表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

3. 誰のためのどんな家なのか?

夕方になり義姉が帰ってきた。

義姉は夕飯の準備をする『篤史くん』の顔を見るなり「ちっ」と舌打ちをし、険しい顔のまま二階の自室へと消えていった。


ほら? 何にもなかったでしょう? 


納屋の鍵の事で不安一杯の『篤史くん』は心臓がバクバクとなっていたようなのだが、私は何の心配もしていない。

そんなにすぐに騒ぎになるはずもないし、そもそも小知恵の回る義姉は、例えカギに気付いたとしても即座に自分の不利を悟って、大きな騒ぎにならない可能性だって高いんだから。


『篤史くん』は数日先までの献立を計算して食材を管理しているから、キッチンに立つと自然と身体が動き、いつの間にか夕食の準備が着々と進んでいる。

私のコントロール下にあるはずの身体が半ば勝手に動いて、バラバラだった食材が料理へと次々に加工されていくさまはなんだか不思議な気分になる。

私個人ではこんなに手際よく料理を作る事なんてできない。『篤史くん』は本当にすごい家事・炊事のエキスパートなのだ。


義母や義姉のために料理を準備する必要なんてこれっぽっちもないように思えるが、『篤史くん』にとっては毎日の当たり前の作業だし、なにより料理を作っていると不思議と『篤史くん』の心が落ち着くのだ。

私には想像もつかない事だが、世の中には料理を作るだけでストレス発散になる奇特な人達がいて、どうやら『篤史くん』もその一人のようなのだ。すごい!


また、いざ事を起こすまでの間は、なるべく波風を立てない方がいい。まず今の段階では今まで通りの行動を心掛けるべきだろう。

それに何より、『篤史くん』の家事や炊事はとても合理的で手際が良く、『篤史くん』の身体を借りて体感させてもらっている私自身がワクワクしてしまうのだ。

私が私であると同時に『篤史くん』でもあるという奇妙な二重感覚は、思いのほか心地よかったりもする。

あんな人達のために作る料理であっても、私にとっては大いに楽しめる作業であった。



時刻が午後7時を回るころ、出来上がった料理がテーブルの上に並ぶ。

義母の菜穂子さんはまだ帰ってきていないから、義姉の由紀奈さんの分だけがそこに揃えられている。

鶏モモ肉の香草焼き、ごぼうとレンコンのきんぴら、ほうれん草のお浸し、豆腐とわかめのお味噌汁にご飯と一汁三菜を守っている。……すごいなぁと私は感心させられてしまう。


けれどもこのテーブルの上には『篤史くん』の分はない。由紀奈さんは『篤史くん』がそばにいるだけで「気持ちが悪い」といって怒り出すので、いつしか同じテーブルで食事をとることがほとんどなくなってしまった。義母の菜穂子さんがいないときは特に。


だからこのようにして彼女の食事だけを並べて置いておき、食べ終わった彼女がいなくなったタイミングを見計らって『篤史くん』自身が自分の食事をとる習慣がついてしまった。


準備が整った『篤史くん』はそのまま2階の自室へと上がる。

ベッドと机以外に何もないがらんとした部屋の中で耳をそばだてていると、程なくして義姉が一階へ降りていく音がする。


私の中の『篤史くん』がホッとする息遣いが感じられる。

彼女が食事を終えてくれないと『篤史くん』自身のご飯が食べられないため、ともかくなんでもいいから彼女には早く食事をとってもらいたいのだ。


だが、そんな私が耳にしたのはガシャーン! といった破壊音だった。続けてバタン! と大きく玄関扉を閉める音がする。


軽い恐慌状態に陥った『篤史くん』を宥めつつ、私は一階の様子を見に行ってみる。


そこには散乱した食事の残骸が散らばっていた。


癇癪を起した義姉が滅茶苦茶にした後、そのまま外食のために家を出たのであろう事情が『篤史くん』の過去の経験から察せられた。


これは朝の朝食の件に対する報復なのだ。

『篤史くん』が彼女の望み通りの事をしなかったから、彼女は対抗して『篤史くん』の準備した夕食をめちゃくちゃにしていったのだ。


幼稚園児か!?


いや、実際のところ彼女は図体ばかり大きくなった幼稚園児みたいなものなのだろう。

義姉の由紀奈さんはあの年になるまで叱ってくれる大人というものと一度も向き合ったことがない。義母の菜穂子さんは姉妹みたいな仲良し母子を気取っているようだが、そんなものは育児から逃げ出したダメ人間の言い訳であることを、当の娘である由紀奈さんが見抜いている。

お互いに機嫌のいいときだけ親子遊びに興じて、義姉が裏で思いっきり母親を馬鹿にしているのを『篤史くん』は幾度となく目撃している。


そんな彼女を大人の立場から面倒を見てくれる人物はどこにもいないのだ。

『篤史くん』より一つ上の高校2年生、5月生まれで17歳になった義姉は見かけばかりが大人びて、外面が良くしっかり者のふりだけが上手なくせに幼児のころからの我が儘が未だに抜けない、どうしようもない子供なのだ。


だからと言ってこんなふうに食べ物を粗末にするなんて、信じられない!


むかっ腹が立って仕方がない私をよそに、『篤史くん』の身体が反射的に片づけのために動き出す。

自分で身体を動かしているような、『篤史くん』に身を任せて勝手に身体が動くのを眺めているような、なんだか不思議な感じがする。


みるみるうちに散らばった食材や割れた皿などがまとめられ、あっという間に何事もなかったかのように奇麗になってしまう。

その手際の良さには感心させられてしまうが、動機の情けなさには目を覆いたくなる。

いつ帰ってくるか分からない菜穂子さんに、散らばった食事を見つかってしまうと何故か『篤史くん』が怒られるのだ。

だから必死になった『篤史くん』は大急ぎで片づけるのだ。


どうにか粗方片づけ終わったところで、『篤史くん』は自分自身の分をテーブルの上に並べ、いそいそと侘しい食事を手早く済ませてしまう。

小食の『篤史くん』は自分の分は少なめに取り分けているので、あっという間に食べ終わってしまうのだが、それにしても素晴らしいお味だった!

『篤史くん』の料理の才能は天才的だと私は思う。もっとゆっくり時間をかけて味わいたかったのに、つい『篤史くん』の普段の癖で大慌てでかっ込む食事になってしまったのが悔やまれる。

私が心の中の『篤史くん』に向かって最大級の謝辞を述べると、照れた様子の『篤史くん』のホンワカした感情が返ってきた。

このあたりのやり取りが楽しくて、私は『篤史くん』の事をすごいすごいといっぱい褒めまくってしまった。


『篤史くん』の身体はそのまま自然と流しに向かい、自分の分の食器を手早く洗い終えてみせてくれる。これもとても手際が良い!

お茶碗洗いくらい私が代わりに頑張ろうかとも思ったのだが、『篤史くん』の無意識の行動に任せてしまった方が早いので、私はぼんやりと身体が勝手に動くのを眺めるばかりであった。

情けない。


そんな事をしているうちに時刻は夜8時を回る。義母は未だに帰ってこない。


気まぐれで気分屋の義母は、その日の食事が必要かどうかを事前に連絡などは一切してくれない。

だからと言って何も作らずにいるととんでもない剣幕で怒鳴り散らしだす。

さらには作ったものを処分しようとすると勿体ないと怒り出し、残り物を翌日に出せば馬鹿にしているのかと詰め寄ってくる。


機嫌の悪いときには何をしても怒ってばかりだが、ときおり大変ご機嫌な日に限ってはなんでも好きにすればいいなどと調子のいい事を言い始める。


正直関わらないようにするのが一番ではないかと私などは思うのだが、頼る相手が義母しかいなかった『篤史くん』は異様な環境にすっかり慣れ切ってしまっており、必要かどうかも分からない夕食を毎日当たり前のように作り上げてしまう。


『篤史くん』は義母の皿にラップをかける。

ついでお風呂場に向かい、義母のために新しく張り直した湯舟の湯加減を見て、念のため追い炊きをしておく。


そのまま2階の自室に上がりぼんやりとしていると義母が帰ってきた。

何やら妙に騒がしい雰囲気があったので少しだけ自室のドアを開けてみると、どうやら家の外で出くわしたらしい義姉と二人で楽し気に話している声が聞こえてきた。


「えー? あなたどこ行っていたのよ?」

「ちょっと用事があって出かけてただけだって。」

「あなた可愛いんだから夜一人で出歩かないようにしなさい。」

「大丈夫だって。最近7時ごろまで明るいし。」

「えー? それはそうだけど……」


とかなんとか。


そのまま二人はリビングの方へと移動し、何やら楽し気なおしゃべりらしき雑音が続いている。

普段の『篤史くん』ならこのままドアを閉めて寝入ってしまうところだったが、ふと気になった私はそのまま部屋の外へと出て、抜き足差し足で1階のリビングの方まで様子を見に行ってみることにする。


ドアの陰からこそりと覗き込むと、ソファーの上に並んで座った義母と義姉が、楽し気に何やら話し込んでいる様子が見えた。

最近の学校での様子などが話題に上っているようだったが、正直内容はよく分からない。


『篤史くん』の作った夕食は、ラップがかかったままテーブルの上に並んだままだった。

それだけでだいたいの事情が察せられる。義母もまたどこかで夕食を食べてきてしまったのだろう。

『篤史くん』の今日の準備は全くの無駄だったのだ。


壁一枚隔てた向こう側で義母と義姉のだんらんが音として伝わってくる。そこに『篤史くん』の入り込む余地はない。

この家はもともと『篤史くん』のお父さんのものだったのに、いつの間にか後から再婚相手の義母、義姉がやってきて、お父さんは亡くなってしまい、うやむやのうちに彼女達二人の家になってしまった。


私はすっかり重くなった『篤史くん』の身体を引きずるようにして、2階の自室へと戻る事にする。


いったいどうしてこんなことになってしまったのだろう?


不意に沸き起こる疑問。どうやら『篤史くん』の心の中に生まれた問いが私に伝わってきたようである。


ぼんやりと私自身も理由を考えてみる。


この家はもともと『篤史くん』のお父さんのものだったと聞いている。

お父さんの両親も事情があって早くに亡くなってしまい、一人っ子だった父が家を含めすべてを相続したのだ。


それが父親が亡くなった際にどのような手続きが行われたか分からないが、どうもその後の経緯からして、この家は菜穂子さんの自由に出来なくなってしまっているようなのだ。

いつだったか、菜穂子さんが「家を売りたい」だとか「引っ越したい」などとボヤいているのを『篤史くん』は耳にした事がある。


本来これはおかしな話だ。働き盛りでまだ若かった父親が亡くなったとき、『篤史くん』も義姉も未成年だったから財産分与が面倒になる事情は容易に想像がつく。

利益造反にならぬよう、二人の未成年者のために特別代理人を別個に立てなければならないからだ。


それでも通常なら、例えば不動産は3人の共有にした上で母親である菜穂子さんが法定代理人の立場として売却するなどの処置が取れたはずなのだ。

この場合、手にしたお金の4/1は『篤史くん』のものであるが、養育を理由にすれば菜穂子さんが管理することが出来る。


※作者注:義姉の由紀奈さんはお父さんの実子ではないので通常では遺産相続権がありません。つまり『私』は勘違いをしています。けれども本作品では由紀奈さんに相続権があろうがなかろうが本筋に影響がないのでこのままにしておきます。


それが何かの事情があってこのような手続きが取れなかった。

だから彼女はこの家に住み続けるしかなかった。


父が亡くなった際の相続手続きは不明瞭だ。

まだ幼かった当時の『篤史くん』の記憶はあいまいだが、それでも当時の義母は妙に荒れている様子だった。

父の知り合いを名乗る弁護士の人と険悪なやり取りをしていた様子も何度か目にした。

恐らくそこで何かがあったのだ。


なにがあったのか?


ここに当時の事情を示す面白い書類がある。

預金通帳などの書類を整理する中で出てきた、この家の権利書類である。

その所有権は義母である菜穂子さんではなく、『篤史くん』となっていた。

当時担当してくれていた弁護士の人の名刺も添付されている。

恐らくこれが答えだ。


私は『篤史くん』の当時の思い出を引っ張り出しながら、少しばかり考察を進めてみる。


一つばかり思い当たる節がある。

これは仮説だが、例えば父は意識のあるうちに弁護士の人と相談して遺言状を作成し、この家を『篤史くん』に相続するようにしたのではないか?


というのも、病気で倒れた後の父が意識がはっきりしていた初めのうち、何かの折に「家の事は頼む」と『篤史くん』に言付けたことがあったのだ。

たしかあの場には弁護士の人もいて、義母や義姉は何かの理由でいなかった。


幼い『篤史くん』は父の言葉を額面通りに受け取ったが為にその後の無理な家事に繋がるわけだが、これが不動産所有権の話であったら全然意味が違ってくる。

この家を菜穂子さんが自由に出来なくなるからだ。


もちろん、未成年者である『篤史くん』の法定代理人は変わらず菜穂子さんであるから、代理人として不動産を売却することは出来るだろう。ただしこの場合のお金は全て『篤史くん』のものである。

養育費用などを名目として菜穂子さんが差配するにしても、あまり勝手なことは出来なくなる。


何より故人である父が「この家を実子に残したい」という意思表示をしていた場合、弁護士は義母を牽制してかなりあれこれ戦った可能性がある。


このあたり、当時の弁護士の人などときちんと会って事実確認しておく必要がありそうだが、ともかく通常通りではない遺産分与があったであろうことは間違いないだろう。


結果として菜穂子さんはこの住まいを売りに出すことも出来ず、かといって放置する訳にもいかずにこの家に住み続ける選択をしたのだ。


おしゃれ好き、都会好きの彼女はもっと都心の方に住みたかったはずだ。それが不慮の事態により少し郊外のこんな場所に住まわされることになり、心中複雑だったのではないか。


半ば嫌々住み続けざるを得ないこの家に対し義母は何の思い入れも持てず、家事などはどんどんおざなりになっていき、代わりに『篤史くん』が頑張るようになってからは次第に押し付けるような格好になっていったのではないだろうか。


彼女の心情について、共感は出来ないが理解は出来る。

若くして夫を亡くすという事は、残された妻にとって色々と大変であろう点は同情できなくもない。


『篤史くん』にとっては生まれたときから住み続けた思い入れ深いこの家が、彼女にとっては数年程度過ごしただけの何の感慨もわかないお荷物物件で、でも後何年も住み続けなければならなくて。


もともと彼女にとってこの家はアウェーだ。この家は『篤史くん』にとってのホームだ。だがアウェーであるはずの他人の家に住み続けなければならなくなった菜穂子さんが、大人げないマウントを『篤史くん』に対してとり、同じ立場にある義姉の由紀奈さんと結託して、いつの間にかアウェーとホームの立場が逆転してしまったように思える。


最初のうちこの家は『篤史くん』の家だったはずだけれど、今は『篤史くん』の家ではなくなってしまったのだ。


けれども菜穂子さんも由紀奈さんも、この家の事は好きでも何でもない。少し古臭い造りのこの家の事は、むしろ大っ嫌いなのではないだろうか?


『篤史くん』より後からやってきて、好きでもない家に住み続け、そのくせ自己主張だけは激しい奇妙な立場の二人の女。


そんなに嫌なら出て行けばいいのに。

あれだけの収入があれば23区内の端っこの方なら10万前後の賃貸物件でいくらでもいい場所があるだろうに。

この家の事なら『篤史くん』に押し付けてくれれば、いくらでも一人で管理してみせるのに。


けれどもおそらく菜穂子さんには無理なのだ。

家賃やローンなどの出費が殆どない持ち家。収入のほとんどを自分の自由にできる余裕。その魔力にとりつかれた彼女は、今さら賃貸物件などに出費をすることが出来なくなってしまったのだろうと私は思う。

だから嫌々ながらも住み続け、利益を享受しておきながらいつも文句ばかりを言うのだ。

おまけに『篤史くん』に八つ当たりまでするのだ。


気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い!



次の日の朝、流しには洗っていない義母の食器が積み重なり、ゴミ箱を覗き込むと篤史くんが用意した昨日の夕食が申し訳程度のビニール袋にくるまれて捨てられていた。

義母は『篤史くん』に対しては食べ物を粗末にするななどと腹を立てるくせに、このルールは自分には適用されないのだ。

一応申し訳程度に二重のビニール袋にくるまれて見えないように捨てたつもりのようなのだが、どうしてこれで篤史くんにバレないと思っているのか不思議を通り越して理解不能である。


そしてこれはいつもの事なのである。

お父さんの遺産から支払われる毎月の10万円の殆どが食費で、そのうちの半分ちかくがこうして捨てられるためだけの料理なのだ。

菜穂子さんも由紀奈さんも用意しなければ腹を立てるくせに、準備していても無駄にしてゆくのだ。


『篤史くん』は腹を立てる権利があるはずなのに、私の中にいる『篤史くん』はこれを見ても何の感情も返してこない。

ただ淡々と流しの食器を洗ってみせ、そのまま義姉の朝食の準備をし、義姉はリビングに寄り付きもせずそのまま家を出ていったから、代わりに彼女の分の朝食を『篤史くん』が口にした。


『篤史くん』の作ったスクランブルエッグの火加減は絶妙で、トロトロの半熟具合に粗挽きの黒コショウがピリリと利いて、思わずぱくぱくと食べてしまった。


のんびりと朝食を食べながら、今この瞬間にでも事故が起きて義母と義姉が死んでくれないかなぁなどと、私はどうでもいいつかの間の妄想を楽しんだ。



相続がらみのところはあまり突っ込むと色々難しそうだったので、とりあえず触りだけをなめて作中に組み込みました。


補足となりますが、『私』の推測通り不動産は篤史くんの名義となっており、代わりに亡夫の保険金や祖父母から受け継いだ資産についてを菜穂子さんが相続する遺言状を作ることでバランスを取ったという設定です。


お父さんは結婚したばかりの菜穂子さんを愛しておりましたからそれなりに信用しておりましたが、いざ死の可能性を前に相談した知人の弁護士の人は最初から菜穂子さんをかなり疑っており、このままだとお父さんの実子である篤史くんが不利益を被るかもしれないという事で、不動産を篤史くんに相続させる遺言を作らせたってイメージです。


それで弁護士の人が相続の際に菜穂子さんと戦って、もし法定代理人の権利を勝手に行使して不動産を売却したなら、そのお金を篤史くんのため以外に使ったら損害賠償請求に訴えるとかなりきつめに言い含めてある、みたいな感じを考えております。


なお、由紀奈さんの相続については、由紀奈さんはお父さんとは血縁関係がないため相続権がありません。

お父さんとしては由紀奈さんにも財産を残すため養子縁組をする、もしくは遺言を残しても良いように考えていたようですが、これまた嫌な予感がする知人弁護士の人が止めさせたという設定となっております。

由紀奈さんが子として認められないので、法定相続は母1、子1の2/1づつとなり、菜穂子さんが受け取った現金と篤史くんが手にした不動産の資産価値が同じくらいなので、双方とも遺留分の請求などは出来ないようになっております。



ところで例えば菜穂子さんがこの知人弁護士とは別の法律相談事務所などと相談・結託して、勝手に物件を売りさばき、手にしたお金を勝手に使い込んでしまえば篤史くんには防ぎようがないものと思われます。

未成年自身の不動産取引は制約が厳しくとも、未成年の法定代理人の権限は一般の成人と変わらないからです。

全部使い切ってしまえば後になって篤史くんが損害賠償などに訴えても、返ってくるお金は微々たるものとなるでしょう。

知り合いの弁護士の人はそうならないようめいいっぱい菜穂子さんに脅しをかけたのですが、実際には法的な効力があるわけではないので、菜穂子さんが少しでも悪知恵が働けば使い込まれてしまうという危うい状況という感じです。

また、弁護士の人が変に頑張っちゃったせいで却って菜穂子さんは篤史くんに悪感情を覚えてしまった、みたいな悲しい経緯などもあります。


このあたり、『私』視点では伝わらない裏エピソードとなり本編には組み込めそうにないので、ここで先に書いてしまいます。


不勉強でおかしなところがあるかもしれません。

お詳しい方いたらご指摘、あとできれば代替案などを教えていただけるとすげー助かります。



未成年の資産を親族が使い込んじゃって、成人した時には一銭も残ってないとかって話、世間じゃゴロゴロしてるんでしょうね……。

天涯孤独を決め込んでいる私には無縁の世界の話ではありますが。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ