2.私の立場はトラウマメイカー
そう、なんと私がこれから彼の身体をけがしてトラウマを植え付ける張本人であることに気付いた。
私は名前のないモブキャラクターのため、ファンの間で通称トラウマメイカーの女と呼ばれているその人物だったのだ。
コルフェノール、略称コルフェに私が襲い掛かり彼を覚醒させてしまう衝撃的なイベントは、コルフェの少年期に起きる。
癒しの聖女である母と魔法剣士の父の間に生を受けたテイカー家の一人息子であるコルフェは、両親の力を掛け合わせて引き継ぎ、他人とは比較にはならないほどの強大な魔法の力を持っていた。
二才で才能を開花させ、母親と同じ治癒魔法を習得。
六才になる頃には父親の指導のもと剣の扱いでも天才的な身のこなしで、練習相手にしていた新卒の騎士たちを何人か打ち負かしてしまうほどに成長する。
順風満帆。
将来はエリート街道まっしぐらだと思われたコルフェだが、八才になったとき、両親が病に倒れ帰らぬ人となり天涯孤独の身になってしまう。
その後、突然孤児になってしまったコルフェを哀れに思ったとある神父が教会で彼の身柄を預かって育てることにするのだが。
この神父が実は事件の黒幕で発端。
ちょうど今、私の目の前で穏やかそうな微笑みを携えながらお茶を淹れてくれているのだけれど、こいつ超悪いやつなんだよね。
人は見掛けによらないというか、聖職者だからといって聖人とは限らないというか。
この神父は表向き善意でコルフェを保護したことになっていて、村の人々からも評判がいい。
けれどもその実態は、コルフェの優秀な能力や美貌を利用して金儲けをするために彼を引き取った最低なドクズ畜生野郎なのだ。
「教会へのご支援感謝いたします。今宵、貴女に神の御子が宿りますよう祈りましょう」
悪徳神父が考えたビジネスは、一言でいえばコルフェを種馬にして女たちに望み通りの魔法能力を持った子供を妊娠をさせるというもの。
もっと簡単に包み隠さず言えば、お金で優秀な精子を売り付けて強い子を孕ませ量産させようとかそんな感じのいかにもヤバい商売。
しかも個人的な商売じゃなくて、教会への寄付だとか支援だとかぬかしながらやってるからなおさらタチが悪いのだ。