ちゃんとした大人になりたい
「う〜頭が痛い、吐きそうだ」
その日は、ひどく体調が悪かった。普段体調が悪くても、上司に「体調悪いんで早退させてください」が言えない気弱な俺だが、周りから見ても明らかに体調不良だったのだろう。
上司から「今日は帰って休んだら?」と言ってくれた。頭痛、吐き気はおさまらないが、変な緊張感から解放された俺は「助かった」と思いながら家路についた。
俺の名前は袴田豊彦。37歳。職業:准看護師。身長170cm。体重104kg。Fラン大学を中退。なんとも残念なスペックだ。子どもの父母会に参加すれば周りのシュッとしているお父さん達を見ては落ち込み、妻と息子には「こんなパパでごめんな」と思いながらダイエットを決意するが3日と続かず。妻からは、呆れられている。
吐き気を我慢しながら、ドアを開けると、仕事に行っているはずの妻の靴と男物の靴がある。
嫌な予感しかしない!!!!!!!
吉兆と思えることは、当たったためしはないが、嫌な予感は、ことごとく当たり続けている。
エロ動画のサンプルでみる、よくあるやつだ!と思っていたら、案の定だ。
乱雑に男女に衣服が散乱し、浴室のスリガラスごしに見えるケンタウロスのようなシルエット。
「合体してやがる!!!!!」俺は抑えていた吐き気を解放することにした。
間男の服に思い切り吐いてやった。怒りと妙な興奮で高ぶっている俺は、間男と自分を裏切った妻への殺意を抑えながら浴室のドア開けた。
すると、若い間男がベテランジョッキーのように妻を乗りこなしている。間男は俺を見て固まっている。妻は虚な表情というか、朦朧としている。「殺してやる。」理性がぶっ飛び、そう呟いた、その瞬間。空間が歪みブラックホールのようなものが現れる。そして、そこから何か出てきて俺にこう言った「我が手伝ってやろうか?」不敵な笑みを浮かべながら小さな妖精のような奴が、俺にそう問いかけてきた。