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第四話 ⑦ ちょっとしたデレ要素

「あらほんとだ。おいしいわね」

 コップの水に口を付けるなり、千鶴さんはそんなことを言った。


「ですよね。良かったです。これでモノも悪かったら最悪でした」


「これだけ美味しければ契約を続けても……」

 懲りずに提案をする千鶴さん。


「それは無いです。すぐにでも契約は取り消してきてください」

 またあえなく撃墜されてる。


 千鶴さんは、片方のテーブルを占拠する魔素水の入った箱を片付けようとしている様子だった。

 あの量の水が入った箱をひょいと持ち上げた時は声が出そうになった。

 

 重さを感じさせない動きで軽々とそのまま運び、カウンター席にドスンと置く。

 そのままカウンター裏に入り、瓶を収納し始めた。


 見かけによらず力があるんだな……と感心していると、テーブルに座るソフィが口を開く。


「これから一週間以内に、先輩には銀等級になってもらうって話はしましたよね」

 千鶴さんに気を取られていた俺は、慌てて頷く。


「そのためにいくつか条件があって、今日からはこれを達成するために頑張って貰うつもりです」

 

 条件。

 やっぱりこれが問題になってくるんだろうな。

 

 ソフィは人差し指を立て、説明を始めた。

「まず一つ目は基準値以上のステータス。

 ステータスの合計値が基準を超えている必要があります。

 これは単なる必要条件だからあんまり重視されてないんですが、

 問題なのは二つ目のモンスターの討伐ポイントです。

 これは、モンスターの強さに応じて振り分けられたポイントを、

 その討伐数で掛けたものを貯めていく必要があるんです」


「なんかゲームみたいだな」

「多分それも意識して作られて……いや、嘘です。忘れてください」


 ソフィは横目で、カウンターの方にいる千鶴さんの方を見る。

 幸い、魔素水のラベルを見るのに夢中になって聞いていなかったようだ。

 

 陰謀論的な話につながると危惧したのだろうか。

 でもこの世界はゲームのような仕組みで出来ている云々は、既にソフィの口から聞いているはずなんだけど。


「とにかく、この制度のせいで普通昇格するのには数年単位で時間がかかるんですが、

 先輩にはそこを一気に駆け上がってもらいます」

 

 駆け上がる、と言えば単純そうに聞こえるが。

「で、具体的に何をするつもりなんだ」


「何はともあれまずは先輩のステータス強化です。

 でも先輩はそもそものステータスが絶望的なので、

 いくらレベルアップしてもどうせ大した能力値の向上は見込めません」


 ひどいこと言うな。そんなことを言ったら人は傷つくのを知らないのか。


「ですから、装備を使って貧弱なステータスを補って貰うことにします。

 装備さえしていれば、たとえ全く使いこなせなくてもステータスには加算されるので、

 それを利用するんです」


「……見かけ上のステータスを上げるってことか」

 

 そゆことです。とソフィは言う。

 なんか……我ながら情けないな。


 ハリボテでも良いから、ステータスを何とか基準値まで持って行く。

 結局ズルしているだけのようだが、手段を選んでいられない状況なのだろう。

 このままだと世界がヤバいらしいし。

 

「先輩のスキルはアイテムとか武器を集めるのに適してますから、

 そこらへんは常人とは比べ物にならないスピードで進められるはずです。

 欲しいアイテムの場所だけじゃなくて、

 そこまでの道のりも含めて全て把握できるわけですからね」


「……確かに」


 そう考えると、ダンジョンの情報全てを知る能力ってのは相当におあつらえ向きだな。

 いわば、攻略本片手にタイムアタックをしているようなものだ。



「やることは単純です。

 銀等級になるために必要なステータスを手に入れるために、

 スキルを使ってダンジョンに眠る宝物を荒し回る。

 そしてある程度ステータスを上げたら、

 討伐ポイントの高いモンスターを倒しまくってポイントを稼ぐ。これだけです」


 まとめると簡単そうに聞こえるが。


「そういえば、ステータスとか……モンスターの討伐ポイントは具体的にどの位必要なんだ?」

「銀等級は、ステータスの総計が1200を超える必要があります。

 討伐ポイントは1000ポイントで、

 その半数以上は上級モンスターによるポイントでなくては無効……みたいな感じですね。

 雑魚ゴブリンを千体倒すだけじゃ駄目という事です」

 

 討伐ポイントに関してはまだ実感がわかないが……ステータスの総計1200って相当だな。

 今の俺のステータスだと、まだ合計しても100ちょいとかそんな所じゃないか?

 一応見てみるか。城で受けた説明の通りにステータスを展開する。


――――――――――

佐伯 槻

Lv 8

HP 42/42

MP 18/18

ATK 16

DEF 11

MAN 7

STR 12

DEX 18


SKILL 『正直者』

――――――――――

Skill

正直者

質問に対して嘘を吐く事、黙秘する事が出来なくなる。

――――――――――


「合計……124か。一週間で本当にどうにかなるものかねぇ……」

 そんな短期間でステータスを十倍にする……

 ゲームならまだしも、そんなことが可能なのか?

 

「何言ってるんですか。どうにかするんですよ、先輩が」

 

「……俺が?」

 少し反応が遅れて、やや遅めに突っ込みを入れる。


 ソフィは、当たり前じゃないですかとばかりに目をしばたたかせている。

「やることは色々有りますけど、これ以上は先輩の仕事です。

 これから先どんな能力を伸ばして、どんな装備を手に入れるのか。 

 どんなモンスターを倒してポイントを稼ぐかは先輩が頑張って考えてください」


 なんだ、急に投げやりになってない?


「でも、何をすればいいのかとか、全然分かってないんだけど……」

「なら考えてください。

 いつも言ってたじゃないですか、頭を使えって。

 そういうのは先輩の仕事です」


 年下に向かってそんなキツい上司みたいな事言ってたのかよ俺。マジで勘弁してくれ。

 

 しかしそんな難題、考えてどうにかなるものだろうか。

 しかもこの世界に全く詳しくない俺が。明らかにこの役割分担間違ってないか?

 

 納得のいかない俺には構わず、ソフィは立ち上がった。


「これからが本番です。今日はもう遅いですからさっさと寝て、明日に備えてください」


 有無を言わせない口調だった。

 これからの事に承諾した覚えはないのだが、ソフィは俺が協力すること前提で話を進めているらしい。



「あ、もう寝るんだ」

 カウンターの裏にいた千鶴さんが顔を上げる。


「そういえば佐伯くんはどうするの?」

 ……確かに。完全に失念していた。このままだと野宿する羽目になる。


「今日の所はここで我慢してもらうとして、明日からは宿をとらないとですね。

 そのためのお金も必要になってくるだろうけど……そこは頑張ってください」

 

「……助かる。ありがとう」


 良かった、野宿はしないで済みそうだ。


「じゃあ佐伯くんはソフィアと一緒のベッド?」


「馬鹿なこと言わないでください。居間のソファで我慢してもらいますから」


 千鶴さん、そういういじり好きそうだなぁと思っていたら、案の定してきた。

 ソフィはソフィでそんな攻撃は一切利いていないようだ。つよい。


「そうね、わたしも早めに寝ることにするわ」


 伸びをしながら千鶴さんは階段を上り、二階へと姿を消した。


 時計が無いせいで今が何時なのかは良く分からないが、今日一日色々あったせいでもう既に眠い。

 俺も続いて席を立つ。




「ちょっとだけいいですか?」

 伸びをする俺に、ソフィが口ごもりながら声を掛けてきた。


「千鶴さん、私と先輩の関係については……何も言ってないですよね?」

 ソフィとの関係?

「いや……特に聞いてないけど」


 俺の返事を聞いて、そっか、と呟く。


「それじゃ、おやすみなさい」

 言ってソフィはしばらく何かを逡巡している様子だったが、意を決したように手を広げ――


 たどたどしく、優しい抱擁。

 かと思えば、すぐに体を離して去って行く。

 

 とたとたと階段を駆け上がる音が響いた。



 なんだ? この子俺の事好きなんか?

 ……ってなるのは流石に自意識過剰だな。


 ソフィには思い人がいたって話だったし。


 そういえば……千鶴さんが二年前の事について話すときは、ソフィのお父さんと思い人の事しか言及せずに、俺の名前は出さなかったよな。

 それに対してソフィは、思い人の事については言及せずに俺の名前を出していた。

 それって……?

 

 

 ……

 …………

 いやどうせ、寝る前のハグはこの世界特有の風習でー、みたいになるのがオチだろうな。


 俺はこういうのに詳しいんだ。

 考えるだけ無駄。

 今日の所はもう寝よう。


 随分と早い時間にも思えるが、こんなにも眠いのは向こうとの時差のせいだろうか。


 これ以上頭を使いたくないという気持ちが、俺の足をベッドへと向かわせた。



――――――――――――――――――――――――

目標ステータス総計:1200 (現124 残1076)

目標討伐ポイント:1000 (現0 残1000)


目標金額:約50万ティーネ (現0 残500,000)

――――――――――――――――――――――――

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