それは最後に辿り着く数字
目覚めると、大きなドーム状のような建物の真ん中に大の字で倒れていた。
男は辺りを見渡した
起きたと思ったらまたこの夢か
そう男は飽き飽きとしていた
もう何度も見慣れたような景色だ
毎回ほんの少しずつだけ違うが男は気にしなかった。
「…またこの夢か。つまりはまた、下らないことに付き合わされるわけか。」
男は何度もこの経験を味わっていた
既視感、というよりは似たような場所に毎回飛ばされるような感覚だった
周りには蔦の絡まった動かないエレベーター
、時間の止まった近未来のような改札
それが大きな枠で、螺旋状に目のかすむような高さで繋がっている
さながら未来都市の廃墟のような場所
ここまでは大体がいつもと同じだった
たまに大きく違うものがあっても、この塔のような、周りから景色が遮断された閉鎖的な空間と、天から光が降り注ぐ景色は同じだった
そして男のいつもの夢なら稼働しているタッチパネル式の機械があり、そこに書かれた問題を解けば夢から覚めた
そして今回も手頃に稼働している機械を見つけた
早速男は以前と同じようにタッチパネルを操作し始めたとき、明らかな違和感を感じて手を止めた
画面には女性と思われる人物が映っていた
「ようこそ、お越し下さいました。」
女性の声に思わず男は自らの鼓動が聞こえた
明らかに今までと違う
動揺を見透かされぬよう男は質問した
「こちらの質問には答えられるのか?」
何事もなく画面の女性は返事をする
「ええ、答えられる限りはいくらでも。」
質問に制限がかかっている、しかし、質問数に制限はない
男が考えを巡らすに数秒とかからなかった
男はどんなに野暮な質問でも、今はしない手はないと考えた
「ここはどこだ。」
「貴方のたどり着いた場所です。」
「他に誰かいるのか。」
「制限のかけられた質問です。」
「…お前はだれだ?」
「あなたのオペレーターです。」
「ここから出る方法は?」
「その質問の答えは複数あります。」
「…無事に出られる方法は?」
「最適と思われる回答は、ここを上ることをお勧めします。」
「上るにはどうする?」
男は知っていた
ここを、正確にはここに限り無く近い場所を上ったことがあったからだ
その全てが行き止まり、もしくは人が一人で上がるには無理があることを
「果てなく感じるであろうこの場を、上るパートナーをご用意しております。」
女性の音声はそういうと、一つの部屋が開いた
迷わず歩き出した男だが、空いた部屋へ向かう途中に、今まで話していたタッチパネルの機械に話しかけた
「…そういえばあんた、名前はあるのか?」
「ワセイン、かつてそう名付けて頂いた記録があります。」
「…こちらのアナグラムで知恵者か、ひねくれた名付け親だな。」
そういうと男は開いた扉に入っていった
暗がりの向こうにはロボットらしきものがいた
くたびれていて、ロボットというにはか細い体だった
男はそのロボットに話しかけた
「おい、起きてるのか…というか起きれるのか」