三章 強さの証-12
「彼らは私と、私のギルドが責任を持って家に帰すわ。あとはまかせて」
救出された民達はイネスが街まで送ると伝えてくれた。雨は次第に止んできてポツポツとした雨の中でイネスは俺に頭を下げて
「世話になったわ、本当に、ありがとう」
「気にするな。姉さんのこと、残念だったな……」
「いいのよ、姉さんも牢屋で反省するかもしれないし」
イネスはあまり気にしていないフリをしたが、ため息が多く視線も泳いでいる。まだ姉が邪教徒の司祭として活躍していたことのショックから立ち直れないようだった、俺もどんな慰めの言葉を伝えるべきか迷ったが。ティラがイネスに歩み寄って
「イネス、マリアンがあなたの事を真面目で誠実だと言ったことを覚えていますか?」
「え?えぇ……」
「お姉さんは、責任と権力に苦しめられてもなお、イネスの事を尊敬し続けていた。お姉さんの愛はずっと変わらなかったんです」
ティラの言葉を聞いてイネスの目は少し潤む。イネスは腕を広げてティラの小さな体を抱きしめ
「ありがとう……あなた魔物だけど、本当にいい子ね。どの人間よりも、優しい子よ」
ティラもまたイネスの背中をぽんぽんと撫でて、少しだけ抱きしめ合う。ようやく離れるとイネスは俺の方を見て
「それで……あなた達はこれからどうするの?」
「ん〜そうだな、どうしよっか。道すがら決める、そうだよなティラ?」
「ええ、私はトウヤと一緒にいられればいいので」
「そう……また、会えるといいわね」
手を振って俺らとイネスは別れた。俺らといえば本当に次行くところを特に決めてなかったので、とりあえず疲れを取りに宿でも行くかと話した。歩いてると町外れに宿があったのでそこで宿泊をすることにした