表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/43

第14話 魔法世界デジタル化推進チーム、企画会議する(後編)

 引き続き、ミーティングコーナーからお送りする。

 俺はホワイトボードに、みんなの案を手早くまとめた。


 ・ニッポン縦断温泉紀行:遥

 ・カレー布教動画(臭い付き):マルティナ

 ・男だらけの情熱night(腐):ポーラ

 ・子供見守りサービス(盗撮):淳

 ・海産物流革命:直也


「僕の案に、悪意コメントが!?」

 淳、うるさい。


「……ねえ、ナオヤのアイディア、正統派だとは思うんだけど、なんかこう、面白くないわね。地味じゃない?」

 ……なに!?、こいつ、普段の反撃のつもりか!


「……20パーセントのマージンというのが厳しいかと……現状ツキア皇国では、漁業で魔法を大々的に使用することは禁止されており、人手での作業が中心ですので、利益が少ないのです」

 ……く、漁師の娘の指摘はシビアだな


「……なんか、生臭そうっすね」

 お前のは指摘じゃない!


「……むー」

 なにか、遥が気にしているな。

「どうした? 遥、気になる点があるなら言ってみろ」


「ありがとう、兄さん。手堅い案だと思うんだけど、「部分最適」になってしまわないかな? 直接端末を利用するのは、一部の業者さんだけになるし。最初は利益が出なくてもよいから、普及率を優先して、標準プラットフォームにしちゃうのは、重要だと思う」


「……ハルカに賛成だわ。 魔法の分野でも同じなんだけど、基礎魔法部分の術式・波動方程式の特許を押さえることが重要だわ。これだけ普及した移動魔法、皇国じゃなくて、西の大国に魔導特許を取られたから、ウチは年間数十億イーエンもの使用料を払っているのよ。 中央国際魔導管理局(CMA)特許の認定審査では、そのあたりも考慮されるわ」


 ふむ、ふたりの言う事にも一理ある……某共和国や某合衆国が、ツキア皇国以外の国と組んでいるわけだしな。先に基礎技術を押さえられてしまうと、やっかいだ。


「手堅い案もやりつつ、派手な案もやればいいんじゃないっすか?」

「私の実家、皇国漁業協同組合の理事をやっていますので、ある程度提案をいただければ、仔細はお任せください」


 なるほど、悪くない。ポーラ家の協力を得られるなら、運用の労力も、そこまでかからないだろう。


「……次に、お前たちの案へのコメントだが」

 遠慮なく行くぞ、覚悟しろよ。


「まず遥、それはお前が行きたいだけじゃないのか? いや、遥のレポートなら再生数は稼げると思うが」

「あのね、再生が落ちてきたら、わたしが水着になるの」


 ガタッ!


「うおおお! それはいいっすね!」

 興奮して、椅子から立ち上がる淳。

「駄目だ!! 淳のような変態がモニターの前でハァハァするんだぞ!? お兄さん許可できません!」

「……ぶー」

「……ぶー!」

 ぷく―、とむくれる遥はかわいいが、最近の子供はネットの怖さを知らん。ロリコンは怖いんだぞ。


「次にマルティナ、カレーの匂いがする携帯端末とか、なにかの嫌がらせか?」

「わたしは、カレーを普及させ、ココ〇チ皇国支部、500店舗のオーナーになるの!」

「……やけに壮大な野望だが、他でやってくれ」

「……ぶーぶーぶー」

 マルティナが抗議しているが、カレー臭がする端末など、俺は嫌だ。


「そしてポーラ、お前の案は、要・年齢制限だ。ヘタすれば捕まるぞ? というか女性向けだけなのか?」

「あら、御心配には及びません。上流階級の奥様方を押さえれば、皇国法典など、どうとでもなります。そのあとじっくり男性向けも……」

 にっこりと優雅な笑みを浮かべているが、目が笑っていない。……第一印象撤回。怖い女だ。


「最後に淳、お前のはただの犯罪だ」

「なんでっすか!? 僕は学校を守りたい!」

「いつぞやの、ロリコン教師のような言い訳をするな!」

 俺はバン! とホワイトボードを叩く。

 淳の案は絶対に却下だ。こいつのことだ、どこかに抜け穴(バックドア)を作り、データをこっそり横領するに違いない。


「ふう、まったくお前らの案も、たいがいではないか。しかも、配信系は、現状厳しくないか?」

 そうなのだ。改良案は考えているが、現時点では、端末への動画配信は、(インフラ部分の)性能的に厳しい。


 考え込む4人。もう少し、現状に合った案があればいいのだが……


「……兄さん、対戦ゲームを配布するのはどうかな?大規模MMOとか、FPSじゃなくて、4人対戦くらい。それなら性能的にも大丈夫だと思う」

「アイテムガチャとか、アバター衣装などで、課金要素を準備するの」

 遥が挙手し、追加のアイディアを説明する。


「……フム、現実的で、悪くないかもしれんな。」

「よし。 ひとまず、その方向も検討しよう。あわせて、普及させる方法も考えたい。ポーラ案の、上流階級から押さえるというのは悪くないしな」


 4人が頷いたことを確認すると、ホワイトボードの内容を写真に撮り、俺は撤収の準備を始めた。俺としたことが、予定時間を過ぎてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ