第十七話 白マントのバルベルト
先制して攻撃を仕掛けたのはバルベルトだった。
『水属性魔法 水銃』
魔法式が刻まれた杖からは放たれた水は鋭く弾丸のような形を作りシダへ目掛けて急接近する。素早く避けたシダに攻撃の隙を与えまいとバルベルトは走り出しシダに杖を振りかざす。
『雷属性魔法 雷撃』
バルベルトの右腕とシダの右腕に稲妻が閃く。刹那、バルベルトはの右腕は体から千切れ、シダの腕に握られていた。
「流石だねぇ。だけど甘いよ!!」
バルベルトは体の一部が欠損した状態で余裕の笑みを浮かべ、白マントで右肩を覆い隠した。自分でマントを払うとバルベルトの腕は完治し、腕も破れた服でさえも何もなかったかのように再生していた。
「それじゃ、これはどうかな!」
『水属性魔法 水砲』
杖に水が収束し、シダの体長と同等の大きさの水球を作り出す。水球は砲丸のごとく放たれシダを天井に叩きつけた。
ドゴォ”ォ”ォォォ
天井を破壊し、地上へとシダを押し上げた。地上に出てもなお水球は空へ目掛け進み続ける。バルベルトは空中で水球を避けるシダに水銃を連発し、一瞬の隙も与えない。地上に着地したシダを確認し、自身も地上へと上がった。
「君ぃ、どうしてそんなに強いんだい?普通の人間なら水銃を避けるなんて芸当はできないし、水砲を受けて無傷なんてことはないんだけどなぁ……?それにその年齢でここまでの魔力制度はちょっとおかしぃんじゃないかい?」
「あんたこそその腕をどうやって生やした?」
「あーこれ?これは僕の――、って言えるかぁ!!まったく、最近の子供は何でもかんでも聞いてばかりで自分で学ぼうとしないのかい?」
呆れたように大きなため息を吐くとコツンと地面を杖で叩いた。
「大洋の支配者たる我が命ずる、王に従う勇敢な兵士たちよ眼前の障壁を喰らい尽くせ。『水属性魔法 鯨波兵』」
バルベルトが詠唱を終えると、バルベルトの下から大量の水が溢れ出し、水で生成された十数メートル程の鯨が二頭現れた。
「じゃあ僕、この後用事あるからまたねー」
「は?」
ニコニコと笑いながらマントで姿を隠すとふわりとマントが宙を舞う。白マントがひらりと地に落ちた時にはバルベルトの姿は無かった。白マントは風に当たると、色とりどりの花びらへと姿を変え、バルベルトの存在した痕跡は完全に消滅した。