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まひるの太陽 ~時間旅行・紡ぎあう時間の中で~  作者: 井上まどか
第0章.Introduction ~時間旅行の始まり~
5/8

内気な中学時代

これは携帯もパソコンもない昭和時代の話です。

まずは、中学時代から。

挿絵(By みてみん)


中学生の時。


当時のまひるは、休み時間は仲の良い友達と一緒に話したり楽しく過ごしていたが、読書や絵を描く事が大好きで、クラスでもあまり目立たない大人しい女の子だった。


中学1年の時。

小学校の時に新聞委員に入っていた事と、尊敬していた山川先生の影響で、新聞部に入る事にした。そこで、学級新聞や校内新聞を作っていたのだ。


今のように便利なコピー機がない時代。

ましてやパソコンもない時代だったため、手間はかかった。だけど、手作り感満載の新聞は、1枚1枚わら半紙に印刷されていく過程を経て完成し、皆に配る時はとても嬉しくてたまらなかった。


大人しくて目立たないはずのまひるだったが、なぜか同級生の正樹の目には止まったようだ。

彼はまひるの事をよくからかっていた。


正樹は背の高さを活かしてバスケ部で活躍していた同級生。そのうえ、なかなかのイケメンで、お金持ちの家庭に育ったため、女子生徒からモテていた。


そんな人気者の彼なのだが、なぜかまひるの事をからかってばかり。


すれ違いざまにスカートをめくったり、「おっと~!ワリイ、手が滑ったぁ~」等と笑いながら胸を触ってきたり。


もちろん、まひるは嫌がったが、正樹は気にする事なく、自分がやりたいようにまひるに手を出してきた。


(他の女子にはそんな事しないのに、どうして私にだけするんだろう?)


そのせいもあって、まひるにとって正樹は危険人物で、苦手な存在になっていた。


なのに、周りは彼がそんな事をしているなんて全く知らない。まひるが告げ口をしなかったせいもあるが、正樹の人気は相変わらずだった。


だけど、正樹はどんなに可愛い女子生徒に告白されても断り続け、誰の告白も受け入れようとしなかった。



中学2年になるとクラス替えがあり、正樹とは違うクラスになった。


(これでもうあんな事されなくて済む…)


まひるは少しホッとした。


5月初めに、放送部の顧問の上地先生から「放送部に入らないか?」と勧誘された。


誘われたのは嬉しかったが、(私に出来るのかな…)という不安が大きかったし、大好きな新聞部を辞めたくなかったので、かなり悩んだ。


「悩んでいる時間はもったいないよ。悩んでいるんなら、一度みんなの話を聞きにおいでよ」と、上地先生から提案された。


放送部の先輩や仲間達から聞く体験談や音楽の話はとても楽しくて、タメになった。好きなテレビ番組やラジオ番組、歌手や好きなタレントの話なんかも出てきて、みんなの話を聞いているだけで何だかわくわくしている自分がいた。


「まひるちゃん、良かったら一緒にやろう。みんな初めての時はドキドキするけど、そのドキドキもまた楽しいよ」


「きっとやってみたら、またやりたいって思うから。やってみてどうしても無理だと思ったら、その時考えればいいよ」


そんな素敵な先輩の後押しも手伝って、まひるも(いつか自分もマイクを通してみんなに何かを伝えたり、昼休みの校内放送で好きな音楽をみんなにも聞いてもらいたいな)と思うようになった。


だけど、新聞部は続けたい。

何とかならないかと悩んだのも束の間。


山川先生の取り計らいのおかげで、まひるは新聞部の活動がない日の火、水のみの活動となり、水曜日のお昼の放送のアシスタントを務める事になったのだ。


これなら、新聞部も続けながら放送部でも活動できる。まひるは喜んで入部を決めた。


昼休みの校内放送で水曜日のアシスタントを受け持つようになると、ますます音楽にも興味が出てきて、人気のあるラジオ番組だけでなく、FMやFEN音楽等も色々聴くようになっていった。


新聞部と放送部には共通点もあった。


ラジオ番組を聴きながら、今週のヒット曲のランキングをノートにまとめたり、ラジオで聴いた話題について自分の感想を書いてみたり。父が読み終わった新聞紙も、時事ネタ等をスクラップしたりして部活に役立てていた。


そんな部活を通して、だんだんと人と接する事に抵抗はなくなってきたが、だからと言って、すぐに積極的な性格になれる訳ではない。


話術のある先輩のおかげで、水曜日の昼放送では、マイクの前でもしっかり話せるようになったのだが、相変わらず人と接する時は緊張してうまく話す事は出来なかった。特に男子生徒に話しかけられると、その緊張はMAXになった。


もしかしたら、それは性的嫌がらせをしていた正樹のせいもあるかもしれない…と、まひるは感じていた。


だが、その頃はどうしたらこの異常なドキドキが治るのか知るよしもなく、ただいつかは普通に話せるようになりたいな…とは思っていた。


今じゃなくてもいいから

いつかは…と。



中学3年になっても、まひるは新聞部と放送部の部活を続けていた。


特に、放送部では水曜日のメインを担当する事になり、少しずつだが男子生徒にも慣れてきた。


そんな

ある秋の日の、日曜日の朝の事。


「まひる、こう(弟)。大事な話があるの。こっちに来て座って…」と、母から呼ばれた。

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