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4.美少女、たたず

「旦那様がご帰宅後、午後より応接間にご家族皆様お集まり頂き、話し合いの場を持たれるとの事。ご承知置き下さいませ」


僕はスープを口に運びながら、メイドのスイカさん……間違えた、

ユーニスさんの説明を聞いていた。

それにしてもデカい。


このスープは、小腹がすいたので何か食べるものを、と僕がユーニスさんにお願いしたもので、

数日寝続けていた人間に固形物は不味いだろうという判断の元、用意してくれたものだ。

あの爆乳、どんな感触なんだろう。


「それって、僕の事について、ですよね」


アニさんから、僕の状態が当初の予定と変わって意見の相違が出ているので、と聞いているから、

その話し合いの場で摺り合わせなり意思統一なりするのだろう。

頼んだらおっぱい触らせてもらえるかな?


「ぼ……あ、いえ。そうです。お嬢様の事について、ですね」


なんか妙な驚きを見せたがユーニスさんは頷いた。

それにしても『お嬢様』って呼ばれるのはものすごく違和感があって、体が痒くなってきちゃうね。

それよかあの胸に真正面から顔を突っ込んでみたい。


「あのぅ、お嬢様?」


おっぱい。


「……アルナータ様?」


「あ、ごめんなさい。何でしょうか?」


デカウォーターメロンを注視しすぎて意識が飛んでいたようだ。

名前を呼ばれてようやく僕は顔を上げてユーニスさんを見る。

こげ茶色の髪をミディアムに揃えて、ややたれ目気味の目に黒の瞳。

ふっくらとした唇に内心ドキドキしたのはここだけの秘密だ。

ちょっと困り顔のユーニスさんは可愛らしくて、ほんのりエッチくさかった。

とっても良い。


僕は、ユーニスさんを僕付きのメイドにしてくれたアニさん始めチェスタロッド家の皆さんに、惜しみないグッジョブを送りたいと思う。


「お食事が終わりましたら食器を下げますので、仰って下さい。その後、お着替えに移らせて頂きます」


「あ、はい。じゃあお願いします」


スープを最後まで掬い空になった食器をユーニスさんに渡そうとしたのだが、

少し距離があったのか、相手に渡す前に手から離れてしまった。


落ちそうになった食器を受け止めようと屈んだユーニスさんに、食器を落とすまいと手を伸ばした拍子にバランスを崩した僕が突っ込んでいく形になった。

しまった!


だが一向に床に激突した衝撃が来ない。ついでに食器の割れる音もしない。

そればかりか、顔の周りにクッションのような柔らかいものが触れている感覚がある。


フォオオオオォオオオオオォオォォォォォオォォオォォオォオオォオォ!!!!!


それがなんであるかを認識した時、僕は心の中で絶叫した。


服の上からでも十分に分かる柔らかさ!

心地よき人肌並みの温かさ!!

女子特有の芳しきかほり!!!

まさに至高!!!!!


マグマのように滾った熱の奔流が体内を駆け巡り、そして体の一点に集中する!

天をも貫かんとする灼熱の剛槍を解き放つカウントダウンが始まる!!!


…………はずだったんだけど、中々物理的な変化が起きない。

ていうか感覚が無い。



あ。



「お、お嬢様? お怪我はありませんか?」


そうだった。今の僕は女の子だった。

初めてのおっぱい体験に理性が吹き飛びそうになったが、現在の体では男性的な爆発が出来ない事実に直面し、僕の体内のマグマは冷めきってしまった。


「もが……」


顔面が埋もれているので声を出そうにも出せない。

顔を離そうと考えたが、

たぶん今、僕の顔は美少女がやっちゃいけない類の表情になっていると思われる。種別は恍惚系。

心を落ち着けねばならない。

僕は深呼吸をする為、鼻から勢いよく周囲の空気を吸い込んだ。


瞬間、

体温の上昇によってさらに芳香を強くした女性の体臭が鼻腔から脳髄を直撃し、


フォオオオオオオオオォォォォォオォォォオォオオォオォオォォォォォ!!!!!


僕はまたしても心の中で絶叫した。







「大変な失礼を致しまして誠に申し訳御座いません」


僕は土下座をした。床の上で。

この国に土下座があるかは分からないので、土下座の意味が通じるかどうか不明だが、せざるを得ない。


「お嬢様にお怪我が無くて何よりです。あの、もう十分謝罪は受け取りましたから、顔を上げて下さいませんか」


このお方は天使か!

ちなみに僕が落としそうになった食器は、ユーニスさんがしっかりとキャッチしており、割らずに済んだ。


「本当にすみませんでした」


僕は頭を掻きながら立ち上がる。ユーニスさんは少し困ったような表情で僕を見つめていた。

そして、ちょっと考えるそぶりを見せ、おずおずと言葉を切り出した。


「あの、お嬢様。 不躾な質問で申し訳ないのですが」


「はい、何でしょうか」


言葉を選んでいるのだろう、ユーニスさんは顎に手を当てて少し止まる。

僕はおなかの前で指を組んで、緊張しながら次の言葉を待った。


「貴女は、アルナータ・チェスタロッド様ご本人で間違いないですか?」


「そう思いますよね、普通」


まぁ、当然だよねぇ。

ユーニスさんの知るアルナータ・チェスタロッドという人物は、幽騎士マリオのアニさんが中に入ってた時のものだろうし。

僕の心の中でのアニさんの言動と、今の僕を比べてみれば、いくら鈍い僕でもその違いはハッキリわかる。


でもどう答えたらいいのだろうか。

アニさんの雰囲気からして、幽騎士マリオって国家機密レベルでもおかしくないし。

近しい人ならある程度は知っていそうだけれども、メイドさんの場合はどうなんだろう?


「えーと、一応アルナータ・チェスタロッド本人です。ただ……」


「ただ?」


「何日か前の、眠る前の彼女とは別人というか、別人格というか……説明がしづらいですけれども」


「……そうですか」


ユーニスさんはそう呟くと少し落胆したように目を伏せた。

気まずい沈黙が流れる。

困った、こういう時はどう言えばいいんだろうか……。


「あ、あの、ユーニスさん。着替えの準備をお願い出来ますか?そろそろ……」


「あ、はい! そうですね、畏まりました」


ユーニスさんは、はっとした表情で顔を上げ小走りに部屋のクローゼットへと向かった。






「うわぁ……」


姿見に映っている自分を見て、僕は思わず声を上げてしまった。


ユーニスさんによって衣服が整えられた僕の姿は、

呆けたように口を開けたちょっと残念な表情である以外は非の打ちどころのない、

どこかの国のお姫様か、貴族のお嬢様、もしくは財閥の令嬢といった、

ものすごい高級感あふれる女の子のそれだった。


あ、侯爵令嬢だっけ。今の僕。


ただ、今着せてもらった服。中世ヨーロッパのようなコルセットギチギチでスカート部分が広がったようなもの(当然、胸元は開いていない)ではなく、

コートっぽい裾が長めの上着にズボンと、運動する事を想定したような取り回しやすい感じを受けるものだ。


「あの、ユーニスさん。この服はどういった用途の時に着るものなんですか?」


服についた埃をブラシで払っているユーニスさんに訊いてみると、


「こちらはお屋敷内での普段着です。チェスタロッド家は武門の家ですので不測の事態にも武器を取って対応できるよう、それに適した服装になっております」


そう丁寧に教えてくれた。

へー、なるほどねぇ。スカートじゃなくて残念だったが、それはまた別の機会に試してみよう。


あ、っと気付く。

本来ならば知っていて当然の事を訊いたのに、ユーニスさんは澱みなくちゃんと答えてくれたのだ。

今の僕の事を彼女なりに考えて対応した。内心は複雑な気持ちになっているだろうが、それを表に出すことなく僕に合わせてくれている。

その優しさに僕は胸が熱くなった。


もう好感度爆上げだよ!

ゲージMAX振り切って破壊済だよ!!!

嫁にするしかねぇ!!!!!


「どうかなさいましたか?」


どうかなってました、ごめんなさい。


「いえ、教えてもらってありがとうございます」


何とか平静を装い返事をする。


「ふふっ、私の方も戸惑いはありますがなるべくお応えできるよう努めますので、あまり気負わずに何でも訊いて下さいませ」


やべぇ、何この女神。

未だかつてこれ程に素晴らしい女性に接したことはあっただろうか?!いやない!(反語)

うん、自分の人生経験の足りなさを棚に上げて言う事でもないだろうけど衝撃なのは事実だ。


ずっと傍にいて欲しい、放したくない。

嫁にしたい。でもいきなり『ケッコンして下さい』じゃあドン引きだよねぇ。

ならお友達からお願いします? いやいや逆に離れていってどうするよ。

アニさんの話だと、僕の体が5歳の時からの付き合いだからむしろ家族? 兄弟?……姉妹!


「あの、ユーニスさん」


「はい、何でしょうか?」


優しい微笑みで僕の言葉を待つユーニスさん。可愛い。

僕は意を決して『お願い』を口に出した。


「ぼ、僕のお姉ちゃんになっていただけませんか?!」




「はい?」



彼女は小首を傾げ微笑んだまま、固まっていた。


最後の無意味な空白部分を削除しました。ご了承下さい。

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