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12.新たなる出会い

今日も今日とて日課を黙々とこなす。


時は日が西に傾き空は徐々に黄色から茜色に変わり始める頃。

僕は示現流の鍛錬を続けていた。


今日も今日とて己の内の滾りを叩きつける。


夕方の鍛錬は、お母様からの危ないスキンシップによって滾った内なるマグマを鎮める為にすっかり費やされている。


やめさせようとも思ったのだが病んでいた状態から超回復した後だけに、

拒否した反動でまた病んでしまわないか、下手したら自害してしまうんじゃないか、

とか考えてしまって言い出せずにいる。


スケベ心が無いと言ったら嘘になる。

でも母親である以上お母様にしたら親子の情でしかないだろうし、こっちが勘違いして突貫して今の関係が壊れるのが怖い。


言葉にも出せず行動にも移せず悶々とするしかない憤りを目の前の立木にひたすらぶつける。


「オオォリャアアァァーーーーーーーーーー!!!」


ガガガッガガガガガッッ


煩悩退散! 煩悩退散!! 煩悩退散!!!




気が付くとすっかり日が暮れていた。

最近は日が落ちるのが早くなっている。


普段だったらユーニスが声を掛けに来るのだが未だに来ない


あ、そうだった。

今日は外せない仕事があるとかで、鍛錬終えたらユーニスを待たずに戻って来いって言われてたっけ。


かいた汗を持参のタオルで拭って、さて、と帰ろうとした時だった。


カサッ


森の方で、草か木の枝か何かが動いた音がした。


ファンタジーな世界ではないので魔物は存在しないが、野生の動物は普通にいる。

この森で見かける大型のものは大体が猪で、他は小動物とか爬虫類とか、まぁ脅威に感じる動物は少ない。


だから僕は、木刀代わりの木の棒を持っている事もあって、あまり用心せずに音のした方へ近づいた。

さっきの音の大きさからして猪ではないはずだ。


もう少し近づく。


目を凝らしてみると、暗がりに光る小さな2つの点が見えた。

しばらく観察して、リスとかそんな感じの小動物であることが分かった。


なぁんだ。


ハプニングとか滅多に起きるわけないよねぇ。

前世でも交通事故とかほとんど会わなかったし。


クルっと向きを変え、離れに戻るべく歩……何、いまピリって


「さっ…」ボグッ


僕は後頭部に鈍い痛みを感じ意識を失った。




 ◆◆◆◆◆




肌寒さを感じ目を覚ますと、そこは見慣れない場所だった。

ランプが灯っていて、ある程度の物の形は分かる。


ここは全面が木の板で覆われている小屋の一室のようだが、床は地肌が剥き出しだ。

窓のようなものは無い。正面に片開きの簡素な木製扉があるのみだ。


起き上がると頭に痛みを感じる。後頭部にはこぶが出来ていた。


此処はどこで、今はどのくらいの時間だろうか。

寒さを感じるし外からの光が漏れてない事からまだ夜か。


身体は拘束されていないな。

衣服は……

上半身のボタンがいくつか外されている位で他は変わりがない。

ちゃんと重り入りのブーツも履いている。


万が一の事がよぎり、不安になりズボンの下を確認する。


……よかった、大丈夫だった。


え?


何かって? 


ナニがだよ! 言わせんな恥ずかしい!


……ふぅ。


さてと。何でこんな状況に置かれたか考えないとな。

自分の身体が色々と大丈夫なのを確認できたので、僕は気持ちを落ち着けて考えを巡らせた。


あ。


恐らく攫われたであろうこの状況下で気持ちが落ち着いているってのもなんか変な感じだね。

おもわず苦笑する。


鍛錬の成果が出ているのかな。


命の危険とか感じて、やたら不安になるとかパニックになるとかあると思うんだけど、

そういうのを感じずに普段生活しているような感覚で今いる事に気が付いて、ちょっと自慢気な笑みに変わる。


それにしても寒いな。

身体を動かして体を温めよう。


運動前の柔軟体操もどきを行ない、体を温めていく。


屈伸……アキレス腱伸ばし……足首手首を回し関節の動きを柔らかくしたら

右足を天高く掲げその爪先に左手を伸ばす。


ガタガタッ

その時いきなり目の前の扉が開いた!


ワ~オ☆


僕は右足を上げた態勢のまま固まった。

ズボンで良かった……スカートだったらパンツ全開だったところだ。


扉を開けた誰かも目の前の光景に固まったようだ。

目を見開き口をあんぐりと開けたまま動かない。


あ、と思った時には僕の身体は一足飛びにその誰かに向かっていた。


「ライダァァァキィィィィッッックッ!!!!!」


渾身の飛び蹴りが誰かにクリーンヒットし吹き飛ぶ。後ろにも数人いたみたいで短い叫びを残し巻き添えを喰らって通路向こうの壁に叩きつけられた。


さすがに僕の着地と同時に爆発したりはしなかった。

ま、当然か。特撮と現実をごっちゃにしてはいけない。


相手が動き出す前にさっさと逃げてしまおう。


人がいなくなって空いた扉をくぐり通路に出る。ちらっとうずくまっている人の山を一瞥した。三人か。


僕の蹴りを喰らった奴は完全に沈黙していた。2番目の奴は体格のおかげか後ろの人間がクッションになったおかげか意識が戻りつつあるようだ。

3番目の奴は二人分の質量を喰らい、まともに壁に叩きつけられたようで全く動かない。


折り重なった人影の近くにまだ明かりの消えていないランタンが転がっていた。


この国では蝋燭か油を使って夜間の照明に利用している。ランタンも同様だ。

倒れても明かりがついたままだという事は油だろう。漏れた油に引火でもしたら大変だ。


僕はランタンを縦置きしその周りを見る。幸い油漏れはないようだ。


ほっと息を吐いてふと視界に入った人物の顔を見やる。明かりに照らされたそれは……


美女ッ!!!


しかも銀髪ッッ! さらに褐色の肌でダブルボーナスッッッ!!


カタッ


しまった喜んでる場合じゃなかった。

音のした方を瞬間的にみると真ん中に挟まれていた男が体を起こし始めている。


僕はランタンのある辺りの床を大きく踏み込み、ワザと大きな音を立てる。


男が音に振り向く動作の死角を縫うように背後に回り即座に接近。

右の腕を肩口から相手の首に巻き付く様に回し左の上腕を掴む。

左手で相手の後頭部を押さえ、自分の頭で左手ごと相手の頭部を押し込む。


裸締めの完成だ。


しかし押しが足りないのか相手がなかなか落ちない。

僕は全体重を相手の頭にのせるように立ち膝状態から足を延ばし、さらに押し込む。


小さな呻きが聞こえたかと思ったら急に抵抗がなくなった。


僕は締めていた腕を離し、少し間を取って観察する。

反応はないな。


やり方自体は知っていたものの実践する機会が無く本当に効くのか疑問だったが、何とか上手くいって良かった。


男も僕のような美少女に締め落とされて本望だろう……。

おっぱい無い洗濯板だけどな!!! ちくしょう! 今に見てろよなっ!!


……はぁ。


とにかく、これでまた三人とも動かなくなったので、さっさとここを……、


先程の美女が目に映る。


実はこの国、褐色肌の女性がほとんどいない。

いたとしても大体が南方からの交易商人に属する人々で、用が済んだらいなくなってしまう人達ばかりだ。


どういう経緯でここに褐色美女がいるのかは謎だが、これは千載一遇のチャンスである。

幻と思い諦めていた宝石を探し当てた気分だ。褐色万歳!


滾る欲望を押し込め、伸びている男二人の無力化を図る。


腰からベルトを抜き取り、ズボンを膝までずらす。

これは別に男のパンツに興味があるとか、さらにその中に関心があるとか、そういうのではなく、単純に歩きにくくする為の方策だ。


僕は女の身体ではあるが、未だ心は男のつもりである。たぶん。

僕が興味があるのは女性であって、男にはない。僕はゲイではない。


男の両手を後ろ手に回し、手首を交差させて抜き取ったベルトでグルグルに巻いて穴で留めておく。


出来れば猿轡も噛ませておきたいな。声上げられたら面倒だし。


通路を見ると僕がいた所とは別の、扉が開きっぱなしで明かりが漏れている部屋があった。


なるべく音を立てずにささっと移動して、中の様子をうかがう。

まぁ、あれだけ大きな音立ててもあの三人以外に人の動きが無いのだから、大丈夫だと思うけど。


中は簡素な宿泊場所っぽいものだった。

丸テーブル、木製の椅子、板張りのベッド。一人が寝起きする最低限のものがあるだけだった。

例えば、森で狩りをする時に一時的に利用する感じの。


手ぬぐいっぽい布を何枚か見つけたので持ち出して、猿轡と目隠しに使う。


拘束を済ませたら、男共を僕が転がされていた部屋へ押し込む。

さすがに成人男性の重さを持ち上げることは出来ないので、引きずって部屋の中に入れる。

ちょっと冷たいけど我慢してねー、と心の中で呟いて部屋を出た。


あ、念の為この部屋の明かりは消しておこう。

目が覚めて真っ暗だったら、なお混乱するだろうし。その分こちらが逃げる際の時間が稼げるかも、だし。


鍵のない扉を閉めて、残った一人に目を向ける。


フヒヒ。


思わず声が漏れた。種別:悪徳商人系


美女の左腕を自分の肩に回し、体と足を担ぎ上げる。いわゆるお姫様抱っこだ。

意外に軽い。


森の中を移動する為だろう、男性と同じようなシャツにズボンといった服装なので肌の露出がほとんど無い。

ま、そこは後のお楽しみだ。剥いたらどんな果実が現れるのだろうか……ワクワクが止まらない。


デュフフ。


ヨダレが垂れそうになるのをこらえて、先程のベッドがある部屋まで移動し美女をそこに寝かす。


恐らくは攫った側だろうから、攫われた女の子みたいに恐怖で委縮しそうにも無いので、

部屋に残った布でベッドの上下の柵に両手両足を縛り付けておく。


僕の安全の為だ。他意は無い。無いったら無い。


作業を完了し額の汗を袖で拭い一息つく。


改めてベッドの上の美女を眺める。

先程より光源が明るいので、はっきりとその容姿を見ることが出来る。


銀色の長髪で肌はチョコレート色といった感じの褐色。日の光の下で見たら映えるだろうな。

顔は少し大人びた印象を受ける中々に整った顔立ちだ。化粧っぽいものは見られないので美女レベルは高い。

耳が長かったら完璧にダークエルフだよな。僕の大好物の一つだ。


何度も言うがファンタジーな世界ではないので当然エロフ……エルフやドワーフといったRPGでお馴染みの異種族は存在しない。

幻と思い諦めていた宝石、とはそういう異種族成分も含む。


是非ともお近づきになりたい。


上下ともに少しダボっとした服装なので、正確な体のラインは分からない。


だが上半身に備わった二つの巨大な山とシャツによって結ばれた頂点からの稜線は正に、天にそびえる神々の山脈!

仰向けになっているにも拘らず空を突き刺す様に型崩れが少ないのは、スバラシイッッの一言に尽きる。


ユーニスやお母様は柔らか系のおっぱいなので、仮に仰向けになった場合胴体の曲線に沿って横に広がる。重力には勝てないのだ。

確か脂肪が発達しているか乳腺が発達しているかの違いなんだっけ。


おっぱいにブラジャーは必須の装備だ。より良いおっぱいの維持の為にも是非自身の体に合った物を身に着けて欲しい。

おじさんとの約束だ!


……なんか、変な方向に意識がそれた。なんだよおじさんって。


目の前の美女を見る。

まだ意識が戻っていないようだ。


ふとどんなブラジャーをしているのか気になった。

これだけしっかりと重力に負けることなく張りのある形を作り出しているそれを。


ベッドは意外と横幅があるので、ベッドの脇からボタンを外そうとすると無理な姿勢を強いられる。おそらく腰にクる。


仕方が無いのでベッドに上がり、美女の腰辺りに馬乗りになって胸のボタンを外す。

うん、仕方が無いのだ。無いったら無いのだ。


どんなおっぱいが現れるのかドキドキしながら丁寧に外していく。興奮が抑えられない。下半身が熱を帯びるのを感じる。


「ん……」


もう少しで全てのボタンを外し終える、その時だった。


ガタンッ


「お前っ! 何してやがる!!」


いきなりの怒声に僕は思わず全身が硬直した。

人に馬乗りになった状態で顔は赤く上気し口元に引きつった笑みを作ったまま。





ヤバい。逃げるのを忘れてた。


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