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第二十一話 ③ ルティスのスライム湖

 俺たちはルティス近辺の湖にやってきていた。

 もちろん4人で。


 クエストは討伐クエストで、内容はスライムの討伐である。

 俺が依頼の書かれた張り紙を見て、一番紙がボロボロなものを選んできたのだ。

 それを見たソフィはため息をついて、

 「先輩には申し訳ないという気持ちがないんですか」とまで言っていた。


 一方でお二人は文句なく快諾してくれた。

 ……いや、律さんの態度は快諾とは言えないかもしれない。


 歩く時は大抵ソフィと一緒だったので、4人で並んで歩くのも新鮮な感じはした。

 移動しているときは主に俺とデュオさんが隣に並び、話しているうちに仲良くなれた。

 そこそこ年上のはずだが、距離感が遠いのが逆に話しやすかった。


 ソフィと律さんは両端にいて、ほとんど互いに話そうとはしなかったせいで

 俺とデュオさんが二人で話すしかないかったからというのもあるが。



 楽しい楽しい散歩の時間は終わり、湖に着いた。

 湖のほとりには、依頼の通りゼリー状のモンスター、スライムがぬるぬると動いていた。


「なんか……思ったより気持ち悪いな」


 無色透明のゼリー状のモンスターは何の音もたてず、ただひたすらにそこに存在している。

 そいつらの這った跡が草々をてらてらと光らせていて、なめくじのようだった。


 ソフィの話では、基本的に斬撃は効かず、さらに魔法耐性も高いらしい。

 じゃあ何が効くんだよと言いたいところだが、

 やはり強いモンスターにはそれなりの弱点があるものだ。

 コアと呼ばれるところをつぶしてやると、生命活動を停止させることができるらしい。

 使い古された設定だなぁ。


 弱点が分かっているのなら、どうということはないだろう。

 俺は手当たり次第に小さなスライムたちに切りかかる。

 初めにコアの位置を見定めて、そこに切りかかるだけ。

 訊いていた話とは違い、簡単なお仕事だ。


 一匹、二匹、三匹……

 俺は夢中になって倒しまくっていたが、

 ふと気が付くと俺以外の誰もそんなことをしていないのに気が付いた。

 なんだか生暖かい目で見られている気がする。


「どした……? みんなはやらないのか?」

 俺が三人の方を見ると、三人とも手持無沙汰といった風だった。


 ソフィは申し訳なさそうにおずおずと切り出す。

「地上の小さいものを倒すのに意味がないとは言わないんですけどね。

 でもスライム討伐って、基本的に水中のデカい奴らを倒さないと根本解決しないんです。だから……」


 陸上の雑魚はいつでも倒せるからあとからまとめてでいいという。

 つまり、俺のやってたことは無駄、と。


「先に言ってくれよ……」

「あまりに楽しそうになさっているものですから、邪魔するのも悪いかなと思いまして」

「全く無駄って訳じゃないから。楽しいならやってればいいんじゃない?」


 律さんは確実に傷を抉りに来ている気がする。


 水中に目を向けて、スライムの本体とやらを探す。

「もしかして……これか?」


 俺の足元には、二畳もあろうかという面積のうすーい輪郭を持ったスライムがいた。

 水中でふよふよとして、動こうとしない。


「そうそう。こいつです」

「でっかぁ……こんなデカいのかよ。すげーな」


 地上にいたスライムはせいぜい大きくてもバスケットボール大だったが、これでは人間よりはるかに大きい。


「浅瀬にいるこいつはまだ小さい方です。こんなんでビビってたらだめですよ」

 と、ソフィはからかうように言う。

 ……これで小さい方なのか。


「で? 見つけたは良いけど、どうやって倒すんだ?」


 探した感じコアが見当たらない。

 それに、先ほどまで倒していたスライムたちとは違い、

 あまりにも大きいのであったとしても俺の持っている剣では届かないんじゃないか?


「スライムのコアは、水中にいる状態だと視認性が著しく落ちるんです」

「あー。確かに、コアが見えないな」

「それだけじゃないけどね。

 万一コアを傷つけられても水中であればすぐに回復できるようになっているから、水中では無敵状態みたいなもんよ」


 マジか。

 スライムってそんな強いの?


「ですから、倒すためにはまず水揚げする必要があるんです」


 畳二畳くらいある、このデカさのスライムを水揚げするって……

 普通に考えて不可能じゃないか?


「……だから言いましたよね。

 湖のスライム討伐は本当に大変なクエストなんです。

 湖の中のスライムを全滅させるには、普通は水を全部抜くぐらいしか方法はないですから」


 だからこのクエストを受けた時、ソフィはあんなにぶーぶー言ってきたのか。


 それに加えて、他のスライムが見当たらない。

 俺はたまたま足元のスライムを見つけることができたが、

 結局は全てのスライムの位置を把握する必要がある。

 しかもそれは今見えているスライムよりもはるかに大きいらしい。


「で……他のスライムはどこにいるんだ?」

 俺は湖に目を凝らすも、何も異常がないように見える。


「スライムの成分は基本的に水なんです。

 体液の屈折率がほとんど水と変わらないせいもあって、

 水中のスライムを肉眼で見つけるのはめちゃめちゃ難しいです」

「じゃあ、使えるとしたら魔力感知とか……なのかな」


「うーん……確かにスライムは、コアに魔力をため込んでますから、

 魔力感知は可能です。でも一つ問題があってですね」

「問題って?」


 俺が訊くと、一度魔力感知をやってみるように促される。

 まぁ、言われたならやってみるか。


 俺は昨日の練習を思い出して、魔力に自分の感覚を集中させる。

 いつもやっているような、自分の魔力をコントロールする意識ではなく、周りに意識を……


 向けた瞬間、ドクンと心臓が飛び跳ねるのを感じた。

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