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27.黒の衝撃

新年おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

ギリギリですが、元日投稿致します。

来た道を辿り、何とか自分の控室に戻る。


「ずいぶん遅かったじゃないか妹くん」


「何か疲れているようですけど、どうしたんですか? 妹ちゃん」


ユーニスとルヴィアが、きょとんとした表情で僕を迎える。


「うん……いや、大したことじゃないよ」


僕は先程の女騎士とその取り巻き達の顛末を二人に話すかどうか考え込んだのち、結局話さない事に決めた。

特に僕に大きな被害があった訳でもないし、話すほどの事でもないと判断したからだ。


「妹くん。片付けは済んでいるから、いつでも出れるよ」


「わかった、それじゃ明日に備えて早めに帰ろっか」


女騎士の試合を見たくもあったが、いつまでも闘技場(ここ)に居たらまた何か面倒事が起こるかもしれないし、とっとと退散しよう。


僕は控室のドアを引き、外へ出た。


ポヨン


弾力がありかつ柔らかく、ほのかに暖かくそして良い匂いがする何かに遮られ、僕は外へ出ることが出来なかった。

何だと思って視線を下へずらすと、黒い何かがある。


よくよく見るとそれは、黒髪に黒い服装で頭のてっぺんが僕の胸あたり程の可愛らしい少女だった。

彼女のおっぱいは僕を受け止めているのに、僕の胸は彼女に触れておらず虚空にさらされている。

胸囲の格差社会がそこにあった。


「ご、ごめんなさい! 人がいると分からずにぶつかっちゃって」


僕は慌てて少女から離れ、頭を下げた。


「ようやく……見つけた」


「あなたは……」


「お前、『黒巫女』……!」


僕以外の三人が、それぞれ反応を示す。


「あ、あれ? もしかして皆さんお知合い?」


少し頬を染めつつも表情は無く僕を見つめる黒髪の少女。厄介な奴が来たって感じで目を見開いているユーニスとルヴィア。

何となく空気が張り詰めていっている気がする。


「ユーニス・コロベル、ルヴィア・マグストラ。あなた方がいるという事はやはりこの方がアルナータ・チェスタロッド様、なのですね」


少女はユーニスとルヴィアに視線を移すと、そう言い放った。その言葉を受けて二人の顔がより険しくなる。


あれ?


ユーニスとルヴィアが居る結果として導き出された僕はともかく、この二人はいま変装中のはずだ。

特にルヴィアは前回の大会に出ているし、肌の色までは変えていないものの念入りに変装している。

二人を知る人間に見られて、そこから僕の存在がバレるのを防ぐためだ。


今一度確認しても、ちゃんと変装している。


う~む、謎だ。

考えても何故バレたのかが分からない。


肌を刺す感覚に気が付いて見回すと、僕が考え込んでいる間に三者の間の空気が一触即発までに高まっていた。

これはまずい。

僕はこの空気感を打破すべく、行動をした。


「立ち話も何ですから、とりあえずこちらで座ってお話しませんか?」



 ◆◆◆◆◆



「私は、アニエスタ・コーデア。ディース侯爵家に連なるコーデア子爵家の娘です。アルナータ様、お久しぶりでございます。お会いしとうございました」


黒髪に深い緑色の瞳。黒髪はこの国では金髪銀髪ほど多くは無いが茶髪よりちょっと少ないかな? くらいで特に珍しい髪色ではない。

目の前に座る少女の髪は、「カラスの濡れ羽色」とも表される艶のある理想の黒髪をしている。

服装は黒を基調としたものだが、ゴシックロリータというよりは、修道服やメイド服のような貴族にしては華美な装飾に乏しいものだ。

本人の趣味なのかな。


ただ、まあ、一番の特徴はそのおっぱいだろう。

さきほど僕の前進を止めたその弾性もさることながら、特筆すべきはその大きさである。


デカい!


純粋なバストサイズではユーニスには及ばずルヴィアと同じくらいだろうが、アニエスタの体の小ささ……僕の胸くらいの身長しかない小ささ、がそのおっぱいを凶悪なまでに強調している。あれか、


これが『ロリ巨乳』というやつかっ!!


一つ断っておくと、僕はロリコンではないし、今目の前にいるアニエスタは一応この国での成人を迎えている女性だ。問題は無い。

そういや、ロリコンのロリって元は人物名だったよな。この国だとこの系統の言葉はどういうものになるのだろうか。


ちなみに、「ロリ巨乳は、ロリに巨乳が付いているのではなく、巨乳にロリ属性が付いている」説を僕は推している。

ロリを、巨乳を際立たせる為の副次的なものとしているので、ロリがメインの嗜好を持つ方々には申し訳ないが、まぁ、そういう考え方もある程度に思っていただけると有難い。

僕は基本的におっきなおっぱいのお姉さんが大好きなのだ。


「あの、アルナータ様?」


「アニエスタさん。今のお嬢様は大きな胸を持つ女性に出会うと、このように深く考え込む癖が出ます。申し訳ありません」


「うん、まあ、3年前のあの事件以前とは全くの別人になっているから、当時のお嬢様を思っているのなら色々覚悟をした方がいい」


「…………」


そういえば、アニエスタの事で一つ聞いておきたい事があったな。

もちろんバストサイズの事ではない。さきほど疑問に思ったことだ。


「アニエスタさん、だっけ。ちょっと聞きたい事があるんだけど」


「あ、アルナータ様。身分の低い私に「さん」付けなどお止め下さい。どうか私の事はアニエスタ、と呼び捨てに」


「あ、うん。じゃあアニエスタ、一つ聞いても良いかな?」


「はい、何なりと」


そう答えるアニエスタは顔を赤らめ、はにかんだ笑顔を僕に向ける。仕草もとっても女の子らしくて可愛い。

直後僕の左右から刺すような視線が飛んできた。お姉ちゃん達、なんで僕にそれを向けるのかな?!


「こ、こほん。アニエスタはさっき、ユーニスとルヴィアの変装を一目で見破ったよね? それはなんで?」


気を取り直し、僕はアニエスタに訊いた。


「その事でしたら、私はその人の体型を見ただけで大体把握することが出来るからです。そして忘れません」


アニエスタは姿勢を正し、真剣な表情になって言葉を続けた。


「私は、小さい頃から人の死に立ち合い、人の亡骸に接しました」


アニエスタの話によると彼女の一族、ディース侯爵家に連なる人々は、独特の価値観に基づいて幼い頃より騎士の教育を行なっているという。

それはディース一族の墓所に安置された遺骨を磨く事。


常に人の死を身近に感じさせ、人の死に敬意を持たせようというものらしいが、

幼い頃から、というのが中々に厳しい。大半は途中で逃げ出すか、既定の日数をこなすとそれ以上はやらなくなるようだ。


そんな中このアニエスタは、既定の日数を終えても墓所へ訪れ遺骨を磨き続けたという。


そうして様々な遺骨を磨いているうちに骨格から体型を推測できるようになり、骨の減り具合で太っている痩せている等の外見のおおよその判断も可能になったとか。

やがて、それを生きている人間にも適用できるようになったらしい。

成長期を終えて、骨格が固まった大人だとほぼ間違える事が無いようだ。凄い能力だな。


そんな観察眼を以って、アニエスタはユーニスとルヴィアの変装を一目で見破ったのだ。


とすると、ここでさらに一つの疑問が浮かんでくる。


「アニエスタは、僕に対してはユーニスとルヴィアを確認してから「やはりこの方は」って言ったよね? それはどうして?」


「私がアルナータ様をお見かけしたのは、ちょうど自分の試合が終わりゲストルームへ移動している時でした」


アニエスタは思案気に顎に手を当て、俯く。


「骨格は私の知るアルナータ様を示すものでしたが、見た目のお姿が変わっていた事もありすぐにお声をかけることが出来なく、失礼を承知で後をつけさせて頂きました」


「それは気付かなかったなぁ」


あのお姉様方? 刺すような視線を何度も向けないで下さいませんか? 尾行を察知しろとか僕には無理ですって。


「筋肉の付き方や体の動かし方が大きく異なっていたのもあります。それに……」


「それに?」


僕が次を促すも、アニエスタは顔を赤らめ俯き、黙り込んでしまう。

あ~、これ。どういう言葉が出て来るかはわからないが、どういう状況かは分かる。

僕にとって嬉しくも厳しい……修羅場へのカウントダウンだ。


「それに、アルナータ様のお顔の表情がとても魅力的で、その、私の知る『人形姫』のアルナータ様とは全く違っていて、その」


ギシッ


僕の両隣の空気が一気に固着する。

目の前からは暖かい空気を感じるのに左右からは凍てつくような冷たさを感じる。

どんな表情をしているのか見たくもあるが、恐怖が先行して首を回せない。


「うん、ありがとうアニエスタ。よく分かったよ。そ、それじゃあ今日のところはこれでおしまいにして、か、帰ろうか」


僕は立ち上がり、アニエスタをどうにかしてこの場から去らせようと促した。


ガタッ


「アルナータ様、どうかどうか私をお側に置いて下さいませ!」


「ぐほっ!」


アニエスタが黒い弾丸の如く僕に抱きついてきた。

着席状態からタックルする様に抱きついた関係で、頭部が僕のおなかを直撃する。

そのまま腕が腰に回され、離れまいとがっちりホールドされる。


そして、そしてだ。


彼女の豊満なおっぱいがちょうど僕の股間の辺りを柔らかく柔らか~く刺激する。



ぷおおおおおおぉぉぉ ぷおおおおおおぉぉぉ


陣触れを告げるホラ貝の音がこだまする。


いくさじゃ! 具足を持てィ!!


野太い(おとこ)の声が上がる。

物々しい甲冑に身を包んだ戦国武将が右手に柄が真っ赤に染まった槍を持ち、馬を駆って原野を爆走していく。


彼の前には無数の足軽たちが槍衾となって待ち構えている。その向こうには真っ黒にそびえる巨大な城。

荒々しい怒声が飛び交う中、城目掛け疾駆する戦国武将!


そのような針の山でわしを止められるものかぁ! 我が皆朱の槍を馳走してくれるわっ!!!


叫びと共に武将の槍が灼熱のマグマの如く赤く赤く輝き、太くそれこそ巨木の丸太の様に太く赤く巨大化するっ!!!


いざゆかんっ!!!



「はぁ、ンっ」


(おとこ)の戦場に似つかわしくない艶のある少女の嬌声が聞こえて、僕の意識が現実へ戻ってくる。


あ、あれ? 僕、戦国時代にタイムスリップしてたんじゃなかったっけ??


周囲を見回すとそこはさっきまでいた部屋の中だ。艶やかな黒髪のアニエスタが僕の腰に抱きついている。

久々に間近で黒髪を見たから、いつもの妄想が日本の戦国チックになっていたようだ。


「あ、アニエスタ?」


僕の声にアニエスタがピクリと反応し、ゆっくり顔を上げる。


顔を赤らめ、息も絶え絶えに涙目で僕を見上げるそのエロチックな情景に心臓の鼓動が跳ね上がった。

一気に体温が上昇し、汗が噴き出す。


「にゃあん?!」


いきなりお尻を鷲掴みにされ僕は思わず声を上げてしまう。


左右を見ると、熱に浮かされ上気し焦点があってない虚ろな瞳で僕のお尻をぐにぐにと揉みしだいているユーニスとルヴィアの姿があった。


獣臭が漂う……。


「妹ちゃん、お姉ちゃん言いましたよね? 他の人のいる場所でえっちなお誘いしちゃダメですよって」


「全く妹くんはいやらしい女の子だ。これはお仕置きが必要だな」


「ちょ、ちょっと待って?! 僕何もしてないよ??」


二人は、フリーになっている僕の両腕をそれぞれ掴むと肩を貸す様に僕の腕を自分の首に回し、尻を掴んだまま一気に担ぎ上げた。

アニエスタを腰にくっつけたままの僕が宙に浮く。


「いやらしい匂いをプンプン撒き散らしておいて、よくそんな事が言えますね。えっちな妹ちゃん?」


「あぁ、これから初勝利を祝って宴を開こうじゃないか。食材の準備は万全みたいだし、なぁ? 妹くん」


瞳が狂気をはらんだ様に赤く輝く。口からは吐息が白く立ち昇る。口角が獲物を捕らえた喜びでつり上がる!!


え、ちょっとまって? もしかしてこれって、例の僕の匂いにやられたってやつ??

なんで、まってまって?! もしかして妄想すると一気に前の濃度に戻っちゃうの?! 


自分以外に正気の者はいないの?!

助けを求める様にアニエスタを見ると、彼女はことさら顔を真っ赤にして言葉を紡いだ。


「あ、あのアルナータ様。不束者ですがご満足頂けるよう頑張りますので、あの、よろしくお願いします」


三方からガッチリ固められ、僕にはもう逃げ場は無かった。



美獣二匹に担ぎ上げられ成すすべも無く、

僕は黒髪の少女を腰からぶら下げたまま光の速さでお持ち帰りをされてしまったのであった。


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