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五章 支配者-7

決闘と告げたドーンジェイは、嬉しさに口元を歪ませてしまうほどの狂気的な笑みを浮かべて銃をチラつかせる。なんだか知らんが、こいつは戦いに取り憑かれた男のようだ


「マジか、銃で決闘?西部劇かよ……なんで決闘がいいんだ?」

「いいか若造、俺は依頼されて戦う男だ。ただ偶然この国だと盗賊として依頼を受けると戦う事が多いんで、俺は盗賊をしてきた……俺はなぁ、国の事情とか金はどうでもいい。ただ戦いてぇんだよ!戦争後の混沌の時代、何もかもが複雑になったこの時代には純粋な闘争によってもたらされる生きる喜びが欠けている!俺はな若造、ただ戦いてぇ。戦って生きる喜びを感じたいんだよ!!」


まーたイカれたやつに狙われてしまった。だが決闘でこいつが満足するなら


「いいだろう。そういうことなら……さっさと決闘でケリをつけるぞ」

「素晴らしい!お前なら受けてくれると信じていたぞ……安心しろ、お前の分の銃も用意してある」

「いや、俺も銃持ってるんだ。これでいいよ」


コートの内ポケットに俺は手を突っ込むと、そこから歯車が取り付けられた銃を取り出す。スチーマに行った時にマフィアから盗んだ銃だ


「ほう、その銃は……スチーマの「パンクリガーP08」か。その銃はやめておけ、戦時中の初期に使われた安い銃だ。装填数は少なく、反動は大きく、精度は低い」

「お、そうなの。銃詳しいんだなお前」

「銃はロマンだ……俺の金色の銃を見ろ。スカイアで魔力が込められ神武改造が施された「リベレーション・エアー666」だ。今の時代で最強のハンドガンはこれだろう。軽く、鋭く、一片の乱れもない完璧な精度……俺はその銃を金色の塗料で着色し、光沢に磨きをかけた。まるで神を目の当たりにした輝きだろう」

「あっそ、さっさと始めようぜ。俺は自分の銃でいいからさ」


なんだか銃に対し随分詳しく彼は説明してくれたが、熱意は伝わったものの俺は特に銃に興味は無いんで早く始めたかった、銃って撃って殺せれば何でもいいだろう。ドーンジェイはもっと説明したかったのか不満げな顔を浮かべるものの、腰のベルトに付けていたホルスターに銃を入れて決闘の準備をする。


「血が騒ぐな若造……時代は混沌に飲まれた。男と男の闘争は価値を失い、疑念と騙し合いによって権力と偽りの尊厳を得る時代だ。俺は自らを保身し、狭い部屋で老いて腐り果てる死を迎えるなど絶対にごめんだ!純粋なる闘争で、全てを飲み込むこの大いなる自然の砂漠で、戦いによる死を迎えさせてくれ!」

「そ、そうか……じゃあやろうぜ」


こいつも何か独特な考えを持ってるみたいだけどどうにも共感出来ない。部屋でこもって死ぬって俺はそんなに悪い事じゃないと思うんだけどな、俺は前世の時に何年間も部屋に引きこもってたよ。


「おい、お前達!お前らはこのドーンジェイの決闘の証人となる。刮目しろ!」


周りの盗賊の手下達は、そう言われると目を必死に見開いて決闘を固唾を呑んで見守っていた。

俺はなんか決闘ってカッコつけすぎだと思ってついヘラヘラ笑いながら、ティラに手を振る


「ティラー、俺ちょっと決闘するわ。応援して〜」

「はーい、頑張ってくださいねトウヤ」


ひらひらと手を振る俺に、ティラも片腕でナンナを抱きながら、もう片方の手で俺に手を振ってくれた。ナンナに血生臭い戦いは見せないように、ティラはナンナの顔を自らの胸に抱き寄せる


「トウヤ、大丈夫なのか?これから兄さんを倒しに行くのにこんな所で死なないでくれ」

「そうよトウヤ!」

「死なねーって大丈夫だよ」


俺はコートのポケットに銃を入れて、ドーンジェイと背中を向け反対側に歩いて距離を取る。決闘でちょうどいい距離ってどのくらいなんだろう、のそのそ砂を踏みしめながらとりあえず歩いているとアイツから声がかかった


「そこで止まれ!そしてこっちを向くのだ。この距離で行う」


ちゃんと距離の範囲を教えてくれた。盗賊のリーダーだけど不意打ちもせずちゃんと決闘の距離を教えてくれるなんて優しいじゃないの。

大体10メートルくらいかな、ほどほど離れた辺りで俺とドーンジェイは向き合って両手を下ろす。奴の表情は真剣そのものだ、この決闘に全て賭けているのが、悟りと鋭さを同時に感じさせるその目付きから感じ取れる。俺はというとまだここで死ぬつもりは全然ないので、面倒くさそうな表情してたかもしれん。


向き合って10秒ほど経った、お互いにまだ銃は抜かない。負ける気がしなくてもこの決闘の緊張感というのは十分感じ取れる。見守る俺の嫁と仲間と、そして敵の盗賊達。命を決すこの数秒は永遠のように感じ取れる、きっとドーンジェイはこの時間が好きなんだろうな。張り詰めているが二人だけの男の戦いという、緊張に満ちたこの時間が好きになる気持ちは少し分かった。というのも俺がチートを持った最強の男で余裕があるから感じられるんだけどね、もし俺が最強じゃなかったらこういう緊張する場だと多分ビビっていたと思う。


それから数秒、

ついにドーンジェイはホルスターから銃を抜いた。


その動きは極めて素早かった。だが悲しいかな、俺は危険や殺意を察知すると、この世界の動きがスローに見えてしまうのだ。全てをかけたドーンジェイの素早く銃を抜く動作が、ゆーっくりとスローモーションで見えてしまうその様子は、何だか自分が強すぎて自分で申し訳なくなってきた。チートを持ってる俺に勝てるはずがないだろう、力の差とは無慈悲なものだ。

俺は至って落ち着いてコートのポケットから銃を取り出すと、銃に魔力で作った銃弾を装填出来る魔法「バレットチャージ」を使い。銃に魔力の銃弾を装填させる。そしてその銃を、ドーンジェイの胸に目掛けて3発発砲した


「悪いな」


俺がそう呟く間も無く、速すぎる3発の銃声と共に魔力で作られた銃弾が奴の胸に直撃する。ドーンジェイは目を大きく見開きながら、銃を持っていない方の手で胸を押さえてその場で倒れた


「……ッッ!!!」


死を覚悟したのか、奴は悲鳴も上げずに砂の上に体を放り出す。ざわめく盗賊の手下、ロランスはビックリして口を手で覆い。ホリスはビクッと肩を少し震わせたが真剣にその様子を見つめた。ティラはというと特に動じずただ当たり前のように俺の勝利を信頼しきっていた。

俺は倒れたドーンジェイにゆっくりと歩み寄る


「……ぐ、が…カハッ…!ガ、ハ……!!」


奴は胸を押さえ目を見開きながら咳をして起き上がった。そして撃たれた自分の胸を見た後、俺を睨みつけて


「な、なぜだ……撃たれたのになぜ血が出ていない……貴様、俺に手加減をしたな!!?」

「ああ、魔力で作った銃弾をお前に撃った。衝撃が少しあるだけで死なない弾だ」

「貴様ぁ……俺が決闘による死を望んでいると知っていながら、この仕打ちを……!!」


怒りに震え睨む彼を、俺は冷たく見下ろした


「ああそうとも、お前は負けた。さっさと行け、敗北した屈辱と共に手下を連れてな」


ドーンジェイは歯軋りをしながらゆっくりと立ち上がり、「来い!お前ら」と手下達を呼んで馬に乗り上げる。

だが俺はその背中を見て、少し寂しさを感じた。奴は戦後の混乱の時代で複雑になった価値観の世界の中、寂しさを感じているのかもしれない。かつては戦士は戦争に重宝されたが、いまや技術革新と文明の進化により、純粋な闘争は無用の存在。そんな時代の中、闘争を求めるその背中に俺はどこまでも不器用な生き方を感じた。こいつの苦しみとは違うかもしれないけどさ、俺も前世では無能で誰にも必要とされない苦しみにずっと苦しめられてきたから


「待て!」


俺はつい、馬に乗って走り去ろうとするドーンジェイを呼び止め、彼も振り返った


「なんだ……?」

「たしかに今は混乱の時代かもしれない。でも俺はいま、この世界を作り変えようと動いているんだ。もし俺のしている事が上手くいったら……お前も少し生きやすくなるかもしれない」

「ほう……一体何をしようとしている」

「俺は国を作り、国王になるつもりだ」


それを聞くと、ドーンジェイは微笑んだ


「お前……名は何と言ったか」

「アオイ・トウヤだ」

「トウヤか……覚えておこう。忘れるはずもないがな、決闘で屈辱を与えた男の名を」


奴はそう言ってから、盗賊の手下を連れてその場を去ってしまった。

ひとまず奴らを追い払う事には成功した、ふぅ、と俺は一息つくと。戦ってる最中ずっと怯えていた魔女の家族達に歩み寄る

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