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第十四話 ハ・メルンの教会

<<おい!!起きぬか!!小僧!!>>


「んん……ん」


意識が戻り、目を開けるとさっきまで戦っていた場所から一メートル程離れた木にもたれていた。


「ごめんごめん。魔力が上手く馴染まなくて」


<<全く我が起こさねばそのまま寝て、朝日が昇っておったわ>>


立ち上がると肉塊は形を崩しバラバラになっていた。


「俺はどれくらい気を失っていた?」


<<なに、五分程度だ。気にするほどではない>>


「そうか、まだ朝までは時間があるな。今から向かうところがある」


<<向かうと言っても何処に向かうのだ?>>


あれは、たぶん俺が吸収した魔力に付いていた記憶だ。記憶の中では男が地下室らしき所で実験をしていた。そこには何人もの人間と、多くの動物たちが牢に捕らわれていた。そして俺を牢の中から引きずり出し、台の上に寝かせ何かを注射して記憶は終わった。恐らくあの魂霊(ゴースト)になった人間の最後だ。あの地下室では多くの人間と動物が犠牲になっている。


死んだ人間と動物を実験してさっきの山羊の獣が誕生した。あの数から考えると地下室にはもっと山羊の獣のような奴が多くいる。俺は、、そいつらを救いに行く。


<<その地下室は何処にある?>>


「この森から少し離れたハ・メルンの町だな」


<<少しどころか大分離れておるな小僧…。貴様はシルビオットの授業をちゃんと聞いておるのか?>>


「大丈夫大丈夫。走ればすぐに着くよ」




平原を駆ける風よりも速く突き進む影の後には小さな足跡だけが等間隔に残されいた。


やっぱり走るのがいいな。夜の草原は昼よりも風の音がはっきりと耳に届く。このさらさらとした草や花たちが足に当たる感覚。そしてこの広い平原と無限に広がる星空を独り占めできるというのは俺の心は完璧に満たしてくれる。


なんて考えてたらもう町が見えてきたな。


ここがハ・メルンの町か。想像通りの中世の町って感じだな。レンガを使った家にお店、結構栄えてるんだな。てっきり、屋敷の周辺は何処も田舎の小さな町だと思っていたんだけどなぁ。


初めての町を堪能しながら小奇麗な道を少し歩くと町の中央に教会が姿を現した。


<<ここが関係しているのか?小僧>>


「あぁ、この教会で()()()と会った」


<<小僧、そろそろ時間だ。悪いが我はここで眠ることにする>>


はぁ?このタイミングで言うことじゃないだろ…。ディアブロシスは定期的に眠りにつくことがある。そりゃ生きている以上睡眠は大切だ。だが人の体に入っておいて特に運動や仕事をするわけでもないのに寝るとは…。


だが、これは都合がいい、ここからは人に見せれるような()()じゃないからな。


教会の扉を音をたてないように慎重に押し、そっと中に忍び込んだ。




夜空に浮かぶ月が教会のステンドグラスを照らし教会内を薄い鮮やかな月光が包み込む。教会の奥に佇む女神の像は少し不気味な雰囲気を醸し出している。ゆっくりと周囲を警戒しながら女神像に近づいた。


この世界にも神はいるんだな。俺は神様を信じたりはしないが、古の大戦争が起きた時に神も戦っていたらしいから、きっと存在はするんだろう。一国を滅ぼす程の力を持った種族がいるのだから神だって別に現れたからといって今更驚かないしな。



「おやぁ?おやおやおやぁ?アーーナタ??子供だけで夜のお出掛けはアブナイですガァ。この時間まで女神に祈りをササゲルのは尊敬しますガァ、やはり子供は家に帰るべきデェーース」


教会の入り口から男の声とこちらへ歩く落ちが聞こえた。


「すいません!僕はこの町に迷ってしまって、おばぁちゃんが何かあったら教会の神様にお祈りしなさいと言われていたんです……」


近寄る男にそう言うと男はニタニタと笑い始めた。


「ショウガナイデっっっすネェ……。で、あればぁこの私グレシィル・コンドランテェイドがアナタヲォ、美しく綺麗ナ神の導きをアナタに教えまショウ」


「さぁこの私についてキィテください…」



グレシィルに歩かされて十数分経った頃、町から少し離れた小屋に辿り着いた。


「この場所ガァ、アナタの求める神の導きィデッッッス⁉」


壊れかけた小屋のドアを開け、小屋の中にある地下室へ続くであろう階段へ案内した。


地下室に続く階段を降りしばらく歩くと重厚な扉が俺を待っていた。


「ここがこの場所こそガァ、神の想像する楽園なのデス」


重厚そうな扉を開き二人が部屋へと入った瞬間、グレシィルがシダに手を伸ばす。


グレシィルはがっしりと両手でシダの首を締めあげ言い放つ。


「アナタも私の可愛いペットの一つとナーーリマァス!!私の可愛い可愛い可愛い可愛い可愛いぃぃ!!!アナタをじっくりと開発して可愛がってアゲましょう……」


ガコン!


重厚な扉が大きな音を地下室に響かせながら閉まった。

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