マカとの生活
結局その後、マカは長電話をしていた。
ハズミとマミヤは仕事があるというので、マカの電話が終わる前に帰ってしまった。
わたしはとりあえず、メイド服に着替えた。
「…何かちょっと、恥ずかしい」
白と黒のメイド服は、夏服なので袖やスカートの丈が短い。
でも薄くて着やすく、動きやすい。
等身大の鏡の前で、わたしは自分の全身を見た。
白のカチューシャを付けて、長い後ろ髪は二つの三つ編みにした。
メイド服と一緒に、白くて長いリボンも入っていたので、それを使った。
リボンは細かいレース編みで、多分買おうと思ったらスゴイ値段がしそうなぐらい、上品な物だった。
「照れちゃうけど…着られて嬉しいな」
鏡に映るわたしは、頬を赤く染め、照れた笑みを浮かべている。
どうやら昨夜、寝ている間に再びマカに力を注がれていたおかげで、昨日よりはっきりとした存在になっている。
顔色も普通の人間と変わらない。
感触も昨日よりはっきりと感じられるようになった。
「ナナオ、着替えたか?」
「あっ、うん」
声もはっきりと通る。
こんなに大きな声で、いろんなことがしゃべることができるなんて、生前ではありえなかった。
ふすまを開けて、寝室に入ってきたマカは、わたしを見て頷いた。
「ソウマにしては良い物を選んだな。それで家事はこなせそうか?」
「ええ。動きやすいし、大丈夫だと思うわ」
「多分、防水加工もされていると思うから、水仕事もやれるだろう」
…と言うことは、水仕事も今後やらせるつもりなのね。
「では早速夕食を作ってくれ」
「分かった。今夜は冷しゃぶで良い? しゃぶしゃぶ用の良い豚肉があったの。早く食べないと悪くなっちゃうし」
「良いな。タレはポン酢で頼む」
「はーい」
わたしは意気揚々とキッチンへ向かった。
マカはソファーセットで、またパソコンに向かっている。
「マカは夏休みの宿題、終わったの?」
「あんなの七月に終わらせた。というより、ウチの学校は三年生にはあまり出さないんだ。受験や就職活動が控えているからな」
「そうなんだ」
高校一年で命を絶ったわたしには、知り得なかったことだ。
「マカは受験するの?」
「ああ。大学へ進むつもりだ」




