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四章 悦楽-14

魔王は大陸の山の方に城を建てていると聞いた。奴はそこに自分一人だけ住んで国民達を死ぬまで働く奴隷にしながら優雅な暮らしを送っているらしい。

そりゃあ大体の庶民っていうのは働いて死ぬだけの人生だよ、でもあの町の惨状を見ると国民を殺さずもっと幸せに出来る方法はいくらでもあるはずなのに。むしろ利益ばかり優先して死体の兵士を増やし、伝染病まで増やして見て見ぬフリしてるもんだからひどい状態だ、奴のあまりに庶民を顧みないやり方は変えてやらなきゃいけない。

俺は魔王がいる城を見つけた、その周囲には黒いドラゴンや魔物の巨人が徘徊している。セブンスセンスで奴らを見ると、生命の反応が無い。ドラゴンも魔物も魔法で生きた屍として死にながら城の周りを徘徊している、すぐに近づかず俺は城がそびえ立つ山が見える崖に着地し、ティラもそこに降ろした。


「見ろよティラ、城の周りを大勢の死んだ魔物と人の軍団で固めてる。ゾンビの軍団だよ、あの軍団で手出しも反乱も出来ないようにしているんだ」

「ドラゴンや巨大な魔物まで……圧倒的な力で城を守っていますね」


しばらくその城を眺めていたが、突然頭に声が流れ込んできた


『貴様ら、それ以上近づくな。私の死の軍団を敵に回したくなければな』


頭に流れる男の声、その声の主はすぐに察しが付いた。魔王ヘルデウス、魔法を経由して俺の意識に直接声を届かせているのだ、俺はセブンスセンスでテレパシーの主をすぐに察知した。城の最上階の窓から俺を眺めている男の姿、俺はセンスで視力を強化させて奴の姿を眺める。


真っ白な肌をした魔王の姿だ、1000年も生きてるだけあって血の気も引いているし皮膚を伝う血管も青ざめている。おそらく魔法で何とか肉体を延命させているんだろう。俺もテレパシーを奴の意識に送る


『そいつは出来ねぇ、お前のせいで国民がひどい目にあってんだ。責任をとってもらうぞ、王様』

『魔法も使えない取るに足らん虫ケラなど私の知ったことか、奴らは私に感謝すべきだ。国の資源として死してなお役に立つのだからな』


ダメだやっぱ話の通じないサイコパスっぽいわあいつ、なんで権力者って大体性格ねじ曲がっちゃうんだろうな


「トウヤ、どうしました?」

「あいつからテレパシーが送られてきた。国民はどうでもいいし、近づけば殺すってさ」

「では引き下がるのですか?」

「まさか……奴を脅迫してやる」


俺は再びテレパシーを奴に送信する


『いいかよく聞け、お前の魔法を解除して死んだ奴らを動かなくさせろ。じゃないとお前を殺す』

『バカを言うな部外者め……誰に向かって口を聞いている』

『大体そんなデカイ城にたった一人で何千年も住んでるだけって、一体何が楽しいんだ?』

『私は不老不死の力を与えられた……この力を私は、世界の破滅の時を私に見届けろという神が私に与えた役目と受け取った。私はどんな犠牲を払ってでもこの城で生き続けるぞ、人類が滅亡しようと私は存在し続ける……そしてこの国を拠点に世界中の屍をかき集め、全てを私の奴隷にするのだ。私は不滅の王だ!』


だめだイカれてやがるぜこいつ、ため息をついてティラに向き直る。こういう頭おかしい奴の相手をしてる時は、ティラの可愛い顔を見ると落ち着き自分を取り戻せる


「あいつ人類が滅亡しても自分だけが生き残る野望に取り憑かれてる、長生きするだけが目標の退屈なジジイだよ」

「ひどい人ですね」

「一人でやってるならいいけどさ、周りを巻き込むなって感じだよな」


話してると今度は向こうからもテレパシーで脅迫してきた


『安心しろ、貴様も死の国の民に加えてやろう……この国で死ねば私の放つ魔の瘴気によって、生きる屍として奴隷となるのだからな……我が死の軍団の裁きを、受けるがいい!!』


すると城の周りにいた魔物や人のゾンビの集団が、目を赤くさせて崖の上にいる俺を睨みつける


『見るがいい壮観だろ……我が城を防衛する100万体の死の軍団だ!人や単なる魔物だけではない……巨大なオーク、ゴブリン、ミノタウロス、ドラゴン、ワイバーン、そしてかつて古代に生存した巨人の魔物、タイタンの死体をも目覚めさせた……全て私の奴隷だ!!』


なるほどこれは壮観だ、魔王ヘルデウスが高めた魔力の影響だからか先ほどから灰色だった空は更に暗雲を立ち込めさせて燻んだ色の雲が辺りを覆うようになってきた。しかも黒めの雲からは何度か雷が発生し、威圧的な雰囲気を漂わせる。城の周りには100万体の怪物共だ、中々燃える演出をしてくれるじゃねぇか


「よっし、じゃあ行くかな」

「トウヤ、私も一緒に戦います」

「今回はダメだ、数が多すぎるし俺の魔法にも巻き込まれるかも。ここで大人しくしていなさい」

「私は戦士です、トウヤと一緒に戦えるなら怪我も死ぬ事も怖くありません」

「また今度戦わせてやる、でも今回はダメ!」

「行かせてください!」

「リパルション・ボックス!」


俺は呪文を唱えた。この魔法は四角い魔力のバリアを発生させる魔法だ、ティラがこれ以上来ないよう四角いバリアでティラをその中に閉じ込めた。少人数の戦いなら少し戦わせてもいいが、今回は規模が違う、レベルが平均50くらいある魔物の群れが城の周りを囲んでいるのだ、しかも魔王の魔法で筋力を強化されてる上に無理やり動かされてるゾンビ魔物なので抑えが効かず狂暴化バーサーカー状態だ。まだレベルの低いティラをこの場で戦わせるわけにはいかない。

四角いバリアに閉じ込められたティラは、ガラスのような透明なバリアの壁に手を付きながら頬を膨らませてこちらを睨み


「悪く思うなよ。いまは俺の動きを見て覚えるんだ!」

「トウヤ……もう!」


こういう時のために俺は楽しみにしていた魔法があったのだ。このところ戦う相手がずる賢い人間とか権力を振りかざして悪いことしてるけど大して強くない人間とかばっかりだった。普通の人を助けるために戦うとなると、そういう権力だけ持ってるけど強くない敵と戦うことが多いんだよね。でも今回は、100万体の魔物だよ。しかも全員もう既にゾンビだから倒すことにあんまり罪悪感がない。

つまり、力加減を考えず究極の魔法を出してもいいってことだ。大陸の中心なんて広いフィールドを敵の群れで埋めてくれちゃってさ、血が騒ぐぜ


「超越魔術……顕現しろ!「ウィング・オブ・ルーイン -破滅の翼-」!」


俺は体の前で両腕を交差させると足元に魔法陣が出現し、それと同時に俺の背中から巨大な翼が生える。黒い金属のように光沢を輝かせるこの翼は、魔術書によると近づくもの全てを破壊するらしいんだって。本来、この超越魔術っていう種類の魔法は極限まで魔法を極めたものでも強力すぎて魔力が足りず5秒程度しか発動出来ないらしい。でも俺チートだからずっと発動出来る


「そして、タイムスピード。お楽しみの時間だ……」


俺は片手を上へと掲げ、指パッチンと同時にタイムスピード(時間停止)の魔法を発動する。あのヘルデウスもどうやらこの時間停止に対する魔法は持っていないようだ、城の窓から俺の方を眺めて時間が止まって静止している。あいつが瞬きしてる間に度肝を抜いてやるよ


「よっしゃ暴れるぜえええ!!!」


俺は背中から生えた破滅の翼と共に、腕を大きく広げながら崖から飛び降りて翼を広げながら敵の群れに向かって滑空する。破滅の翼を大きくはためかせると、翼の周りから衝撃波が発生して自分を中心に竜巻が出現した。その竜巻は周りの敵の群れを吸い込んで、無数の敵達が俺を中心とした竜巻の中へと吸い込まれる。そして同時に翼から雷が発生して、翼から放出された竜巻と雷が混じり合い、翼の雷は連なるように強力なゾンビの魔物を一瞬で塵にしていく。竜巻に吸い込まれたゾンビ達が次々と俺の頭上で単なる塵となっていくのだ


「ハッハー!!こいつはたまんねぇなぁ!!」


あんまり大勢の敵が竜巻に吸い込まれて一瞬で塵になっていくんで俺はつい笑ってしまった。さらに俺は翼から雷を放ちながら群れの上を、まるでロケットのように超高速で空中を駆け回る。するとその風圧で敵の群れ達が、超高速で空中を疾走する俺の背後で次々と上空へと浮かび上がり、翼がその上空に浮かび上がった敵達を狙い撃つように雷を上へと放出させ。浮かび上がった敵達を雷で粉砕し、無数の塵の雨が降り注ぐ。次は空を飛ぶ敵だ


「来い、ファントムソード!」


俺は両手から魔力で作られたファントムソードを出現させる。剣身は魔力量で好きなだけ伸ばせるので、今回は範囲を気にせず戦えるので10m以上も剣身を伸ばして出現させながら、俺はそれを軽々振り回し空中を浮遊するドラゴン「ワイバーン」に向かって振りかざした


「オォラ!!」


それは面白いくらいに簡単でドラゴンのゾンビが紙みたいに簡単に切れちまった。10mの剣はカッターナイフくらい軽く持てるし、敵もまるでナイフで紙を切るくらい簡単に切り落とせてしまう。ティラと遠くに行く時はもう最近は空での移動がメインなので空で動き回るのなんか楽勝だ。俺は突風のように空中を高速で移動しながら、空に飛ぶ敵に向かって空中で体を縦に回転させ剣を振り回しながら、ワイバーン共の体を真っ二つに次々切り裂いていく。そしてタイタンと呼ばれる巨人の魔物、奴の首も剣を横に振ったら簡単に首を切り落とせてしまった。敵が紙のように切れていくのが楽しいので、俺は自分の体が返り血でドロドロになっている事に気が付かず、返り血の匂いで自分がどれだけ夢中で剣を振り回していたのかようやく気がついた


「敵を殺すのって楽しいなぁ……ヒハハッ!まだまだこんなもんじゃねーぞ……!」


俺は一旦ファントムソードを消滅させると空高く飛び上がって魔王の軍を一望する、だいぶ減ったがまだまだ残っているな。大掃除といこう


「超越魔術……「アジュールフラッシュ -紺碧の走馬灯-」」


俺は自分の頭上で次元の狭間をこじ開けて黒色の雲を開き、そこから青く輝いた星々が輝く銀河系のような美しい次元のゲートを空に出現させる。そしてその青く輝く星のような粒が下降していき、小さな彗星として敵の群れ目掛けて降り落ちていく。

この魔法は自分が強く意識した場所に魔力で作られた青い彗星を落とす事が出来る魔法だ。敵の群れ目掛けて、いくつもの青い彗星が風を切る降下音を立てながら次々と敵の群れへと雨のように降り注いでいく。

そして爆発、城の周りは青い爆炎に包まれた。まるで世界が終わる瞬間を見ているかのようだよ、爆発を見るのがこんなに心を躍らせるものだったとは自分でも驚いている。俺は自分の力に溺れながら力を振りかざす事を楽しんだ、時間停止を解除した後の魔王の反応が楽しみだ


「ハーッハハハ!!こいつはすげぇ!これだからチートはやめらんねぇよぉ!!」


あ、ティラはもちろん俺の作ったバリアに守られてるから無事だ。常に当てないよう意識してるし破片が飛び散ってもバリアが守ってくれる。だって俺の作ったバリアだから絶対に壊れないし守られる

俺はセブンスセンスでまだ動いている敵がいないかを確認した、セブンスセンスは生命力と魔力に特に敏感に反応する。視界の中でオーラを放っている部分があったので、そこを視力を強化させて見つめると。ゾンビなので地中に埋もれ何とか攻撃を回避している魔物がいた。俺はファントムソードを持って高速でその残っている魔物の前へと移動すると、剣で首を切り落とす。竜巻と彗星まで発生させたしここまで倒せばもう俺の勝ちだが、せっかくだし一匹残らず倒そうかと思って、時間の止まった世界でチマチマとまだ動いている敵を倒していく。たとえばゲームで敵を全部倒さないとクリア出来ないステージがあるけど、最後の一匹を見つけるのが意外と手こずったなぁっていうのを思い出しながら俺は少しでも魔力の反応がある敵を一人残らず、ファントムソードで切り落とし、切り裂き、動かないようにした。


さて、タイムスピードで時間を止めている間に全ての敵を塵と肉塊にしてやったぜ。俺は城の前に浮遊して、返り血まみれになった俺の姿が魔王ヘルデウスに見えるようにしながら、時間停止を解除することにした。


「タイムスピード、解除……」


魔王にとっては瞬きしている間の出来事だったであろう。

100万体のゾンビの軍団の雄叫びが一瞬にして静寂になり、見下ろせばそこにいたはずの自らの軍団が塵や肉塊と化している。目の前には軍団の返り血を浴びた俺、見せつけてやるぜ、俺がこいつらを全員倒したと。


俺は100万体の軍団を、1秒で全員倒した。

しかも魔法使ってばっかりだから全然疲れてないぜ、あと何億体は倒せそうだな


「……ば、バカな……何が起きている。一体何を!!?貴様一体なにをしたんだあああ!!?」


大陸を支配する魔王ってんでこの程度何とも思わないのかなと思っていたが、思ったより動揺してた。やっぱレベル999ってこんなに強いんだなーって、あらためて実感したよ。魔王も余裕だな。ヘルデウスはわなわなと体を震わせながら後ずさっていた


「俺が怖いか……お前が感じている恐怖は、お前が支配している国民が感じているのと同じ恐怖だ。さあ、恐怖を、味わいやがれ……!」


腕を組んで俺はセブンスセンスで眼をトカゲのように鋭く光らせながら、翼を大きく広げさせて奴に俺の力を誇示するように見せつける。魔王は震えながらも気丈に振る舞い


「わ、私はぁ……魔王だ!不滅の王だぞ!」

「知ったことか!早く死人を蘇らせる魔法を解除して、国民をテメェの支配から解放しやがれ!!」

「断固拒否する!私は、不滅なのだああああああ!!」

「そうか、じゃあ死ね」


俺は翼を白く輝かせ、そこから万物を貫通する(と魔術書に書かれていた)レーザーを発射させ、魔王の城を下から次々にレーザーで崩壊させていく。城の最上階にいたヘルデウスは崩れ落ちる城と共に落ちていく


「ぐおぉおおおおおおおお!!」


ただやはり不老不死というだけあってしぶとい、魔王の城は土煙と瓦礫に覆われてしまったが、セブンスセンスで反応を見ると奴の生命反応がまだ残っているので。俺はタイムスピードを使って高速移動して、瓦礫の上に倒れている魔王の目の前へと移動した。倒れた魔王は俺を見上げて、もはや恐怖を超えた感情を抱いた複雑な表情を浮かべている


「き、貴様はもしや……神、か……」

「そんな大層なもんじゃねぇ。お前の悪事を許せなかった、ただの男だ」

「わ、私はまだ死にたくな……」

「うるせぇんだよ、はやく死ね」


俺は奴の胸に力強く魔力で強化させた手を突っ込んで、手で肉を貫き、奴の胸から生きたまま心臓を抉り出した


「ぐがぁ……!かはッ……」


さすがに心臓を抉り出されると不老不死の男の致命傷になったようだ。ヘルデウスは白目を剥きながら絶命し、それと同時に自分の魔力で何とか延命していた若さも絶たれたようだ。不自然に若かった肌がみるみる1000年の年相応にあっという間にしわくちゃになり、わずか数秒でミイラのような見るも無惨な姿になってしまった。俺は握りしめていたヘルデウスの心臓を握力で握りつぶした


「次はセミにでも転生して、短い寿命も楽しめるようになりやがれ……」

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