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第六話 ② 異世界で借金生活


 冒険者ギルド。


 主に冒険者が集まり、クエストの受注や報酬の受け取りなどを行う施設。

 ここは酒場が併設されているようで、昼間だというのに結構にぎわっていた。

 

 建物に入った瞬間に耳に入ってくる人々の騒ぐ音。


 そこかしこに冒険者が数人で集まり、それぞれが輪になって話し合っていて……

 机と人混みの間を縫うようにウェイトレスさんが駆け回り、酒だの料理だのを給仕している。


 あまりにテンプレートな光景に、これこれ~と口に出して言いそうなってしまう。

 ギルドなんて、人生で一度も見た事無いのにおかしいな。


 やはりこれも政策の一つなんだろうな。正直めちゃくちゃテンション上がる。

 Fランクの査定を受けていても、何も知らずにこの光景を見ていたら冒険者になっていたかもしれない。

 それくらい……なんというか、再現度が高い。こういうのもおかしいが。

 

 ソフィは受付の方へと行ったが、俺には待合椅子で待っているよう指示があった。

 椅子に座りながら、酒場にいる人たちを眺める。


 活気のある場所にいると、こちらまで元気がもらえるような気がして良い。

 これから罰金の話をされるんだから、今のうちに元気をもらっておかないと割に合わない。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「良いニュースと悪いニュースがあります」


 ソフィは開口一番、どこかで聞いたような言い回しをして来る。

 結構長い事受付の所にいたので、やはり手続きやらなんやらがあったのだろう。

 そういうのを全部任せっきりというのはちょっと罪悪感がある。


「ああ……じゃあ悪いニュースからかな。想像がついてるし」


「はい。分かっていると思いますが、さきほどの罰金の件です。色々注意を受けて、大規模のようなのでこれから調査員が派遣されるっていう話をされました」


「調査員……いや申し訳ねぇな……」

 マジでへこむ。罰金だけじゃなくて人様の仕事まで増やしてしまった。


「まぁ……それは向こうも仕事ですから。

 で、報告通りならこれくらいっていうおおよその額は聞いてきました。

 それが……60万ティーネくらいになりそうって言う話で」


 はぁ……と、本気でため息が出た。


 マジでやったなこれ。

 第二案はもう完全に頓挫したも同然だ。

 お金を貯めるどころか、これでは大借金。


「だ、大丈夫ですって。まだいいニュースが残ってるんですよ?」

 派手に沈んだ俺を思ってか、ソフィは慌てて続ける。


 いや、いいんだ。俺の事は放っておいて、世界を救う旅を続けてくれ……

 

「昨日スィレートのシァトナ遺跡に行きましたよね。

 そこに古代の倉庫とつながる鏡があったの覚えてますか?」

 俺は力なく頷く。


 だからなんだっていうんだ。もう……もう終わりだ。

 二日目にして俺の異世界ライフは終わり。異世界で借金生活!サイコー!


「あの倉庫に繋がる姿鏡、サイズが大きかったので施設なのかなって思ってたのですが、一応確認取ったらですね……なんと、アイテム扱いで良いって言われたんです!」

 どうだ、と言わんばかりに発表するも、正直良く分からない。


「……アイテム扱いだと何が良いんだ。

 ていうか、施設とかアイテムとか……そういう分類って誰かが決めるもんなのか?」


 えっと……とソフィが少し考え込む素振りを見せる。

 説明がちょっと複雑なようだ。


「ダンジョンは公共の物だって言うのは身に染みたと思うんですが……

 そこにあるアイテムは冒険者の登録をしてさえいれば誰でも持ち帰ることが出来るんです。

 ですがもちろん何でも持って帰って良い訳じゃなくて、

 規定以上の大きさだとそれは遺跡の施設の一部とみなされることがあるんです」


 まぁ……そりゃそうだろうな。

 ダンジョンの階段が良い素材で作られてるから持ち帰りますーなんていうおバカが居たら、それだけで周りに迷惑がかかる。


「で、この前の鏡は “ある地点に移動するための施設” にあたるのかな……

 って思ってたんですが、確認してみたらアイテム扱い、

 つまり持ち帰ってもいいってことになったんです」


 ……申し訳ないけど何がどうすごいのか、いまいちピンと来てない。


「でも……あの鏡で何すんだ?

 持ち帰れって言われてもあんなの重すぎるし……

 確かに広い空間って言うのはそれだけで価値はあるんだろうけど、臭いだろあそこ。

 しかも中にはめちゃくちゃ沢山の腐った食べ物があるわけで……」


「一言で言うと、お金になるんです。それも相当な額に」

「詳しく」


 ソフィは、眼の色を変えた俺に呆れたような様子で。

「自分で使うのもいいんですが、古代のアーティファクトってとにかく高値で売れるんです。

 あれだけの広い空間を鏡一つ分のスペースで持ち運べるって言うのは相当凄い事ですからね。

 酒場にいた時、魔素水の入ってた包装を見ませんでした?」


 あれか、千鶴さんが一生包装を開け続けて逆マトリョーシカみたいになってたやつ。


「あの通り、今の技術じゃちょっと物を小さくするだけで相当手間とお金がかかるんです。

 それと比べると、あの大きさの倉庫を鏡くらいの大きさにしまえるというのは破格だって言うのは分かりますよね」


 なるほど、とは言えあのくっさい空間を倉庫として使うのも……


 と反論するより前に、ソフィは続ける。

「それに中にある腐った食べ物ってのは古代の食文化を知るうえで貴重な資料になるので……

 それはそれで買い手がすぐ見つかります。どっちも言い値で買ってもらえると思いますよ」


 言い値で。

 人生で一度は言われてみたい言葉だ。


「凄い……のは理解したけど、今の所俺の収支はマイナス60万ティーネなんだよな。

 売れるとしたらどの位になるもんなんだ?」


 できるならなるべく負担を減らしてくれると助かるんだけど。


「“私達の”、です。売値はそれこそ相当な額になると思いますが……

 鏡本体と古代の史料含めて、ざっと……100万とかでしょうか」


「ひゃッ……」


 百万……?!

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