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37.【小話】ユーニスとの一時

タイトルに【】で挟まれた言葉があった場合、本編にはあまり大きく関係が無いお話にしようと考えています。

今回は個人的には甘いお話です。ご了承下さい。

「ユーニス」


「あら、どうしました? 妹ちゃん」


うららかな日差しが差し込む午後の一時。

僕はユーニスを呼び止め、近くの空き部屋へといざなう。


「ユーニスにはいつも感謝しているんだ」


「きゅ、急にどうしたん、です? あの、妹ちゃん?」


僕はユーニスの両肩に手を置き、彼女の目を真っ直ぐに見つめてささやく。

戸惑いを見せるものの、ユーニスの頬には朱が差し何かを期待しているような素振りが端から感じられる。


「陰に日向に僕を支えてくれて本当に感謝している。ありがとう、ユーニス」


「い、妹ちゃ……」


言葉を少し熱っぽく、湿り気を含めて。徐々に顔を近づけながら僕は、


「ん」


ユーニスの唇に柔らかくキスをする。


ゆっくり、ゆっくり唇を離しながらしかし視線はユーニスを捕らえたまま離さない。

熱に浮かされたように顔を真っ赤に染めて、瞳はとろんと(とろ)けたように虚ろなユーニスがとても(なま)めかしい


「……あ……」


ユーニスの口から吐息が漏れる。熱を持ち紅くふっくらとした柔らかい唇が僕の劣情を煽る。


「今は二人きりだよ、お姉ちゃん(・・・・・)。イケないコト、しちゃおうか」


「……ん」


こくりと頷き、ユーニスがせがむように顔を近づけてくる。僕はそれに応えて再びキスをする。


ちゅっ、と二人の唇が鳴った。


そのまま僕はユーニスの両肩から手を滑らせ、彼女を抱きしめるように背後に腕を回す。

二人の身体が重なり、ユーニスの豊満な胸が僕の胸にされて柔らかくゆがむ。


ユーニスが求めるようにその腕を僕の背中に回す。

僕もユーニスの両脚の間に自分の脚を差し込んでいく。


瞬間、ユーニスの身体がわずかに跳ね僕の脚が熱と湿り気を覚える。そして……。




「うへへへへ」


「何いきなり気持ち悪い笑い声あげているんですか? 妹ちゃん」


ユーニスの辛辣な一言が僕を容赦なく叩く。


うららかな日差しが差し込む午後の一時。僕はキョロキョロと見回し、いま自分がいる場所を確認する。

心地よい暖かさに、どうも僕はうたたねをしていたようだ。


ちっ、夢だったか。


「よだれ、垂れてますよ?」


ユーニスがちょいちょいと口の部分を指さす。その仕草にあわてて僕は自分の口元を手の甲で拭う。


何故あんな夢を見たのか。

理由は簡単だ。今ここには僕とユーニスの二人しかいないからだ。


ルヴィアはアニエスタの手伝いで共に買い出しに出かけている。ミルフィエラお母様は本館の方へ用事があって出ている。

ジャスティナは実家のジュスティース侯爵家から呼び出しがあって一両日は戻らない。


ユーニスと二人きりで過ごすのは、短い時間ではあるが、すごく久しぶりの事なのだ。


頭のてっぺんから足の先まで、じ~っと機械でスキャンする様にユーニスをゆっくり眺めていく。


サラっとしたこげ茶色の髪、愛らしい黒の瞳、なだらかな稜線から張り出した豊かなおっぱい。

意外と筋肉が付いている腕に、近寄って見ると細かい傷の跡がある働き者の手。

おっぱいの大きさに負けないくらいしっかりと厚みのあるお尻に、それを支える僕好みの少し太めの太もも。


大好きな僕のお姉ちゃん。


ここだけの話だが、僕がユーニスの体のパーツの中で一番好きなのは実は、


『唇』


だったりする。

ほんのりピンク色でふっくらとした唇は、今見てもドキドキするくらいだ。


「妹ちゃん? 何ジロジロ見ているんですか?」


僕の視線に気が付いたユーニスが眉をひそめる。


「お姉ちゃんと二人きりだから、ちょっとえっちな事考えてた」


「……はぁ。もしかしてまたおっぱいが欲しいんですか?」


僕の返答にユーニスは、やれやれといった風に溜息をついて膝に手を置き前屈みになり、少し呆れた表情で僕に顔を近づける。

その動作により自然とおっぱいが寄せられ、メイド服の胸の部分に縦のしわが出来た。

手を伸ばせばつかめる程に近いふたつのたわわな実りが僕を誘惑する。


だがしかし、今の僕の関心はそこにはなかったのだ。


「ざんねん。違うよ」

「あら」


予想と違った答えにユーニスは目を丸くする。


僕は人差し指を自分の唇に這わせ舌で指に唾液を付けると、その指を、ユーニスの唇につけ、ふっくらとした感触を楽しむ為やさしくゆっくりと這わせる。


「お姉ちゃんと、キスしたいと思ってたの」

「ーーーー?!?!?!」


一瞬で顔を真っ赤に染め上げ何事かを喚きながら部屋中をバタバタと走り回るユーニス。

彼女にしては珍しいオーバーアクションだ。その様子に少し、熱が冷める。


そう言えば、最近はおっぱい以外のところにユーニスを求めるようになってるな、とふと思った。

いや、相変わらずおっぱいは大好きだよ? うん、大好き。ただ、おっぱい「だけ」が大好き、ではなくなったんだ。


「いいい妹ちゃん! き、キスしましょうキスっ!」

「ごめん、お姉ちゃんがあんまり騒ぐもんだから冷めちゃった」


「はうっ」


ガクッとうなだれ、呆然とするユーニス。

そのコミカルな動きに自然と笑いが込み上げてくる。


「お姉ちゃんも随分と愉快な行動するようになったよねぇ」


「だ、誰のせいだと思っているんですか妹ちゃん」


「ごめんごめん、これで機嫌直してよ」


ちゅっ


ユーニスの柔らかな唇に自分の唇を、軽く、重ねる。


不意を突かれたユーニスは目を見開いて驚いた後、また顔を真っ赤にして俯く。

しばらくそうした後、大きく溜息をつき恨みがましい目で僕を見る。


「……もう。昔はおっぱいおっぱいだけの変態さんだったのに、いつの間にかこんなたらしになるなんて」


「ひどい言われようだぁ」


「事実です」


こほん、と一つ咳払いをし、居住まいを正すユーニス。

彼女の楽しい行動が観れるボーナスタイムは、どうやら終わってしまったようだ。




「ねぇ、ユーニス」


「妹ちゃんのおふざけにはもう付き合いませんよ」


僕の呼び掛けにユーニスは先回りして釘を刺す。だが僕はそのまま言葉を続ける。


「ユーニスはもし僕が何かの理由で侯爵家の人間じゃなくなったら、どうするの?」


ユーニスが一瞬強張ったように見えた。そのまま窓の方へ顔を向けたまま、僕の方へ顔を向けないまま口を開く。


「わたしはお嬢様の護衛としてチェスタロッド侯爵家に雇われました。雇い主は侯爵家です。お嬢様がお嬢様でなくなったら雇用契約が無くなりますので、そのまま解雇になるか、または別の方の側仕えとして再雇用になるか、そのようになるかと思われます」


それは僕が聞きたかった答えではない。ごく当たり前の現実だ。


「ですが」


ユーニスはその言葉を強調した。そして僕の方を向き、僕の目を真っ直ぐに見つめる。


「ですが、わたしはお嬢様の友人として仕えるよう、申し付けられています。ですから、例えお嬢様が侯爵家の人間でなくなったとしても、わたしはお嬢様のお側にお仕えいたします」


だがこれも僕の求める答えではない。義務からくる行動だ。


すると、ユーニスはやにわに僕に近づき、両膝を床につけて目線を僕と同じにして、ぐっと僕を見つめる。

彼女の両手が僕の頬を支えるように添えられ、瞳に熱がこもる。温かい吐息が僕をくすぐった。


ユーニスは一瞬目線を外したが、すぐにまた僕の目を見据える。強い決意の光が瞳の奥に見えた。


「わたし、ユーニス・コロベルは、アルナータ様を愛しております。貴女様がどのような事になったとしても、いつまでも、いかなる時も、お側にいる事を誓います」


そして、


深く重ねられる唇。


…………


やがて別れを惜しむように唇が離される。


「ありがとう、ユーニス。僕も愛してる」


自然と笑みが零れた。そして両手でユーニスを抱き寄せ、僕は彼女の耳元でささやく。



「お姉ちゃん、大好きだよ」


僕はこの日、人生で初めて『大好き』という言葉を使った。


お読み下さりありがとうございました。

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