僕がリーダーだ!
ゴブリンに圧し掛かられてナイフを振り下ろされそうになっているが必死に手首をつかんで耐える。
喉を押し上げて上体をそらし空いたスペースに足を入れて蹴り離す。
そこにカレンが《ファイヤーアロー》を放つ。
ゴブリンの顔面に火矢が当たり悶え苦しんでいる。
続けてユキとミズハが《アイスバレッド》と《ウォーターバレッド》叩き込んだ。
ゴブリンの腹がやぶれてしばらく苦しんでいたがやがて絶命したようだった。
倒すことは倒したが、僕の状態はドロドロに汚れていてとてもスマートに勝てたとは言い難かった。
彼女たちも勝利の喜びはなく何となく沈んでいる。
きっと彼女たちの中ではもっと楽に敵を倒したりする予定だったのだろう。
実戦経験も初めてではなかったのだろうが、優秀な騎士が護衛についていたはずだ。
気まずい沈黙の中、いつまでもこうしていられないので行動しようかと立ち上がるとミズハが寄って来て《浄化》を掛けてくれた。
「さっきの3匹も素材と討伐証明部位を取っていなかったし集めて死体も処理しようか」
死体もきちんと処理して置かなおいとアンデットになったり他の魔物の餌になるしね。
ゴブリンの死骸を一ヶ所に集めて討伐部位の左耳と魔力の結晶<魔石>を心臓から取り出す。
他の部位は畑の肥料位しかならないから焼いてしまうことにしよう。
「カレンすまないけど火で焼いてもらえるかな?」
カレンは黙ってうなづくと焼き払ってくれた。
みんなも手伝ってくれているけどやっぱり元気がないな。
「カレンこれからどうする?」
「もう帰りましょう」
「じゃあそうしようか」
そう促すと二人もうなずいて帰り支度を始める。
初めての狩だったけど散々だったな、でもみんな初めてだったのだしこんなものかもしれないな。
帰り道も特に変わったことはなかった。
街の近くまで戻ってきたのでみんな一息つけたみたいだ。
僕はこの後どうするか考えていた、パーティーに残るか否かだ。
ハッキリ言ってこのパーティーは狩りにはむいていないダンジョンも似たようなものだろう。
騎士隊の後ろで支援攻撃をするような編成なのだ。
大規模な戦闘なら個々の能力の高い彼女達はきっと活躍できるだろう。
しかし小規模戦闘には向いていないのだ。
ふとそんなとき彼女たちが何を考えて魔術師三人でマナヒーラーを募集したのか気になった。
彼女たちだって気づいたはずだ。
誰だってそう思うのだから。
この場で聞いてしまってもよかったが、今日知り合ったばかりの僕が簡単に聞いてしまうのはなんだかいけない気がした。
よし決めた!。
そうこうしているうちに街に戻ってきていた後はギルドに報告にいくだけだ。
その時黙っていた彼女たちが声をかけてきた。
「エスト今日は大変な目に合わせてごめんなさい!自分たちの考えがいかに甘かったか分かったわ」
「それであの……」
カレンと一緒に頭を下げる3人の言葉を切って僕はこういってやった。
「さっさとギルドに戻ってこれからの相談するぞ!お前らに任せとくと命がいくつあっても足りないからな!」
「明日からは僕が作戦を指示する、僕がリーダーなんだから責任は僕が持つ!いいね、みんな?」
3人はキョトンとしていたが目を潤ませて満開の笑顔で返事してくれた。
「「「はい!」」」
折角入れたパーティーだ頑張ってみようと思う。