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第十六話 ③ 裁判かけられて死刑です

 王城地下の牢獄……?

 つまり俺は、国の上層部の人間に捕らえられたってことか?


「なおさら意味が分かんないな。

 なんで俺が捕らえられなくちゃいけないんだ?

 なんならあいつらには感謝してほしいくらいなんだけど」


「まぁそうだな。

 しかし採った方法がマズかったのは自覚しているだろう?

 元からあんたの事が邪魔だった人間が、

 この機会にかこつけて罪人に仕立て上げたというのが妥当な所だろうな」


「……なんだそれ。俺に恨みがある人がいるってことか?」


 そんなの全く心当たりが無いんだけど。


「まぁ当然いるだろうな。

 おそらくだが、魔王軍の上層部であんたは相当マークされているはずだぞ。

 思い返してみろ、心当たりはあるはずだ」


 そんなものない、と言いかけて思い出す。


 それこそ昨日の夜、変な魔獣に襲われた事件があったはずだ。

 あいつはいつからかずっと俺たちの事を尾行していた。

 思えばいつからだ?


 迷宮にいた時に落ちた雷も、迷宮で見た大けがを負った土竜も思えばおかしかった。

 もっと前に遡ると、二日目に行ったカウェグラ遺跡で辺りの魔物が殺されていた事もあった。

 まさにあれは、誰かが傍にいる痕跡だったはずだ。


 何より、転移初日にソフィからそんな話を聞かされている。

 あれは冗談でもなんでも無かったって事か?


「予想されるシナリオとしてはこうだな。

 まず、坊主も知っての通り上層部には内通者が存在する。

 そいつは昨夜あんたの作戦にまんまと乗せられて、軍の撤退を余儀なくされた。

 が、その後になって自分は策略にはまったのだと気付いたのだろう。

 と同時に奴は、その策を逆手にとってあんたを犯罪者として、

 捕らえることが出来るとも気が付いたわけだな」


 なるほど、確かに言われてみれば難しい事じゃない。

 やってる事の表面だけ見れば、俺は味方にとって不利な嘘を意図的に流す反逆者なわけだし。


 その嘘の噂を流したのが俺だと証明できさえすれば、その時点で俺を反逆者としてつるし上げることができる。


「好都合なことにあんたのスキルは、こういう場面にめっぽう弱いだろう。

 その噂を流したのはお前か、なんて裁判の場で訊かれたら一貫の終わりだ」


 ……確かに。

 なんだこれ。もしそれが本当なら、この状況はもう詰みじゃん。


「でもそれって、ただの推測……なんだよな?」

「まぁ一応はそうだな。

 しかし俺の経験上、人に話して聞かせた推測が外れた事は一度たりともない」


 自慢げだった。

 こいつは相当自分に自信があるらしい。


「じゃあ……なにか?

 俺は今、城内にいる魔王軍の味方につるし上げられて……

 いつかは勝ち目のない裁判にかけられて殺されるってことか?」


「まぁ、そういうことになるな。このままだと確実に」


 すました顔で鼠は言う。


 まぁじゃないが。

 つい昨日、ソフィに怒られたばかりなのだ。心配させないでくださいと。


 なのに次の日にヘマして捕まりましたなんて、どんな面下げてソフィに会えばいいんだ。

 悪くすれば、もう一生ソフィと会うことすらできないかもしれない。


「ついでに言うと、裁判は今日中に行われるはずだ。

 ここは裁判に立つ被告人が当日に入る特別な牢だからな」


「……は? 今日って……今日?!」


 捕まえた日にいきなり裁判するとか、法はどうなってるんだ。

 あからさまに被告人側が不利な仕組みになっている。


 このままだと、何も分からないうちに法廷に立たされて、正直に自白して国家反逆罪で殺されることになる。

 おいおい、どうすればいいんだこれ。


 見ると、手のひらの上の小動物は、腰を揺らしながら全身を使って、両手を大きく上下に上げ下げしていた。


「ちょっと、変な体操なんてしてないで……」

 俺は思わず苛立ちを抑えられずにつっこんでしまう。


「違う! 俺を下ろせと言っているんだ」


 あぁなんだ、そういうことね。

 俺はそっと地面においてやる。


 口元に手をそえて考え込むようなポーズを一瞬見せた後、ねずみは口を開いた。


「まぁそう落ち込むな。あんたが死んで困るのは何もソフィアとあんた自身だけじゃない。当然俺も困るし、何ならその被害を考えればこの世界の人間全員が困ることになるんだからな。当然指をくわえて黙っている訳じゃない」


「……大げさだな。お前がどう困るかは知らないけど、この世界の人間全員は言いすぎだろ」

 俺の指摘に鼠はぷっと吹き出す。


「無自覚系主人公みたいなことを言うな。

 言いすぎな事なんて何一つない。

 この世界の命運を左右するのは、間違いなく坊主だ」


 はぁ。

 こんな小動物にそんなことを言われてもな。


「記憶がない以上何があってもおかしくないとは思ってるけどさ、

 だからと言って何もかも信じるわけにもいかないんだよな。

 ましてやそんな胡散臭い話だとなおさら」


 ピンと来ていない俺の顔を見て察知したのか、鼠は一つ溜息をついてから続けた。


「記憶なぁ……。

 これについては話したいのもやまやまなんだが、問題があってな。

 その様子だと、ソフィアからも話を聞いていないようだが」


「そう。ソフィはなーんも教えてくれない。いつかは分かる日が来るらしいけど……いつになる事やら」


 まぁまぁと宥めすかしてくる鼠を見ながら、一つ思い出したことを口にする。


「そうだ。記憶と言えば、昨日変な体験をしたんだよ」


 鼠は首を傾げる。


 俺は、昨夜王城の連絡通路で思い出した記憶について話す。

 何かのヒントになるかも、とそう考えての事だったが……


 その反応は、想像以上のものだった。


「ぼ、坊主。それは本当か?

 本当に昨夜、“その眼鏡の男と別れ際に初めて”記憶を取り戻したんだな?」


 鼠は興奮している様子で、勢い込んで尋ねて来る。

 記憶の内容、というよりもその時の状況に興味があるようだ。


「あ、あぁ。本当だよ。あれってなんだったんだ?

 未だにあれが俺の記憶なのか、単なる夢なのか、

 または幻術の魔法をかけられたとか……結局よく分かってないんだけど」


「話を聞くに、それは坊主の消されていた記憶で間違いない。

 確かに幻術の魔法と言うものもあるがね、

 存在する幻術魔法はせいぜい特定の人物を、

 他の人物に見間違えさせることくらいしかできない。

 今の話のように、空間や場面全体を見せるタイプの物は存在しない」


 そういうものか。

 というか適当に言ったけど、その幻術魔法って便利だな。

 結構いろんなことに応用できそうだけど。

 

 考え込む様子の鼠は顎に手をやって続けた。


「しかしそれなら大幅に禁は解かれたことになるな……。

 まずはここからの脱出計画を作り上げてからだが、

 一部分なら情報を与えることが出来る……かもしれない」


 ぶつぶつと独り言を言う。

 なんなんだ。気になるじゃんか。


「脱出計画って、もしかして何か算段があるのか?」


 情報うんぬんよりも、今はそっちの方が急を要する。俺は思わず食いついた。


「まさか。考えるのはあんただ。俺は、その手伝いをするだけ。

 ……さて、何が必要だ?

 その作戦が上手く行くようなら、坊主の気になっていた情報も多少なら教えてやれる」


 ニヤリと笑って俺を見上げる。

 ソフィと同じような事を言う。いつだって策は俺が考えるんだな。


 情報とやらも死ぬほど気になるが、脱出できなければ本当に死ぬことになる。

 今はそっちを優先するべきだろう。


 そうだな、俺だって馬鹿じゃない。考えていることくらいはある。


「一つ質問がしたいんだけど」


「構わん。なんでもするがいい」


 鼠は横柄な口調で答える。

 腰に手を当てたまま、ぐりぐりと尻を動かして体操をしていた。


「お前は今、鼠の体を操って動いてるんだよな。

 ならさ、任意の他の動物を操ることも出来たりしない?」


 俺の質問に鼠は動きを止めた。

 少し考え込む様子を見せてから口を開く。


「不可能ではないが……少し制限がかかる。

 目の前の動物を操ることなら容易にできるのだが、

 視認できない場所にいる遠くのものを操るには正確な座標が必要になるな」


 正確な座標か。その点に関しては問題無さそうだけど。


「ならさ、連れてきて欲しい動物が居るんだよな。

 犬……であってるのかな、とにかく一風変わった奴なんだけど」

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