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第十六話 出会い②

接近戦。それは魔力や魔法を用いた戦いにより、前の世界のものとは大きく変わった。例えば目の前の女が突き出すであろう右腕の拳。前の世界ではこの速さの攻撃は避けるという選択肢を取らざるを得ない。それは何故か、この速さの攻撃を受けようとすれば体を貫かれ死に至る。だが、この世界ではこの攻撃に対する選択肢は魔法で防御するのも、魔力の動き一つで避けることもできる。


突き出された拳はシダに接触することはなく、シダの背後にある壁に衝突する。拳の衝撃は地下室を大きく揺らし壁を粉砕した。


こいつは血を魔力操作で女性の形を作り、そこに何かしらの魔法を使用することで動いている。つまりこいつは―――、


拳を避けたシダの顔を目掛けて回し蹴りを入れる。回し蹴りを避ける動作をせず、蹴りはシダの右手に掴まった。


「お前、魔力で形を作っているんだろ?」


そう女に問いかけるとシダは嘲る。シダの問いに反応せず女は足を掴むシダの頭へ拳を振り下ろそうとする。しかし、女の体はピタリと固まって、僅かな行動すらも出来ず女は激しく動揺する。


「これは何をしているか分かるか?これはお前の血を魔力で操作しているんだ。お前は自分の血を自在に操り、槍状にして俺に攻撃をしたな。お前は生きていない。だからこそ自分の体の血を大量に放出し、操作できる。そして、お前はそこに転がる男の血を使用することでより魔力の密度の高い血を得た。そしてここで死んだ人間の血を集めお前達はさらに強くなった。だが、その男がいない限りお前は寄生する人間がいないただの血の塊だ。俺がお前の血に触れるだけで、お前は体の操作を奪われる。どうだ??今の気分は?」


山羊の獣の記憶と、地下室に広がる人間を奴隷の様に扱う光景を見たシダは激怒していた。


「なぁ、俺はお前らみたいな存在が大っ嫌いなんだ。俺は今久しぶりに怒っているんだよ。同じようなことで怒るのは基本的にしないが、どうしても許容できないものがある。俺は吐瀉物を煮込んだ様なお前を裁く為に、自分がゴミと同じ事をしない。ではどうするか?お前に一つチャンスをやる。お前の知っている限りのここで死んだ人間の名前と数を教えろ」


「………………」


「あぁ、そうだったな。答えれないなぁ。お前達はここにいる人間が悲鳴と助けを叫ぶ中、ひたすらに犯し、自分達の欲を満たすために殺した。お前が今どんな気持ちかは心底どうでもいいんんだよ。だが、俺はここで死んだ人間と同じ道をお前には辿らせない。だから、お前は死なせないよ。安心しろ。だから地獄に落ちろ」


そう言い放つと女の体はゆっくりと圧縮し始めた。踠く女の体はゆっくりと変形し静かな地下室に助けを求める誰にも届かない無音の叫び声が響いた。



小さな球体となった血は手のひらの上で炎に包み込まれた。




「あーーあ、ダメだよここは僕たち、()()()の敷地なんだから子供には帰ってもらわないと」


地下室の重厚な扉に立つ男がため息を吐いた。


「そもそも、君さぁ…。そこの男が誰か分かっているのかい?」


男がシダに問いかけた。


「あんた、誰だ?」


「そう怒るなよー。僕はバルベリトっていう人間さ!皆は僕を白マントのバルベリトなーーんて名前で呼ぶのさ!!」


バルベルトと名乗る男は羽織る白のマントを自慢し、一回転すると右手に持つ杖をシダに向けた。


「君ぃ、強いねぇ?それに何か別の強い存在を君から感じるね。どうだい?合ってるかい?」


「あんたも強いだろ?この男よりは」


シダはグレシィルの死体を指さした。


「あーその子、死んじゃったんだ。勿体ないねぇ。ただでさえ()()()は人手不足なんだから。ちょっと君ぃ、うちの子達を優しく扱わないと僕が許さないぞー!」


バルベルトは強く地団駄を踏み頬を膨らませた。


「もう!今夜はここに来るだけの予定が一つ仕事が増えたみたいだね…」


二人の強烈な殺気が衝突し、部屋がグラグラと揺れ、部屋中に深い亀裂が入る。


コトンッ


二人の間に小さな石粒が天井から落下したのを皮切りに両者が攻撃の構えを取る。

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