第十九話 生存者
少女は長らく聞いていない鳥たちのさえずりで目が覚める。綺麗に着せられた服に、フカフカの毛布、そして屋敷の一室、目が覚めた少女は初めて見る景色に激しく動揺する。
キキィ
部屋のドアから少年が入ってきた。
「あれ?起きてる……。起きてる!!よかったぁ」
嬉しそうに笑う少年は崩れ落ち。安堵の笑みを少女に向ける。
「キャアアアーーーーー!!!!!!」
少女の叫び声が屋敷中に響く。
シダがグレシィルとバルベルトとの対峙後へと少し前に遡る
破られた天井から差し込む月光に照らされて地下室にシダの影があった。
「この子もダメだったか……」
シダは地下室に囚われていた人達の中に生存者がいるか探していた。地下室で亡くなった人達の多くが乱暴に扱われ、服を着ることも、まともに食事がとれることさえも許されず瘦せ細りミイラの様になっていた。死体に群がり、蝕む虫たちを追い払いながらシダはただひたすらに生存者を信じて死体の山を漁っている。
ピクリと僅かに動く手のひらをシダは見逃さなかった。死体の山から離れ、倒れる少女は酷く窶れ髪も虱だらけでボサボサになりとても生きているとは思えない少女に必死に声を掛け続ける。それに答えるかのように少し、ほんの少し僅か力でシダの手を握った。
「、、生きてる…!!生きてる!!しっかりしろ!まだ死んじゃダメだ!まだ、そんなのダメだ!!!」
少女の痩せ細った体の胸に耳をあて生きていることだけを信じて回復魔法を使い続け、少しづつ少女の体の鼓動は強くなる。
「…………ぁ……」
少女は小さな声をあげた。
その声を聞き取ったシダは少女を抱えて屋敷へと全速力で走り続けた。
屋敷の壁を軽々と超え自室の窓から侵入する。
「って感じで君を助けんたんだー。あっ、この話は他の人に離したらダメだよ?」
ベットで怯える少女はシダの言うことを聞かず、毛布に包っていた。
「そうなるよね……。僕のことは気にせずにここでのんびりしてるといいよ。あーー、でも本当に君は今の話を他の人にしたらダメだよ?これだけは守ってね。もしどうやって助かったか聞かれたら自分で逃げだしてきた。って言えば何とかなるから。それじゃあ、僕はそろそろ行くねー」
シダは怯える少女のベットにご飯と新しい毛布を置いて部屋を出ようとする。
ガチャリ
部屋にミリスが息を切らして入ってくる。ミリスは少女を見るなり抱きつき感泣した。
シダはそっと足音を盗み部屋を出た。
<<小僧、あの女に真実を伝えぬままで良いのか?>>
廊下を歩くシダにディアブロシスが問いかける。
「良いんだ。伝えたら俺が国のルールに反する人間だとバレるし、それに俺がグルだと疑われる可能性があるからな」
<<だが、あの女から見た貴様は良いものでは無くなるぞ>>
「良いんだよ。今は家族の無事を存分に喜ぶべきだ」