ほら余裕だったじゃない!
斥候役を任されてしまった僕だが敵の誘い出しなど当然初めてでとても不安だ。
しかし、流石に生活がかかっているのと、一匹も狩れず依頼失敗ではかっこ悪しぎる。やるしかない。
しばらく僕が先行して策敵をしているとゴブリンが3匹戯れて騒いでいるのを発見した。
幸いまだ気付かれていなかったので、後ろに合図をして身をかがめて背の高い草むらの陰に隠れて最終確認を行う。
「ゴブリンが3匹だけど本当に大丈夫なの?」
改めて確認するが、彼女たちは自信満々で3匹ともここまでおびき出しなさいと指示してきた。
彼女たちが落ち着いているのに、僕だけがビビっていたのでは、かっこ悪いので腹を括ろう。
彼女たちが精神統一を始めたので、僕も身を伏せてゴブリンたちに近づく。
投擲用の石をぶつけて大回りしながら彼女たちの所まで引き連れていくことにする。
ゴブリンの後頭部めがけて思い切り投げつけた。
後頭部に思い切り石をぶつけられたゴブリンが転げまわり残りの二匹が激高している。
僕はこっちにこいよと挑発しながらゴブリンたちを彼女らの正面に連れて行く。
「みんないくよ!」
「任せなさい!《ファイアーストーム!!!》」
僕が敵を連れて自陣に戻ると最初に魔術を放ったのはカレンだった。
僕の背後で炎の竜巻が巻き起こりゴブリンたちを焼き尽くす。
明らかにオーバーキルだし、僕の背中もものすごく熱いのだが。後頭部禿げてないだろうな。
「ちょっとまっ」
「……行くよ《アイスストーム!!!》」
僕が止める間もなく、続けてユキが魔術を放つ。
氷の飛礫がゴブリンたちの死体と僕に容赦なく襲い掛かる。
中心部ではないため比較的小さな礫しか飛んでこないが、頭を抱えて蹲る。
しばらく耐えていると勢いが弱まっていきホッとするどうやら助かったようだ。
そこに絶望的な声が聞こえてくる。
「お待たせ~《ウォーターフォール!!!》」
ゴブリンたちの死骸と僕を容赦ない水流が押し流していった。
味方の魔術で死ぬとかあり得るか……あるなコレ。
無残にズタボロにされたゴブリンたちの近くで、ボロ雑巾になって横たわって居ると、慌てて3人が駆け寄ってきた。
見上げると苦笑いでそっぽ向いてほっぺをポリポリしているカレンと若干涙目のユキ、不思議そうな顔で首をかしげているミズハがいた。
畜生かわいいな。と思いながらひざ上のグリーブと丈の短いスカートの中に覗く布に目が行って思わず呟いた。
「白、縞々、黒か……ってく」
最後に目に入ったのは真っ赤な顔のカレンの靴の裏だった。
こうして僕は死んだのだった……いやしんでない。