表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/68

三章 強さの証-8

街の外れにある教会、街を支配しているディーヴェルの連中の拠点となる場所だ。

真夜中なので禍々しく見えるものかと思いきや、何か教会から赤黒い光の柱が雲の上へと向かって伸びている。そのせいで周囲も赤い光に覆われて、さらに邪悪な場所に見える。


「なんだあの赤い光……」

「ディーヴェルの教会は、真夜中になると呪術師による儀式を行なって黒魔術に必要な魔力を集めるのよ。この光はその儀式によるもの」

「なるほどな……」

「逆に言えば、真夜中になるとその儀式のために一般人は立ち入れないようになっているから、あそこにいる人は全員ディーヴェルの悪い奴らってこと。だから騒ぎになっても普通の人を巻き込むことにはならない……私たちの盗賊ギルドのターゲットは悪党だけ、普通の人には決して存在を悟られないようにする」


俺たちは近くの木の裏に隠れながら教会を眺めていた。ただその話を聞いて中にいるのが悪い奴らだけだと分かると、こちらも判断がしやすくて助かる。俺の力を発揮するには好都合だった


「とにかくまずは教会に潜入して……トウヤ?」


俺はコートのポケットに手を突っ込みながら、真っ直ぐに教会に走っていく


「早く助けに行くんだろ?正面から突っ込むぞ!」

「ちょ!トウヤ!?」

「行きましょう、イネス」


前世ではあらゆる事にビクビクしながら生きてきたんだ。でも俺はチート持ってる異世界転生者だぞ、隠れる必要はない。ただ敵を倒すべきという衝動のままに俺は教会のドアを蹴破り、ドアを足で吹っ飛ばして教会の中へと入る


「!!?」

「なんだ!?」

「何事だ!?」


教会の中では、紫のフードを被った男達が教会の中心の地面に赤い魔法陣を広げながら、その周囲に男達が30人以上集まっていた。そしてその魔法陣の中心には、白い羽衣だけを着用されて倒されている女性の姿がある。魔法陣の赤い光が禍々しさを放ち、教会の柱を妖しく映し出している、まさに邪教って感じの雰囲気


「貴様!……我々の儀式を見られたからには生かしてはおけぬ!」

「剣を抜けぇえ!!」


教徒達の何人かはフードの内側から短刀を取り出し、他の教徒は手から光を放ち魔法を発生させる準備をしているようだった。俺はポケットに手を入れながら一つだけ呪文を唱える


「インフィニット・キリングクロウ!!!」


俺の背後には黒い粒子が発生し、その粒子はいくつもの黒いナイフのような尖った形を無数に形作る。無数の黒いナイフのようなそれは、まるでカラスの群れのように教徒達へと飛び交って。奴らの足を次々に刺していく


「が!」

「ぎゃああ!!」


この呪文は敵意を向けた敵を自動検知し、敵を突き刺す自動攻撃魔法だ。黒魔術で発生したカラスのように黒い粒子が太い針の形を成し敵に向かっていく。だが意識によって敵の急所は突かないように魔法を制御し、奴らの足や腕だけを突き刺すようにしている。殺してはいないから大丈夫だ

30人ほどいた教徒共は針に突き刺されて一斉に倒れ、死んではいないものの武器を手放したり魔法を唱える余裕もないまま倒れる。呪文が止まったことにより、教会の地面に広げられた魔法陣は消滅する。俺は魔法陣の中心にいて倒れていた女性に駆け寄って


「人助けは早ければ早いほどいい。イネス、来てくれ!この人は君のお姉さんか?」

「す、すごいわね……」


イネスは必死の表情で女性に駆け寄るが、落ち込んだ表情を浮かべた。


「姉さんじゃない……まだ生きてはいる。救助しましょう」

「そうか……」


俺は足を突き刺され倒れていた敵の一人の胸ぐらを片手で軽々掴んで持ち上げ脅迫する


「おい、イネスの姉はどこだ!」

「し、知らない!だが他の生贄は全員、この教会の地下に閉じ込めている!ディーヴェルに刃向かった奴らは全員生贄として地下に捕らえてる!」

「なんだと?まだ他にも生贄がいるってのか!この腐れ教徒が!」


俺はその男をさらに殴ってやろうかと思ったが、情報を言ってくれたのでひとまずその場で手放した。


「トウヤ……これを見てください」


ティラはしゃがみ込み、教会の床を指差す。最初は教会が暗かったので何だったのかよく見えなかったがそれを見た時、俺は息を呑んだ。床を滴る血だ、先ほどまでの魔法陣を発生させていた儀式と何か関係があるのだろうか。そういえば、俺の力の一つである「セブンスセンス」は確か魔術書で見たところ、血の記憶を見られるという能力があった気がする。俺はその血に近づくと、指でその滴る血に触れる


「セブンスセンス……」


血に刻まれた、かつて生命だった時の記憶が俺の脳裏に流れ込んでくる。

血の主は男だった、街の輸送業で真面目に働く男だ。ある日、寂れた倉庫まで荷物を取りに行こうとしたところ、街の政治に関わっている権力者が手下と共に、一人の怯えた男を囲んでいた。そして手下の一人が剣でその男の頭を切り落としたのだ。彼は権力者が殺人を行なっている現場を見た、彼はすぐにその場から逃げ去ろうとした。だが街の路地裏で、ディーヴェルの魔術師の一人が彼に魔法をかけ、眠らせる。彼はこの教会の地下に閉じ込められた、そして血を清めるためと言われながら、体を鞭で打たれ爪を剥がされ拷問された。そして最後には、この儀式の日に魔法陣の上に倒され、彼の肉体は黒魔術によって全身の血管が爆発するように破裂して、体が粉砕した。彼は死んだ、真面目に生きていた普通の男が、運悪く見てはいけないものを見てしまっただけで。最後はこの教会の魔力になるための生贄として


「……っく!!」

「トウヤ!大丈夫ですか?」

「この血に刻まれた記憶を魔法で見たんだ……なんて、あまりに惨すぎる……!」

「トウヤがそんなに怯えた顔をするのは初めてです……一体何を見たんですか?」

「こいつら、邪魔になった奴らを全員拷問して殺してる!なんて奴らだ……!」

「殺してる……?トウヤ、私の姉さんは!?」

「まだ分からない……だが地下に急ごう。こっちだ!」


俺は先ほど、この血の記憶を見た事で地下室の場所を理解した。俺はあんまり人の気持ちに敏感な方ではないがこれだけは分かる、こいつらを野放しにすべきではない、止めなければ。立ち上がり、俺らは地下室のある教会の奥へと向かう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ