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11. もしかしなくとも悪役令嬢

「ミシュレットさん。冷えちゃったからこの子をお風呂へ連れていって頂けますか。何か着るものも用意してあげて」


「ええ。かしこまりましたご主人様」


別人ではあるが同じ見た目で同じ名前なのでこのメイドさんのことはそう呼ぶしかない。

呼び掛けて指示を出すと、彼女はすぐに私の腕にしがみついていたコルフェを引き取っていった。

私のことをご主人様と呼ぶミシュレットさんには違和感があるけれど、そのうち馴れるだろう。


(うーーーーん。やってしまった。どうしよう。っていうかこれからどうなるんだろう……)


コルフェをお風呂へ入れてもらっている間にこの先のことを考えなければ。


お帰りなさいの挨拶のあと。

お茶をいれてくれているご年配の執事さんと少し話をしてみると、どうやらトラウマメイカーこと私はかなりお転婆なご令嬢らしいことが解った。

両親の反対を押しきってこの村に婚約者がいると言い、その婚約者を探すためにミシュレットと執事さん二人を連れて馬車を駆り王都を飛び出してきたそう。


なるほど、モブのくせに濃ゆいな。

自分で馬に鞭をバシバシ入れて馬車を駆るご令嬢というだけでもキワモノな気配がしないでもない。

我ながらシュールで笑いが込み上げる。


しかも、その設定が執事さんたちの把握しているものだとすれば、私の認識しているトラウマメイカー女の設定とはかなり違う。

巻き込んだ執事さんたちには「婚約者探しのために村に来ている」と嘘をついていて、実際は「村に婚約者なんていなく、教会に大金を渡してコルフェの子供を授かろうとしていた」だったのだから。


どんな理由があるかは知らないけれど、両親や使用人を欺いてまでトラウマ植えの役目を遂行している……と、なるとなかなかの悪女だったのでは。

もともと悪役ではあったけど、なるほどここまで揃ってくれば悪役令嬢といってもいいかもしれない。


≪シュテルフスタインⅡ≫には主人公のライバルになる悪役令嬢は出てこないけれど、こういう端役にいるにはいたんだなぁ。と、感心してしまった。


(それが自分自身のことになるなんてなぁ……)


ドレッサーの鏡で自分の顔を確認しようにもぼやけてきちんと映らない私は、モヤモヤした気持ちになりながら執事さんにも部屋から下がってもらった。

不安だらけの脳みそが痛い。

一人になった部屋で力尽きたようにベッドに突っ伏していると、


「入ってもいいですか?」


「コルフェ? うん、はい。どうぞ」


コンコン。と控えめなノック音がして慌てて応える。

だらけていた身を起こして座り体勢に変えた途端、ドアが開いた。


「お風呂、お先にありがとうございました。お姉さんも入られますか? って、ミシュレットさんが」


「私も後で入ります。今はまだいいや」


コルフェは礼儀正しくお辞儀をして部屋に入ってきた。

ミシュレットが用意してくれたらしい薄起毛のパジャマを着ているけれど、髪はまだ乾かしていないみたいで濡れている。


「そうですか。……おとなり、座ってもいいですか?」


「いいよ。おいで」


私が頷くと、腰かけていたベッドにコルフェも乗っかった。

年齢のわりに小柄だと思っていたけれど、脚がまだ床に届かないみたい。

ばたばたさせている姿がちょっとかわいい。


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