1.思い出した推しのこと
「コルフェノール・テイカー……そうだ。思い出した」
繰り返す、コルフェノールの名前を脳の中に染み込ませるよう反芻する。
知っている。初めて聞く名前のはずなのに、初めてなんかじゃない。と。
なぜなら、コルフェノールは生前の私の推しキャラクターだ。
高い魔力を生まれながらに備え、身体能力もあり頭脳明晰で、若くして教会騎士のトップ数人に名を連ねる男。
見目も麗しく、垂れ目がちな優しいサファイアカラーの瞳とサラサラな青銀の髪が印象的な人当たりのいい好青年。
能力と職業を加味した別名は、不死身の魔法剣士。
乙女ゲーム風RPG≪シュテルフスタインⅡ≫で攻略可能なメイン登場人物では人気投票・第四位という金銀銅には収まれないちょっと微妙な位置ではあるものの、根強いファンは熱心に彼に心血を注いでいる。
ちょうど私みたいな根強いファンは。
そんなコルフェノールなのだが、女性に対して重度のトラウマを負っているため、最初はプレイヤーの分身である主人公にもなかなか心を開いてくれない。
スタート時点から女性そのものに恐怖心を持っている設定があり、他のキャラクターと比べて好感度が上がりづらい。
と、いっても仕事の付き合いは普通にできるし、うわべだけの愛想は誰にでもかなりいい。
作中の男女どちらにも結構好かれているが、彼から本気で好きになる人物がいないというだけだ。
愛想がいいぶん感情のホント・ウソがわかりづらい。
それゆえの高難易度攻略キャラクターの一人でもある。
と、まぁ彼の情報を色々と細かく思い出したところで、私は大問題に自分が向かっていることに気付いてしまった。
その問題とは。
(──彼がトラウマになった事件、今まさに私が起こそうとしてるんですけど!)
数ある素敵な作品の中からお目にとめて頂きありがとうございます
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