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マミヤもまた、苦笑する。
そこへ音楽が聞こえてきた。
「おっと、私のケータイだ。少し席を外す」
「あいよ」
「分かった」
ハズミとマミヤに見送られながら、マカは寝室へと行った。
「ナナオ、どの服が良い? 好みに合っていないかもしれないが、とりあえずは着ていてくれ」
「うっうん…」
マミヤのススメで、わたしは服をいろいろと見た。
メイド服に浴衣、夏物のワンピース…がそれぞれ3着ずつの、合計9着。
「マカが着やすい物が好きだから、そういう服を持ってきたんだ。好みがあったら言ってよ。次からは合うようなの持ってくるからさ」
ハズミは人なつこい笑みを浮かべた。
「うっうん、ありがとう。…ところで二人に聞きたいことがあるんだけど」
「んっ?」
「何だ?」
「ハズミもマミヤも、元は携帯彼氏だったのよね? わたしはパソコンや携帯電話と関連があるモノだから、少ししか知らないんだけど…」
わたしは自分の胸元を握り締め、伺うように二人の顔を見た。
「携帯彼氏、ダウンロードした女の子達は次々に死んでいくって話だったんだけど…。それは本当なの?」
二人は顔を見合わせた後、それぞれ違う反応を見せた。
「ああ、そうだよ」
ハズミはひょうひょうとし、マミヤは暗い面持ちとなった。
「オレらは自分達をダウンロードした女の子達に死をもたらしてきた。それが通用しなかったのは、マカだけだよ」
「…携帯彼氏であった時、そのことをマカに怒られた?」
「…あ~、まあな。卑怯、だとは言われた」
「卑怯?」
「『お前は良い顔を見せるが、心の中では女達をバカにしている』ってさ。まあその頃のオレは確かにそうだったから、否定はしなかったけど」
ハズミは遠い目をして、窓の外に視線を向けた。
今日も良く晴れていて、洗濯物が風で気持ち良さそうに揺れている。
「別に殺したいっていう殺意があったワケじゃなかった。けれど自分が原因で死んでも、何とも思っていなかった。自分とは全く無関係のコでもさ」
それは…わたしにも覚えがある感情だ。
わたしも自分が原因で人が死んでも、何も思えなかった。
だから今、こうして存在しているワケだけど…。
「でもマカが怒ったのは、人を殺すことじゃない。目的もなく、人を殺すことだった」




