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四章 悦楽-4

そのあと、空賊の空中船は蒸気王国スチーマの都市に着陸したので俺らはそこで降りることにした。

アナーシアは空賊の船に備え付けられていた梯子を下ろしてくれて、俺らが降りれるようにしてくれた


「じゃ兄さん!何か珍しい物見つけたらアタシに言ってくれよ。アタシ達も褒美は出すからさ」

「おう分かった。ほら、ティラも挨拶して」

「あ、ぁ、あ……ありがとうございます」


何だか今日はティラはやたら人見知りしているな。ぎこちない挨拶にもアナーシアは笑顔で応え


「どしたのお嬢ちゃん。アタシ達みたいな空賊が怖いのか?バァ!!」

「ひっ」


アナーシアが両手を広げてティラに向かって大声を出せて驚かせると、ティラはビクッ、と肩を跳ねさせた。アナーシアは歯を見せながら笑って「ごめんごめん、可愛い嬢ちゃんだね」と呟き


「この街は、時々マフィアがうろついてるから。それだけは気をつけていってね」

「お、マフィアってことは悪い奴か?分かった!」


マフィアか、じゃ次にボコしてやるのはマフィアにしようかな。梯子を降りて空賊に手を振った後、俺らは船から離れ街の路地を歩く


「なあティラ、さっきやたら人見知りしてたけど。空賊が怖かったのか?」

「野蛮な人は、苦手です。空賊も、危険な事を平気で行う山賊のようなものではないですか……?」

「あーなるほど……たしかに職業の名前は似てるけど」


どうもティラは山賊に襲われた経験があるから、似たような響きの空賊も怖がってたみたいだ。たしかに野蛮そうな船員もいたが船長は何となく俺には良い人そうに見えた


「別に職業が危険だからといって悪い人とは限らないよ。でも何となく雰囲気とかそういうのが怖かったんかな」

「……トウヤのような良い人には近づきたいですが、怖い人には近づきたくありません。トウヤみたいに強くなって、全員追い払いたいです」


ティラはそう呟くと歩きながら俺の腕に寄り添ってきた


「あはは、まるで前世の俺みたいだな。俺も周りの人間が怖くて魔法の力で追い払いたいって過去はいつも思ってたよ、今はそれが出来るけど」


特定の人には怖がり小さく体を竦めるティラを見ると今までの自分を思い出す。俺も学生時代は俺は頭も悪くて運動も出来ないもんだから、自他共に認める弱さだったな、今の俺は指先一つで人を殺せるけど。

この世界は元々ゲームだから、ザコ敵という弱者として運命づけられたティラを見ると、弱くてどうしようも無かった自分と重ねてしまう。だから好きなのかもな、彼女の肩に腕を回して抱き寄せながら


「安心しろ、俺がそのうちティラを強くしてやる。でもいまは俺の事を見て、動きを覚えろ。分かったな?」

「はい、トウヤ」

「……ん」


話している間に、俺のセブンスセンスが街で発生した悲鳴を検知した。

ここから大分離れた地点だ、セブンスセンスが悲鳴を上げている人の様子を赤いモヤのような形で視界に表示される。背中の後ろで縛られている手、周りには男の声。彼らがアナーシアの言っていたマフィアとかいう類の奴だろうか


「トウヤ……?」

「俺のセブンスセンスが悲鳴を感じ取った。助けに行こう、ティラ」

「ええ、わかりました」


頷くティラに、俺は今日の朝、魔導書で読んだ新しい呪文を思い出した


「そうだ、今回敵が多そうだからこの呪文をかけておこう。「リパルション」」

「……?」


俺は彼女に手をかざして呪文を唱えるが、この呪文は一見変化が無いように見えて、ティラは疑問の表情を浮かべる


「見た目変わんないけど、体に透明なバリアが張られてる。俺以外の人が触るとバリアが衝撃波を発生させて敵を吹っ飛ばすらしい」

「なるほど……すごいですね」

「よし、行こう」


ティラの体を軽く抱っこするとタイムスピードで時間を停止させ、俺は悲鳴のあった場所へと空を飛んで急行する

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