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青い花とエプロン

作者: 津島美咲

自然に目が開いた朝。

いつもの声が聞こえない。

僕は慌てて布団から出て台所へ向かった。

「お母ちゃん、どうして起こしてくれなかったのさ!」

お母ちゃんはいなかった。

いや、何かがおかしい。僕は家の外に飛び出した。

周りがすべてグレーに見える世界。少し離れた場所に見える信号機の点滅だけがカラーに見える世界。

言葉が出ない僕はサンダルのままとにかく近所を走り回った。

昨日お弁当のおかずのことでお母ちゃんに文句を言ったからか…いつもちゃんと起きないからか…テストの点が悪くて見せなかったからか…

「お母ちゃーん!お母ちゃーん!」

最近僕が悪い子だからこうなってしまったのかと、ポロポロこぼれる涙もぬぐえないまま走り続けた。


どれだけ走っただろう。足の小指が真っ赤で痛くなってきた。誰もいない世界。1人ぼっちの世界。

今がお昼なのか夕方なのかもわからない、どこまで行っても信号機の鮮やかな点滅だけがグレーの世界を色づかせていた。


川原の近くに来た時、ふと目にとまる青いものが…。近寄ってみるとそれは小さな野花だった。よく見ると少し元気がない青い花。僕は川原の水を両手ですくい、その花にかけた。今まで花には興味はなかった僕だけど、吸い込まれるようにその花の横に腰かけた。その花の青さはお母ちゃんのエプロンの色に似ていた。また涙が溢れてきた。

疲れた僕はゆっくり目をつぶり、そのまま青い花の香りだけに包まれながら眠ってしまった。


「ほら!早く起きなさい!遅刻するわよ!」

目を大きく見開くと朝の準備でバタバタしているお母ちゃんの姿が。僕はお母ちゃんのお腹に抱きついた。

「どうしたの?今日は珍しく一回で起きたね。怖い夢でも見たの?早く顔洗ってご飯食べなさい。」

抱きついたお母ちゃんの青いエプロンには、水がかかったあの青い花びらが1枚ついていたのに気づいたが、僕は暫くお母ちゃんのお腹から離れなかった。

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