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カタカタ…
マカはリビングで相変わらずパソコンの画面を見ていた。
が、ふとその手を止める。
画面が一瞬にして黒に染まった。
するとぐにゃり…と歪み、やがて一人の人物が画面に映った。
「―久しいな、コウガ」
「今晩は、マカ。まさかキミの方から連絡をくれるとは…。何かあったの?」
「ちょっと調べて欲しいことがあってな。それを成してくれたのなら、お前達への追っ手を引き上げさせよう」
「それは良いお話だね。シキ」
コウガの後ろには、赤い髪と眼を持つ青年・シキがいる。
「どこまで本当かは分からないがな」
シキは歪んだ笑みを浮かべて見せる。
「信じる・信じないはそっちに任せる。で、どうだ? コウガ」
「うん、良いよ。逃亡生活にもうんざりしていたしね。で、どんな依頼?」
コウガが賛成したことに、シキは何も言わなかった。
なのでマカは話を進める。
「今、サイトで話題になっている都市伝説がある。午前0時にしかアクセスできないサイトがあり、そこには1つの小説がある。それを読んだ者の元へ、作者が現れるという話だ」
画面向こうのコウガはふと顔をしかめ、腕を組んだ。
「…ああ、聞いたことあるな。ちょっとした騒ぎにもなっているらしい」
「でな。今現在、私の元にはその作者が来ている」
「ええっ!? だってその作者って当に死んでいて、眼を付けられた読者は小説に出てくる死に方をして亡くなるって話だよ?」
「みたいだな。だがそんなの私には効くはずないだろう?」
眼を丸くするコウガとは反対に、マカはけろっと言った。
「…まっ、シキの同属ならそうだろうね。それで調べてほしいことでもあるの?」
「ああ。まずその小説についての、確かな情報がほしい。どうにも引っかかるんだ」
マカは眼を細め、俯く。
「私を狙って訪れたワケではなさそうだが、こういうのも一つの縁だ。それがどういう形で結びついているのか、知っておいた方が良いだろう」
「…なるほど。作者自身は覚えがなくても、その裏や影に何者かがいるかもしれない可能性はあるね」
コウガは神妙な顔つきで頷いた。
「良いよ。調べとく。情報の受け渡し方法はメールで良いかな?」
「このパソコンに頼む。…あっ、それと一応聞いておくがな」
「うん」
マカは思いっきりイヤ~そうな顔を見せた。
「…お前達の差し金じゃないだろうな?」
「そんなわけないだろうっ!」
コウガは激怒したものの、シキはうんざりしたため息を吐いた。




