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第十八話 ② 路地裏のストーカー

 目が覚めるとまだ外は明るかった。時刻は昼過ぎ。


 頭はすっきりとしていて、食欲もある。

 気持ちのいい目覚めだ。


 ソフィは……どこかにいってるんだったな。

 スキルが教えてくれればいいんだけど、こういうときは不便だ。


 まぁでも、適当に歩いていれば見つかるだろう。

 ぼちぼち俺もそとを歩いてみるか。


 俺は体を起こし、数分間ぼんやりとして頭が起きるのを待った。



 部屋に鍵を閉めてから外に出る。

 朝に門番に教えてもらった通りの道順で、市場へ向かった。

 


 市場は人がごった返していた。

 魚や野菜特有のにおいがしていて、いかにもといった風だ。


 大声で客を呼び込む店もあれば仕入れた商品を運び込んでいるところもあり、活気にあふれている。

 王国の市場は、敷地面積が広いためかここまで密集していなかったように思う。

 一方このアルネの街は敷地面積が決まっている中でやりくりしているので、むしろこっちの方がにぎわっているような印象を受ける。


 普通の食料品や武具、魔術用品を置いている店もある。

 怪しい露店なんかがあると物珍しさでついつい見てしまい、なんだか買ってみたくなってしまう。


 財布はソフィが持っていったので、今は買えないのだが。


 と、見覚えのある後姿を見つけた。


 ソフィが人込みの中を歩いている。


 声をかけたかったが、騒がしい人混みの中ではおそらく届かないだろう。

 見失わないようにしながら背中を追いかける。


 幸い、ソフィはすぐに人混みを抜けて路地の方へと曲がって行ったのが見えた。

 それに続いて歩いて行く。

 路地は人通りがなく、血気盛んな市場とは打って変わって暗くなっていた。


 ソフィの姿は見えない。


 少し先のある曲がり角まで歩き、周りを見渡す。

 日当たりが悪いせいで湿気がこもりやすいのか、カビ臭い匂いがしている。


 どっちに行ったのだろう。

 そう思ってきょろきょろしていると


「あんた」

 突然、後ろから声をかけられた。


 振り返るとそこには、ソフィと同じくらいの背丈……いや、それよりは少し大きいくらいの、フードをかぶった人物がいた。

 薄茶色のフードを深くかぶっているので、顔までは良く見えない。


 背丈や声の高さからしておそらく女性なのだろうが……

 目の前まで来ているのに、気配に全く気が付かなかったので少し驚いてしまった。


「……なにか用ですか」

 俺はなるべく相手を刺激しないように丁寧な口調で訊くと、相手は吐き捨てるように言う。


「しらばっくれんな。分かってるくせに」


「え……?」

 俺の困惑する様子を見て、相手はため息をつく。


「尾けてたでしょ。女の子を」

「は……?尾けてたって……」

 彼女の言っていることを理解する暇もなく、言い訳はごめんだと言わんばかりにいきなり胸倉をつかまれる。


 体が浮く感覚がした。


 刹那の後、俺は背中に強い衝撃を受けて転がされていた。

 痛ってぇ……


「……答えなさい。どうしてあの子を尾けてたの」

 目がマジだ。

 その覇気だけで委縮してしまう。


「返答によっては……」

 そこで彼女は言葉を切った。

 続きは聞きたくない。


 明らかに殺気のこめられた声に命の危険を感じ、俺は弁明する。


「いや、俺とソフィはパーティメンバーで……だから、別に尾けてたわけじゃないんだけど」

 俺の返答に相手は眉をしかめる。


 というか、初めて相手の表情が見えた。


 俺は地面に転がされているせいで、フードに隠れていた顔が下から見えるのだ。

 声からも想像できた通り、やはり女性だった。

 黒い髪と蒼い目を持つ、どこか凛々しさのようなものを感じる顔立ちをしている。


「パーティメンバー……?あの子に?」


 あの子?

 なんだかソフィのことを知っているような口調だ。


「知ってるんですか?ソフィのこと」

 俺はおそるおそる尋ねる。


「……あんたには関係ない」

 そっけなく答えてそっぽを向くが、彼女は少し動揺した様子だった。

 これは誤解を解くチャンスかもしれない。


「ちょっと彼女と合流しようとして、追いかけてただけなんすよ」

 俺の言葉に、彼女は頬に手を添えて考えているそぶりを見せた。


「あんた、名前は?」


 声色が変わったような気がする。

 ぶっきらぼうではあるが、それでもどこか敵意が薄れた。


 いい加減地面に転がったままというのはきつい。


「えっと……佐伯ツキって言います」

 俺は立ち上がり体についた砂を払いながら答えた。

 彼女はサエキ……と口の中でつぶやき、響きを確かめている。


「……?確か、あの子の婚約者の名前も……」


 婚約者? それは人違いじゃ……


 ソフィは一応貴族の出自らしいので、ソフィのことを知っている人が居てもなにもおかしくはないと思っていたが……どうやら俺の事は知らないらしい。

 しかし俺には、彼女にソフィのことを訊く勇気がなかった。

 というか、俺は早く追いかけないといけない。


 それじゃあ……と適当に会釈して場を離れようとするも


「……ちょっと待ちなさい」

 俺は袖をつかまれ引き留められた。

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