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『…生前?』
ふととんでもない言葉を聞いたような…。
「ああ。アイツらも死んでいる。死後何年経過しているかは知らんが、まあ近年の話だろう」
肉体は無いはずなのに、血の気が下がっていく感じがする。
『えっと……じゃあ、あの二人って…』
「死んでから『携帯彼氏』という存在になって、そっからウチの眷属なったモノだ。今では普通の人間と同じように行動できる」
携帯彼氏…ちょっと聞き覚えがあるかも。
でも彼等がそういう存在だとすれば…。
『マカ、あなたは普通の人間ではないのね?』
僅かに顔をしかめながら尋ねると、マカは首をかしげて見せた。
「今気付いたのか? 出会った最初に気付かれていると思ったのに」
がくっ、と体の力が抜けた。
『そっそりゃあ何かおかしな人だとは思っていたけど…』
「おかしな人も何も…。私は人成らざるモノの血族の次期当主よ。同属達は人間ではまず有り得ない力を使ったり、体質を持ったりしている。だが生活は普通の人間とほとんど変わらない」
『じゃあマカは普通に高校に通っているのね? あの二人は?』
「ハズミとマミヤは元は普通の人間だ。それにすでに死んでいる者。表立っては行動していない」
…つまり学校には通っていないということか。
「…とりあえず聞いておくが」
ふとマカは真剣な眼差しを向けてきた。
「お前、刺客ではないのか?」
『なっ…! それは違うわ! 確かにあの小説を読んだ人の所へは現れ出るけど…』
そして小説に出てくるような死に方をさせるけれども…。
「私を誰かと分かっていて、誰かの命令で来たわけではないのだな?」
『それは確かよ。わたしはあなたが何モノかなんて知らなかったし…』
それにそもそも、わたし一人で行動していた。
だから誰の命令も受けてはいないけれど…。
「なら良い。そろそろ昼食を作ってくれ。腹が減った」
『うっうん』
「昼は麺が良いな」
『じゃあパスタでも作る?』
「冷やし、で頼む」
『分かった』
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、わたしはキッチンへ向かった。
…そう、全部わたし一人で行なっていること。
そこに誰の介入も…ない、はずだ。




