いっぱいください!
だいぶ苦戦したが人類未踏破層についた四十階層の守護者を人類は突破できていないのだ。
騎士と魔術師の比較的ベーシックなパーティーが数々挑んで返り討ちにされている。
強力な再生力を持つ一つ目の巨人だそうだ。岩のような固い皮膚に強力な膂力を持っている。
接近戦では傷つけにくく瞬間火力で倒すのには魔力が大量に要る。
過去にはマナヒーラーを交えて戦闘したが結局後衛を守り切れずに崩壊してしまったらしい。
最近では挑戦するものもすくない。
僕らは火力の面では魔術師の三人の成長が目覚ましい。十分に押し切れるはずだ。
魔力も僕がいるので余裕がある。
後はいかに敵の足止めをするかだろう。僕が挑発して連れまわしてもあっさり標的を変えられたら終わりだ。
物理的に足止めしなければ。
ユキの氷で凍らせるのが一番ぬなんだろうか。
上手い手はないかとしばらく悩んでいると。
「エストくん、私に足止めやらせてもらえないかな~?」
ミズハが珍しく提案してくる何か手があるのだろうか。
「いっぱいくださいね~」
顔を赤らめてはにかんだミズハにやさしく手を取られる。なんだかこっちも照れてしまう。
背に張り付けた妹から魔力を受け取りながらミズハに魔力を注いでいく。
「んっ」
ミズハは使い魔に魔力を注いでいるようでスライムがみるみる大きくなっていく。
巨人の腰ほどに大きくなったスライムがヌラヌラと蠢いている。
「この子に足止めさせますね。」
ズルズルとはって巨人の頭上に移動していく。
べちょりと不意打ちで巨人に覆いかぶさる。戦闘開始だ。
上半身にはカレンが炎の槍をとばし地面から氷柱を生み出し串刺して凍らせていく。
二人の腰を抱き魔力を注いでいく。二人は若干驚いていたがこうするしかない。
ミズハもスライムの制御をしながら汗を垂らしていた。
しばらく一方的に攻撃を重ねると巨人は力尽きる。
こうしてあっけなく人類の踏破エリアが更新された。
「やった」
僕は二人の腰を強く抱きしめると。
ひゃっと可愛い悲鳴が聞こえてきたが攻めはされなかった。
僕の首に巻かれていた腕がぎりぎりと絞められたので慌てて離す。
今回敢闘賞のミズハは、ふたりの魔術を吸収して巨大化したスライムになつかれていた。
ムニムニと形を変えるミズハの二つスライムを見ているとまた首がしまった。
ん…とかひゃっとか聞こえてきてよく観察したいところだが割と本気で首を絞められ意識を手放していた。
みんなお疲れ様。
ヒカリに膝枕されて介抱されたが起きた瞬間にまた妹に背中に貼りつかれて堪能できなかった。
可愛い奴め。ヒカリもありがとう。
こうして僕らの迷宮攻略はやっとスタート地点についた。




