傷ついた剣
______オールドスター,それは古き英雄によって啓かれた力,それは誰にでも発現するわけではなく定められた,あるいは自ら啓くことにより発現する.
しかしそれ誰もが同じ力を持つわけではなく得た者の人間性により大きく姿を変える.それは言わば個性であり,呪いでもある.
オールドスターは人間性を蝕んでゆく.人間性を全て失ったものは妖魔として現世を生きる……
ミッドチルダ国,ここでは国王の栄誉の下に騎士団が作られていた.
その騎士は主に,国の安全を護るため,そして世界に王の栄光をもたらす,という使命を司り,組織された.
騎士団の名は[白金の団],その長は[ナゲイル],彼は策士であり自ら血を流すことはない.
その代わりに血塗れ隊と呼ばれる,主に先立って戦場を突破していく部隊の長,[ガリク],彼がナゲイルの右腕となっている.
ある日,王によりミッドチルダの西にある小国,レイビン国を侵攻を命じられた.
[アレク],この物語の主人公である彼は血塗れ隊所属の新兵である.彼はその前まで腕っぷしの強いチンピラであったが酒屋で幸か不幸かガリクに喧嘩を売ってしまい,完敗してしまう,がその腕をガリクに認められ,この戦いで兵隊デビューすることとなった.
あたりで血が流れる.戦いはすでに始まっている.戦はあとレイビンの城を落とすことで終結する.ナゲイルの命令により,血塗れらは正面突破で敵陣を切り拓く.
「うおおおおおお!」
ガリクの雄叫びが響く.彼のまるで丸太のような戦槌は鎧もお構い無しに骨ごと粉砕してしまう.
アレクもその続いていく,彼の武器は大剣だ,ガリクの戦槌と比べると見劣りしてしまうが,それでもかなりの大きさである.
ガリクが叫ぶ,
「我がオールドスターを受けてみよ!」
ガリクの前を扇状に炎が燃え進んでいく.
彼のオールドスターの性質は炎である.
敵兵が言う,
「皆!恐れるな!」
そう言うと,ソイツの前から滝のように大量の水が吹き出し,大波を立てて襲ってきた.
「くそったれー!」
ガリクは全力で背後にいる俺たちを炎で大波から守ろうとした.
しかしガリクの思いは虚しく,大量の仲間が流された.
「お前では俺には勝てない」
敵兵,おそらく身なりからして敵兵の長であろう彼はそう言った,だが俺から見てもそれは事実だった
「隊長,ここは逃げましょう,分が悪すぎます」
しかしガリクは動かなかった,戦意を失っているようには思えなかった.
「戦神の武!!」
ガリクから炎が吐き出るように出た.俺にも当たりそうな勢いだったが,瞬きする間にガリクは敵に飛び向かっていった.
空から振り下ろした戦槌は地面に叩きつけられると,地面を割っていった.直撃を避けた敵もこれに体をグラつかせた.
「フン!」
さらにガリクが左手を突き出し,炎を扇状に出したが,さっきとは違う圧倒的な炎の大きさに相手もなす術がない,そう俺は思っていた.
「甘いんだよォ!」
さっきの大波の水を敵の足元からどんどん凍らせていった.ガリクの全身を凍らすのに数秒も要らなかった.
「ガリクーー!」
叫びは虚しく響いた.ガリクは敵の戦斧によって頭からバラバラに割られたのだ.
「おい生き残り共……降伏するか?」
動けなかった.恐怖と死が俺を縛った.そして怒りと憎悪が俺を動かした.
「てめえ……ぶっ飛ばす!」
俺は一気に走って敵の懐へ走りこんだ.水を蹴り大剣を構えながら.
「愚かだな」
そう言うと,俺の足下の水が襲ってきて体をガッチリと縛った.
「そのまま虫のように潰れて死ね」
その言葉は俺を怒り狂わせた.その怒りのせいなのか,頭の中でブッツンと何かが切れた.
段々と【死】のイメージが襲う,【死】のイメージたる血塗られた筋肉の繊維が見えている頭蓋骨が,俺を食らった,そう思った.
そのとき,俺の体に電気が走る.
直感した,これが何なのか,どうやれば扱えるか,
ど う す れ ば ア イ ツ を 殺 せ る か
「ほう,お前も見たのか何かしらの【イデア】を」
「すぐに黙らせてやる」
体からは溢れんばかりの力が湧いてくる.
______________________________気づいたら俺はベッドの上に横たわっていた.
体からは雷をまだ感じている,アレは夢では無かったらしい.
横には手紙があった
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アレクへ,
此度の戦ではお前が大いなる活躍をした聞く,よってお前を血塗れ隊の隊長に命ずる
p.s. イデアを見たのだな,後で詳しく話を聞こう
白金の団 団長 ナゲイル
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←To Be Continued