される条件だからな」
不意に険しい声で、マカは言った。
「マカの実家って、ここの近く?」
「距離的にはそんなんでも無いが…戻されたら、同属が経営する学校へ入れられる。そこは数多くの同属がいてな。気が休まることがなさそうだ」
マカはイヤ~そうに顔をしかめている。
どうやら同属のことを、あまり好きではないらしい。
「…ねぇ、マカ」
「何だ?」
「わたし、何時までに答えを出したら良い?」
「メイド達が戻ってくるまで、後一週間だ。その間に頼む」
「……分かった」
マカの声も表情も淡々としている。
だからわたしも冷静に考えなければならない。
わたしの存在を、どうするかを―。
―その夜も、わたしはマカより先に眠っていた。
マカはずっとパソコンに向かいっぱなし。
けれど今は画面に映る人物と話をしている。
「―そうか。やはり直接には関わりはなかったか」
「うん。シキにもいろいろ動いてもらったんだけどね。マカの同属や、また敵対勢力が動いたってことはなさそうだ」
コウガは僅かに難しそうな顔をしながら、マカを真っ直ぐに見つめる。
「ただ携帯彼氏のことを考えると、そういうモノを引き付けてしまうのが、マカの性質みたいなモノじゃないかと考えてる」
「寝言は寝てから言えっ! それとも眠れないほど刺客を送ってほしいか?」
「それは謹んでお断りします」
コウガは素直に頭を下げた。
「まっ、とりあえず関係は無かったってことで、一安心して良いと思うよ」
「そうか。では引き続き、情報の調査を頼む」
「―『小説』のあり方について、だね。でもそれなら本人に聞くのが一番早いと思うけど?」
「ナナオはあくまでも自分一人で行なっていると言ってはいるが…。どうにもそれだけじゃない気がするんだ」
マカは腕を組み、眼をつり上げた。
「そもそも死んだ人間が、その怨みの念から人を殺すということは有り得ない。誰かが…そう、人成らざる力を持つモノが、知恵と力を貸さない限り、ここまで大きくなることはないだろう」
「…まあそれには同感かな。いくら何でも問題が大きすぎる。ここまで広まるってことは、誰かの策略が動いていると考えて良いだろう」




