五章 支配者-5
森小屋から俺らとホリス、ナンナ、ロランスは一度外に出て、ロランスは杖を振りポータルを開く準備をしようとしている。だが杖を振っている最中に、ホリスの腕の中にいたナンナが泣き始めた
「……うー……おぎゃああ!おぎゃあああ!!」
「おいおいおい、大丈夫かホリス。その子泣いてるぞ?」
「大丈夫、お腹空いただけだよ。これを与えれば落ち着く」
ホリスはコートの中から瓶を取り出し、その中には緑色の液体が入っていた
「それは?」
「野菜を擦り潰した液体だ。本当はミルクを飲ませたいけど、当然僕はミルクは出せないしこの森じゃ手に入れるのも大変だ」
ナンナは赤ちゃんだからどうやら食事にも苦労しているようだ、14歳の少年なのに赤ちゃんの世話を求められるとは。ロランスはなぜかニヤつきながらティラを見つめて
「もしティラが母乳出たらあげられたのにね、ミルクいっぱい出そうなサイズだもん」
「やめてください、母乳は出ません……」
その時、俺の脳裏に電気が走るような閃きが灯った
「ホリス、待つんだ!ナンナにミルクをあげられるかもしれない」
「え、なんだって?」
俺は真剣な表情を浮かべてティラを見つめた
「ティラ、ずっと試したかった魔法があるんだけど使う機会が無くてまだやってなかった。今こそ使う時だ」
「は、はいっ。なんでしょうそれは」
「母乳を出す魔法だ」
いたって真剣に俺はその事を伝えたわけだが、全員俺の周りで呆然としている
「トウヤ……お前本当に、魔王を倒した男なのか?」
「あなた魔法の使いすぎで頭おかしくなったんじゃないの……?」
「トウヤ、私は妊娠していません。母乳を出すなど不可能です……」
「ばぶぅ、ばぶぅぅ」
なぜか全員俺を蔑んだ目で見てティラまで険しい表情で俺を見始めたが、俺は説明を続ける
「いやいや、みんなよく聞け。正確には母乳を出させるというよりも、俺の魔法によってホルモンをパワーアップさせて母乳を出せる体にするという方が正しい。実は妊娠はしていないが母乳を出せるという例は少なくはないんだ、さらに乳頭を刺激させている経験があれば、さらに母乳が出やすくなるって聞いた事がある」
「あの、トウヤ……」
「俺は普段ティラの乳頭をよく刺激している。だからティラのホルモンさえ俺の魔法で強化させれば、妊娠していなくても母乳を出せる確率は上がるかもしれない。ティラに母乳を出させることが出来れば、ナンナに母乳を飲ませることができるぞ!」
「そんなことまで言わないでください恥ずかしい……」
ティラは顔を真っ赤にして両手で顔を覆ったが、同行する仲間に赤ちゃんが増えてしまった以上ミルクを確保することは非常に重要だ。ホリスも最初は怪訝な顔をしていたが、やがて話を聞き入れる気になったのか頷き
「……僕にとってもナンナの健康を守ることは大事だ。出来れば人から摂取出来る母乳を、この子に与えたい……ティラ、僕からもお願いだ。ナンナに母乳を飲ませてくれないか」
「あの、ホリスさん……私は人間ではありません、この通り魔物です」
ティラは被っていた帽子を外して、魔物ラビットナイトの証であるウサギの耳を見せつける。だがホリスはその耳を見ても動じることはなくティラに詰め寄った
「魔物かどうかなど気にしない、今はミルクを確保することが先決だ。僕は王族の出身ではあるが妹の世話になると未熟者だ、泣き叫ぶナンナに対し動揺することしか出来ない夜もある……君のような豊満な胸の女性の方が、ナンナを世話するのに適しているのかもしれない」
「私は弟がいたので赤ん坊を世話した経験はありますが……私の母乳などでよいのでしょうか」
彼女は不安に思っている様子だったので、俺はティラの肩に手を添えて励ました
「ティラ!いまこそティラの母乳が必要なんだ!妊娠していない女性の母乳を見る事が俺の夢の一つでもあった、ティラ、俺とナンナのためにも母乳を出してくれないか」
困惑するティラに対し、ロランスは怒った表情でティラの腕を引っ張って、俺たちから引き離し
「ちょっとあなた達いい加減にしなさい!ティラは母乳を出す道具じゃないのよ。ティラ……そんな無理して母乳を出さなくていいんだからね、あんな男達の言う事なんて聞いちゃダメ」
だが怒るロランスに対し、ティラは首を横に振って微笑んだ
「いいえロランス……トウヤが求めるのであれば、もちろん喜んで母乳を出します。それに、私もナンナが心配です。この子も親が死んで、お兄さんだけが残された家族……寂しさを感じているかも」
「ティラ……」
「ナンナに必要なのは温もりかもしれません、私の母乳でナンナが少しでも元気になれば。幸いです」
さすがティラだ、彼女も近くに困っている人がいたら放っておけない性格なのだ。ティラは微笑みながら俺に歩み寄って体を捧げるように腕を広げて
「トウヤ、魔法を」
「あぁ……さあ、俺の魔力よ、ティラの母乳を発射させてくれ……”ハティーモ”!」
俺は呪文を唱え光る両手をティラの肩に添え、彼女の体に魔力を巡らせた。目を閉じていたティラはゆっくり目を開けて、俺は様子を伺い
「ティラ、どうだ……?」
最初はティラは呆然とした表情を浮かべていたが、後からすぐに目を見開いて忙しない動きでホリスに抱かれているナンナに手を差し出し
「ホリスさん、ナンナは私に任せて……」
「え、ティラ。どうしたんだ?」
「もう溢れてきてます!急いで飲ませないとッ……!」
こんなに即効性があるとは思わなかった、ということはあの服の下であの豊満な丸みは白い女性の雫に濡れているということなのか。俺はつい興奮してしまったが、ティラはそれどころではなくナンナの体を急いで抱っこして木の裏へ隠れようとしている
「ティラ!俺もちゃんと授乳出来るか確認する」
「恥ずかしいのでついて来ないでくださいっ!一人で大丈夫です…!」
なんて事だ、せっかくの初授乳が見れるはずだったのに断られてしまった。ティラは慌てて木の裏に隠れて、服が擦れる音と共に乳房を露にさせていく音が聞こえてくる。ちゅっぱちゅっぱと吸引音が聞こえてきて
「あーあ……ティラの母乳を最初に飲むの、俺だと思ってたのに……」
俺が呟くとロランスもホリスも何か変なものを見るような目で俺のほうを睨みつけていた気がするが、俺はそんなことは気にせず。数分経つとようやくティラがナンナを抱っこしながら木の裏から戻ってきた、初めての授乳は疲れたようでティラの肌は少し汗ばんでいる
「終わりました……」
慌てて乳房を服から溢れさせてから服を直したので、服も少し乱れている様子がある。ナンナは満足そうにきゃっきゃと笑顔を浮かべて小さな腕を揺らし、ティラのおっぱいが気に入ったのか、両手でぎゅーっとティラの胸に抱きついている
「お疲れティラ!いきなり母乳出させて悪かったな?」
「いえ……吸わせているとナンナがすごく落ち着いたので、私もよかったです。ホリス、ナンナを返しますね」
ティラはホリスに抱っこしていたナンナを差し出すが、ホリスは首を横に振って
「僕と同行している間、ナンナを抱いていてくれないか……どうやらナンナは、ティラが気に入ったみたいだ」
「そ、そうですか……では……」
彼に伝えられるとティラは見守るような微笑みを浮かべ、ナンナを抱っこして髪を撫でている。それにティラの豊満な胸にも支えられているので、この子も少し居心地が良さそうだ
「ちょっとホリス、これから国を奪還しに兄さんを倒しにいくのに緊張感ないわよ!」
「ロランス、僕は覚悟なら出来てる。いつでも奴の首を切り落としてやる」
杖を握ったロランスは、ようやく杖を振ってポータルを出現させると。そこには砂漠が広がっており
「よし、いくわよ。みんな」