第七話 ④ 手に入れたアーティファクト
ドアは建付けが悪く、何度も鍵を抜き差ししないとうまく回ってくれなかった。
安い宿にしたからな。
それくらいは我慢するけど。
部屋は六畳間ほどの広さで、備え付けのベッドの他に小さなテーブルが一つ。
他には何もない、簡素な部屋だった。
しかし寝床さえあれば何も文句はない。
まずはきしむベッドに横たわる。
寝心地は……まぁ及第点。
固さがちょっと気になるけど、まぁ寝れないことはないだろう。
窓には木の扉が付けてあったが、開けてみるとそこにはガラスなどは無くそのまま外からの風が吹き込んできている。
見える景色は見渡す限りの草原で、新鮮な空気のお陰でのどかな気分になる。
なんか……良いなここ。
自然は豊かだし、空気は澄んでるし。
本当に冒険者なんかにならず農家になった方が幸せだったかもしれない。
勝手に魔王が死んでくれた時には、本気でソフィと農家をやろうかな。
世界がヤバい、か……
昨夜のソフィの言葉を思い出す。
あの時のソフィの顔はとても冗談を言っているようには見えなかった。
でもだからと言ってそんなアホみたい事を簡単に信じるわけにはいかないだろ。
……ソフィはどうしたんだろうな。
宝箱から無事抜け出した時からずっと俯いて、話しかけても殆ど返してくれなかった。
まさか、狭い箱の中に一緒に入ったのが恥ずかしかったのか?
昨日は自分から抱き着いてきたくせに。
まぁ、振り返ってみれば至近距離で顔をあわせ続けていたわけだから、恥ずかしくなるのは分かる。
多分俺なら耐え切れずに蓋を開けて、モンスターに見つかって死んでた。
でも、実際の宝箱の中はそんな妄想の余地も与えないほどに真っ暗だった。
蓋を開けるまでは、ちょっと近くにいるのかな……くらいにしか思わなかったはずだ。ソフィも。
それでも恥ずかしがっているのなら、意外とソフィにもかわいいところがあるのかもしれない。
なんてくだらない事を考えながら、今日の戦利品を漁る。
一つ目の遺跡では、忍びマスクと忍び足袋。二つ目の遺跡ではサージバングルというアイテムを手に入れた。
割とあっさりと手に入れてしまったため、あまりありがたみは無いが……
曰く昨日冒険を始めたひよっこが手にするようなものでは到底無いらしい。
スニークをするときに役に立つ装備と、力を増幅させる腕輪のようなアイテム。
これらがあれば、ようやく本格的に武器や防具を手に入れることが出来るようになる。
スキルを使って最適なルートを調べ、忍び装備で見つからないようにダンジョンを進み、サージバングルで重い装備品を持ち運ぶ。
明日からは存分に活躍してくれることだろう。
せっかくなら、めちゃめちゃかっこいい剣とか欲しいな。
結局使わないとはいえ、それが自分の手に入るとなると楽しみだ。
考えながら俺は今日の戦利品のアイテムの効果の詳細を何気なく流し見る。
ゲームでもこういう細かい能力を見るの好きだったんだよな。
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ITEM
―Artifact
Power Surge Bangle
ATKdown lv2 STRup lv4
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サージバングルは……攻撃力低下lv2と筋力増強v4か。
デバフが付いている……?と最初は不思議に思ったが、考えれば当然の事か。
筋力は攻撃力にも関係するステータスだから、単体で上げてしまうと強すぎてしまうのだろう。
こうすることで重いものを持ち上げるときには役に立つけど攻撃力はあまり変わらない、という個性のあるアイテムができる。
……という解釈はあまりにこの世界をゲームとして見過ぎなのだろうか。
しかしこれ以外に解釈が思いつかない。
試しに左手にはめてみる。
正直あまりこういったアクセサリーを付けるのは好きじゃないんだけど……。
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佐伯 槻
Lv 8
HP 42/42
MP 18/18
ATK 16 ((→1))
DEF 11
MAN 7
STR 12 ((→52))
DEX 18
SKILL 『正直者』
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おい。攻撃が最低値まで下がったんだが。
倍率変化じゃなくて固定値変化のやつかよ。
でもそうなると、-にならないだけマシか。最低値はいくら引かれても変わらない……と。
なるほどな。
サンプルが少ないから良く分からないが、レベル表記の×10が妥当な所か……?
攻撃力が1になったのは一旦目を瞑るとして、筋力が一気にトップに躍り出たのはなかなか凄い。
やはり初級者が持つようなアイテムでは無いらしいな。
後は……コゥイガ遺跡で見つけた忍び装備か。忍び足袋と忍びマスク。
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ITEM
―Artifact
Ninja Tabi
DEXup lv3
Bonus: Stealth lv4
Ninja Mask
Bonus: Stealth lv3
Night Vision lv 5
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ステルスと……ナイトビジョン?
このマスク、隠密効果だけじゃなくて暗視効果もついてるのか。
暗視効果ね。
……
…………暗視効果?
マスクを装備してから、部屋の窓を閉じる。
この窓以外に、光が部屋に入って来る経路は無い。
窓を閉じたまま寝ると、朝なのかどうかすら分からないくらいだ。
それでも、暗視効果のお陰で辺りははっきりと見えている。
ようやく、分かった。
そういう事だったのか。
あの真っ暗な宝箱の中でも、これを装備していたソフィは最初からずっと視えていたようだ。
俺の方からは全く見えなかったが、ソフィは宝箱の中にいた間ずっと至近距離で顔をあわせ続けていたらしい。
音を出したら死ぬかもしれないので、そうとも言えずに。
宝箱から出た後は、ずっとその羞恥と戦っていたために様子が変だったのだ。
マスクを深くかぶって、赤くなった耳を隠して。
このことについては明日触れた方がいいのだろうか。それとも気が付いていないふりを通した方がいいのか。
ちょっと意地が悪いのは分かってる。
それでも、恥ずかしくて目が合わせられなくなったソフィを想像すると、込み上げてくる笑いを堪えることができなかった。
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佐伯 槻
Lv 8
HP 42/42
MP 18/18
ATK 16 ((→1))
DEF 11
MAN 7
STR 12 ((→52))
DEX 18 ((→48))
SKILL 『正直者』
Bonus: Stealth lv3
Stealth lv4
Night Vision lv 5“
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目標ステータス総計:1200 (現124→179 残1076→1021)
目標討伐数:1000 (現0 残1000) //モルスケス、倒せてなかったみたいですね
目標金額:約50万ティーネ ( -600,000 //罰金
+1,000,000 //鏡
-250,000 //千鶴さんのばか
現 150,000 残350,000)
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