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死神時雨と祓屋探偵 その②



「おい、貴様。なぜ貴様のような妖気の高い鬼がこのような田舎でふらふらしている。」

「さあ。なんででしょうね。」

「貴様、立場がわかっているのか?今お前はつかまっているんだぞ。この紙垂の鎖はそう簡単には切れないからな。」

「あなたたちこそ、このような田舎でなにをしているのですか?」

「質問を質問で返すな!聞いているのはこちらだぞ!」


 すまほ…なる機械は電話がならない設定、まなーもーどにしておいてよかった。まさか妖怪がこのような機械を持っているとは思わないだろう。相手にも気づかれていないみたいだ。

 それにしても、この山に足を踏み入れた瞬間から感じてはいたが、山奥へ行くにつれてどんどん妖気と霊気のまざったものが濃くなっていっている。この感じ、下手をするとあちらに穴が開いてしまうかもしれない。非常にまずい。まだ今の段階で開くことはないだろうがこれも時間の問題だ。大和たちはこれに気づいているだろうか。


 しばらく歩いているとアジトのような開けた場所についた。


「…っこれは…。」


 そこには十メートル近くある大きな壺が。


「呪壺か…。」

「そうだ。お前のような野蛮な鬼がよく知っているな。これは必要の大きさに自在に変化する壺。今や3、4つの町中から集めた霊妖魂でこんなに大きくなりました。というところだ!ハハハ!」


 いくら呪具であろうともここまで大きな封印の壺を見たことはない。通りでこんな空気になるはずだ。浄化されない様々な思念がたまりにたまったこの鈍い空気、まるで野蛮な妖たちが封印された魔界だな。

やつらの目的は一通りわかった。そろそろ…。


 私が動こうとしたその時、


「桔梗さん!!!」


 大和たちの姿が見えた。





「…大和!それに二人も…。」

「これはまたとんでもないね。」

「ほんとに何だいこれぇ?こんなデカい壺を見たのは初めてだよ。」


 GPSで桔梗さんを追ってきたらビンゴだった!しかしどうしたら…!


「フン、協会的にもこいつらはシめていい相手なんだねぇ?じゃあ、遠慮はいらないね。」

「時雨、相手は一応人間だ。後で協会に引き渡せるようにだけしてくれ。つまり…命は奪わないでね。」

「あたり前だよ、アタシは死神なんだからね!生きている人間を勝手に殺すわけないよ!」


 時雨さんはそう言うと駆け出し、大きな黒金棒を振り回す。


「あれ本当に生かす気あるんですか…。」


 桔梗さんも縛られていた紙垂を簡単に破り、刀を振りかざす。


「大和!危ないですから悠治郎さんの側を離れないでください!!」


 と、桔梗さんが言い放った直後、組織の連中が襲いかかって来た。


「その紙に触れてはいけない!大和君!」


 さっき桔梗さんが縛られていた紙垂の連なった鎖のようなものが俺の方に飛んできたが、ぎりぎりで避けることができた。


「あの紙垂の鎖は呪術だ。赤褐色刻印が見えるだろ?人間にも発動するものだ。これで身を守りなさい。」


 そういって悠治郎さんは持ってきていた木刀を貸してくれた。この木刀は刃の部分全体に何やら黒い文字が刻印されている。


「それは霊力のある者が持つと対呪効果を発揮する。霊にも妖怪にも呪いにも効く万能な木刀だ。」

「わかりました!」

「時雨!防御結界を敷く!こっちに近づけさせないでくれ!」


 とにかく俺はこれで飛んでくるものを叩き落としつつ、避け続けた。悠治郎さんはその間、人型のような紙に文字を書き始め、地面に円を描くように地面に敷いた。

 時雨さんは奴らを俺たちに近づけさせないように少し離れた場所で守ってくれている。その隙に桔梗さんは、壺を守っているやつらのところへ攻め入る。


「あぁもう!どれだけ湧いてくるんだいこいつら!全くデカい組織だね!」

「よしできたぞ!桔梗さん!やってくれ!」


 悠治郎さんはそう声を張ると、俺の腕をがしっと掴み、その円の中に連れ込む。


「はい。ではっ!」


 桔梗さんが思い切り刀を振るうと


 なんと壺を押し切った!


 バリィン!と辺り一帯に大きな音が響き渡ったと思うと次の瞬間、ものすごく重たい空気のようなものが襲い掛かった。中に閉じ込められた霊妖魂が一斉に解き放たれたのだ。周りの連中はそれを直接浴びて次々と倒れていった。悠治郎さんはこの為に結界を作ってくれていたみたいだ。


「大丈夫かい?大和君。」

「はい。おかげさまで…。」

「ありゃ~、こんなに大きな計画企てといて、誰一人と耐えられなかったみたいだねぇ、アホども。」

「あの人たちは大丈夫なのか?」

「はい。体が霊魂に中てられて気絶しているだけです。しかし、このままでは危なかったです。この段階で気づけて良かったと思います。ここにずっといれば、この人たちすら危うかった。生半可な知識を有している者こそこういう危険な行為に出ますから、気を付けて監視しなければいけませんよ、時雨。」


 桔梗さんが、やれやれと言わんばかりの表情でこちらに歩いてくる。


「はいはい、わかりましたよ。桔梗様。」



 こうして霊妖魂失踪事件?は、解決した。

 悠治郎さんがあらかじめ祓屋協会に通報していてくれたおかげで霊能力者集団…いや、ギャングたちが目を覚ます前に速やかに引き渡すことができた。

 あの壺を割った時、妖は善悪問わずすぐに逃げ出したらしいが、霊魂はそのまま冥府へ行ったものもいたらしい。それはそれでよかった。そして今回、協会には悠治郎さんが発見したという形で報告をした。表向きには式神である桔梗さんや時雨さんが目立って活躍しすぎると少し不自然だからだそうだ。




「東風名悠治郎。今回はお手柄であった。」


 夕暮れ、協会から来た調査員らの調査も終わろうとしていたところ、一人の女性が悠治郎さんに声をかけた。


「えっと、確か君は、協会委員会の…。」


「御蔵みくりだ。」


 委員会、ということは結構偉い人なのだろうか。彼女はまだ若そうに見える。少なくとも悠治郎さんよりもずっと若いだろう。


「そうそう、御蔵さんだ。わざわざ来てくれたんだね。ありがとう。」

「今回のことは放置していたら危なかった。あなたの手柄であったことも含めて報告しておく。」


 彼女はまた独特の雰囲気をもった人だな…。真面目なんだろうけど、口調とか態度からしてプライドが高そうだし、堅物っぽい。そして何といっても強そうだ。切り揃えられた前髪と黒髪の高いポニーテールがその雰囲気を醸し出している。


「ところで…。お前たちは?」


 お前たち、つまり俺たちのことだ。


「あぁ、この子たちはね…。」


 悠治郎さんは何とか桔梗さんのことをごまかしてくれて、今回も手伝いという形で俺たちが来ていたことにしてくれた。だが…


「こんな駆け出しの霊媒師が式神…?それもこの感じ…、だいぶ強力な妖力を感じるが。」

「…。」


 やばい、やばいだろ。さっそく不自然に思われている。

 桔梗さんは人の姿ではあるが、妖気で強い妖怪ということはバレバレみたいだ。


「ええと、その、少し前に亡くなった父からそのまま契約を受け継いだ形で!俺も最近この世界のころを知ったばかりでこの子に頼ってばかりなんです!」

「せっかく縛りが解けたのに式神として残ったのか…?まぁいい。式神の契約内容というのは術師によって千差万別だからな。確か過去には体を…」


 体を…?


「み、御蔵さん!わかったならもういいかな!この子たちもう帰してあげないと。家がちょっと遠くてね。」

「ん、そうか。では協会が送ろう。確か三鈴町の稗田神社と言ったな。部下が車で送らせる。」


何だったんだ?まあいっか。送ってもらえるみたいだし。


「あ、ありがとうございます!」

「では私もこれで。車は山を下りたところに止めさせている。また何かあれば連絡をくれ。では。」


 御蔵さんはそう言うと、静かに去って行った。


「ありがとうね~。…はぁ、行ったみたいだね。ちょっとヒヤッとしたけど。あはは…。」

「そ、そうですね…。」

「彼女は協会委員会のメンバーで、名家のお嬢さんだよ。年はたしか22歳?とかそれくらいだったような…。でも僕なんかよりずっと才能があって強いよ、だけど彼女の家系には死神はいないから、注意するんだよ。」


 そうだ。死神はあくまでも、こちらが冥府に協力しているだけで普通、術師個人の強さには全く関係のない話だ。俺は成り行きで修行させてもらっているけど。


「なるほど。わかりました。」

「じゃあ、僕たちも暗くならないうちに帰ろうか。大和くん。また何かあったら連絡しておいでね。」

「はい!ありがとうございます!」

「では、ここで失礼します。悠治郎殿。時雨のこと、引き続きよろしくお願いいたします。」

「あぁもう桔梗様、大丈夫だよ今後はきっちりするからさぁ。」


 この鬼本当に大丈夫なのだろうか…。


「あはは、はいはい。僕がいる間は任せておいて。じゃあね。」

「ありがとうございました!」



 今回は色々あったけどいい経験だったかもしれない。悠治郎さんという他の死神の協力者とも知り合えたし、今後何かあっても心強いな。

そういえばさっきの木刀、結局貰ってしまった…。

俺も強くなくては…!





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