初撃で沈めるからだいじょーぶ!
「えっと魔術師三人にマナヒーラー?」
困惑した僕が尋ねると
「そうよ?」
若干得意げな顔でカレンが答えた。なんでそんなに得意げなんだ?
「前衛というか盾役は?」
「私たちはみんな中位の魔法までつかえるわ。初撃で沈めるから大丈夫よ!」
「……バッチリ」
「まかせて~」
それでこんなにドヤ顔なのか。流石に魔法学校を出ているだけあって結構な実力はあるらしい。
この街では中位魔法を使える魔術師は珍しい。それだけの実力があれば迷宮都市などでも通用するからだ。
それだけの実力があればこんな僻地にわざわざくる必要もないと思うのだがそう尋ねると
「私たちは冒険がしてみたいの、いちから自分たちだけでやったほうが楽しいでしょ?」とのことだ。
どこかのお嬢様かよと口に出してしまいそうになるが、実際魔法学校に入るためには多額の入学金や学費が必要になるので結構な家柄なのかもしれない。ちなみに男は騎士学校にあたる。
卒業したてのお嬢様の冒険ごっこに付き合っていたら身が持たないんじゃないか?ここは潔く諦めよう。
「ちょっと条件が合わないみたいなので僕はこれで」
そう告げて去ろうとしたら両脇と後ろからぎっちり掴まれた。結構デカいな……いやだめだ。リスクがでかすぎる。逃げようともがいているとぷにぷにとした感触がまた素晴らしいな……くっ卑怯な、離せ。
「平気だってば!君は私たちが連戦できるように魔力を補給してくれればいいから」
「……触り放題」
「てれるね~」
触り放題?僕がぼーっとしているとあっという間にギルドのカウンターに引き擦られてパーティー登録と初めての討伐依頼を受けたのだった。
駆け出しの街ヘリオスは東に魔物の生息域である大森林に面しており、たまにはぐれて出てくる魔物や境界の平原辺りに住み着く知能の低い亜人種たちを、定期的に排除するために冒険者への依頼は少なからずある。
強力な魔物に対抗できるように騎士隊も配置されているがそれだけではとても手に負えないので、亜人の排除は冒険者が担当している。
1時間ほどかけて亜人の徘徊する地域まで向かうことになるが、何が起こるか分からないので入念に準備をする。
僕も闘気をある程度持っているがとてもではないが戦闘職のようにはいかないので護身用と剝ぎ取り用の短剣と皮の防具、回復薬、食料などを準備した。
昨日の夜初めてのパーティーが楽しみで5回位確認してきたので準備はバッチリだった。
言わないけどね。
なんだかんだで初パーティに興奮している僕だったがギルドからそのまま付いてくる彼女たちを見てそこはかとなく不安を覚えるのだった。
「軽装過ぎじゃない?むしろ手ぶら?」
彼女たちは制服にマントとワンドをぶら下げているだけだった。