パーティー組みませんか!
『パーティメンバー募集!マナヒーラー、一名。』
そんな張り紙をギルドで見かけて思わず食いついてしまったのは仕方のないことだった。
僕はエスト。職業はマナヒーラー。
闘気を魔力に変換できるレアな職業だ。素質があるものは滅多にいない。
浮かれて、田舎を出て冒険者に登録したのが一か月前。
未だにパーティーが見つかっていなかった。
なぜそんなことになったのかというと、この駆け出し冒険者の街ヘリオスではマナヒーラーは希少すぎて極端に募集がすくなかったからだ。
だいたいのマナヒーラーは首都や迷宮都市といった大都市で大型クランのバックアップ要員として雇用されるのが一般的でその女性がほとんどと言うことである。
あまり戦場に出ることのない職業だ。冒険者になるものなど滅多にいない。
この世界の人間は男性は闘気、女性は魔力。一部の例外や亜人種を除いて大概はそう分れている。
男性の闘気を受け取り女性に魔力として受け渡す。
魔力を消費する魔術師達にとって有用だが数が少なくあまり当てにできない存在がマナヒーラーの立ち位置だった。
ヘリオスについた時には路銀もほとんど底をついており移動もできず。
駆け出しの僕には知り合いなどもおらずパーティーが見つからないまま、薬草取りやドブ掃除などの雑事の依頼をこなし宿代と食事代を稼ぐ毎日だ。
そこにこのパーティー募集は渡りに船だった。
翌朝、ギルドによる仲介で軽い面接を行うため、併設された酒場で待っていると後ろから声をかけられた。
「あなたが、マナヒーラー?」
「……男の子?」
「めずらしいねぇ~」
線が細く黒髪黒目童顔だがこれでも立派な男子であると自負している。
僕が少しムッとしながら振り返ると、やけにスカート丈の短い白い揃いの制服に派手なマントを羽織った3人の女の子が立っていた。
「はじめまして、マナヒーラーのエストです。よろしくお願いします。」
微妙に失礼なことを言われたがこれから一緒にやっていく仲間なので丁寧にあいさつすると3人も自己紹介してきた。
「私は紅蓮の魔術師、カレンよ。一応募集主だけどパーティーを組むのは初めてよ。今年魔法学校を卒業して同じクラスだった二人と冒険者を目指すことにしたの」
腰まである真っ赤な髪とルビーのような瞳が印象的な気の強そうな女の子、カレン。
「……氷雪の魔術師、ユキ」
肩で切りそろえた水色の髪と淡い青色の瞳が儚い印象の女の子、ユキ。
「清流の魔術師のミズハだよ~。よろしくねぇ~」
濡れたような青い髪を胸の前にひと房垂らした、柔らかい印象の女の子、ミズハ。
やや痛々しい二つ名と共に名乗りを上げる彼女らの顔は整っており、この世界の女性は魔力を反映したきれいな髪をしている人が多いが彼女らの髪はとても鮮やかで思わず見惚れてしまった。
「ちょっと聞いてる?しっかりしてよね!」
「……ムッツリ?」
「男の子だもんね~」
「あ……大丈夫です」
ハッとして返事をしたが若干どもってしまってやや顔が赤らむが、ここではっきりさせておかなければならない。
「あのそれでほかの人は?」
僕がそう問いかけるとかレンが若干眉を顰めて答えた。
「これで全員だけど?」
「は?」
思わず聞き直す。
「ぜ・ん・い・ん!」
「……フルメンバー」
「みんなだよー」
みんなで元気に答えてくれた。
「……バランス悪くないですか?」
僕の受難は今始まった。