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五章 支配者-4

ポータルの向こうは静かな森であった。人の手が加えられた様子は無く木々が生い茂り葉っぱも当たり一面に広がっている、通りやすくなっているのは獣道くらいだ。ここに人が来るとしたら自分の姿を木々によって隠したい時くらいだろう、こんな所に人がいるとは甚だ疑問を感じ、歩きづらい道をティラと手を繋ぎながら歩き俺はロランスに問いかける


「おい、こんなところに本当に協力してくれる人がいるのか?」

「こんなところにいる必要がある人なのよ、姿を見られると危険な人なの」


少し歩くと、平坦な場所に小さくそびえ立つ山小屋が見えた。ロランスは小屋を指さしその方向へと駆け出す、どうやらあの小屋に国の建国に協力してくれる人がいるんだろう。何となく俺は厳格な経験豊富そうなおじさんとか、しっかりしてそうな人を想像していた。

ロランスは小屋のドアの前に立つと、ドアをノックして


「王子ー!例の人を連れて来たよ!」

「王子……?」


ロランスは小屋のドアを開く、小屋の奥に縮こまるように座り込んでいたのはフードを被った金髪の背の小さな男性……いや、男性というよりも子供だ。彼は子供だった、頬に古い切り傷がある金髪の小さな少年は片腕に同じくフードを被った幼い女の子を抱きかかえながら、俺の事を警戒していた。俺はその警戒をすぐに察することが出来た、セブンスセンスが殺意を察知し彼の片手にはナイフが握られているのを感じ取る。この少年は俺らの事を十分警戒しているようだ


「……信用出来る奴なんだろうな」

「あぶ、ばぁぶぅ」


こちらを睨みつける少年は訝しげに俺の顔を眺めている。彼の片腕に抱き抱えられている小さな幼い女の子は言葉も分からない年齢のようで、少年のフードを引っ張りながら幼児特有の鳴き声を上げている。見る限り1歳か2歳くらいかな、前世でも赤ちゃんに触れた機会があまり無かったから分からないけど


「ロランス、子供じゃないか……彼が国を作るために協力を?」

「試してみるか、僕は妹を抱き抱えたままお前の首を切る事など簡単だ」


片腕に抱いているのはどうやら妹のようだ。彼の目からは少年でありながら只ならぬ運命を歩んできた鋭い力を感じさせる、俺のセブンスセンスが絶えず彼の殺意と危険性を察知し続けていた。彼のような強靭な精神を持つ者を見下しながら話すのは恐らく失礼に当たるだろう、俺は彼の前にしゃがみ込んで同じ目線で話す事にした


「君の年齢は?あと腕に抱えた妹さんの歳も……」

「14歳、妹は1歳だ」

「俺を試すか?その片手のナイフで俺の目でも喉でも切り裂いてみればいい」


彼は隠していたであろう片手のナイフを指摘されると驚いた様子で目を見開いた。だがすぐに俺を仕留めるための狩人のような目つきに変わり、素早い動きで俺の目の前に刃物が突き立てられようとしている。しかし手加減している、俺のセブンスセンスは彼の力の加減を感じ取って俺の目の寸前でナイフを止めようとしているのをすぐに感じ取った。

ほんの一瞬の動き、少年のナイフの刃先が俺の眼球に当たるスレスレで静止する。俺の目を刺そうと思えば出来ただろうが少年はそれをしなかった


「素早い動きだ、その刃で人を斬るのは初めてではないな」

「……妹に血を見せるわけにはいかない。僕を弄ぶな、お前の方だって僕を殺そうと思えば簡単に出来るはず。死の国「ネクロス」の魔王を、たった一人で滅ぼしたとロランスから聞いたぞ」


少年の殺意に満ちた目と緊張の面持ちを見て、彼がどんな奴かはまだ分からないが生意気なこの少年が只者ではなく信用に値する事を確信してつい微笑んでしまった。


「俺はアオイトウヤ、無職だ!君の名前は?」

「無職……旅人か。僕はホリス、かつて砂の王国「サンディード」の王族だった。妹の名はナンナだ」

「王族!だから王子って言われたのか、どうぞよろしく」


俺は微笑みながら彼に手を差し出し握手を求める。ホリスと呼ばれた少年は相変わらず疑惑の目を浮かべて俺の事を見つめているが、ゆっくり俺の手に自らの手を重ねて握手してくれた。

俺とホリスが話している間、後ろでロランスは苦笑いを浮かべながらティラに話しかけている


「うーーん、刃物を抜いちゃったけどー……一応仲良くなれたのかな?」

「ええ、見てくださいトウヤの穏やかな顔を、ホリスさんを信用したみたいです。私以外にあんな表情をすること滅多にないんですよ」

「そ、そっかぁ……」


俺はホリスの事がもっと知りたくなったので立ち上がりロランスに振り返って状況の説明を求める。


「ロランス……ホリスに一体何があったんだ?」

「詳しい事はあとで説明するけど……簡単に話すと、裏切り者の兄さんに両親を殺されて国から追い出された王子って所かな」

「なんだと?」

「ホリスの兄さんが王座を求め、自分の両親でもあるサンディードの国王と王妃を殺したんだ。ホリスは何とか妹のナンナを連れて滝から逃げ出し、私が手助けした。今はホリスとナンナは死んだと思われている。そしてサンディードはいま、ホリスの兄さん「アヌバス」が国王として国を支配しているのよ」


只者では無いとは思ってたが、思ったよりハードな生い立ちだった可哀想に。ロランスは切なげな表情を浮かべながら、相変わらず鋭い表情を浮かべているホリスの隣にしゃがんで


「サンディードはかつて……魔女狩りの時代に、魔女を密かに国で保護してくれた歴史があるの。私の母もサンディードに住みながら私を産んだ。そしてホリス王子は、子供でありながら常に国で魔女を保護する事を主張してくれたのよ。だから彼には借りがある」


ロランスはホリスの肩に手を添えると、険しかったホリスの表情はようやく見守るような表情でロランスを見つめた。

簡単な説明で何となく状況が見えてきたので、俺は腕を組み真剣な表情を浮かべながらホリスを見下ろした


「つまりこういう事か……ホリスの兄アヌバスは、自らの両親を殺し王座を奪った。だから君は、兄の首を斬り落とし王座を取り戻すつもりか?復讐のために」

「ああそうだ、僕の兄さん、アヌバスは僕から全てを奪った。残ったのは妹のナンナだけだ……」

「もちろん俺はチート並みに強いから戦うことに関しては協力できる。だがホリス……その手で兄を殺せるのか、自信が無いなら俺が殺すけど」

「いいや僕に殺させてくれ。アヌバスの裏切りは、絶対に許されない……僕は必ず奴の首を切り落とし、生首を燃やしてやる」


ホリスの態度は静かで落ち着いたものではあったが、その目は血に飢えた闘争の怒りに燃えていた。妹は言葉を理解していないのか、笑顔を浮かべて「だぁだぁ」と鳴き声を上げながら怒りに燃える兄の頬をぷにぷに小さな手で突っついている


「14歳にしてとんでもない覚悟だな……ティラ、協力するか?」

「ええ、やりましょうトウヤ。一緒にホリスの復讐に協力しましょう」

「よし、じゃあホリス……兄さんを殺しに行こうぜ!」

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