パン屋さんを目指して
おひさまが高く昇りました。お昼の時間です。
お腹が空いたごっちゃんは、食べ物を探してウロウロ。
すると、猫のニャアニャアが窓の外からコツコツ呼んでいます。
「素敵なパン屋さんが川を越えた所にあるんですって。
一緒に行かない?」
「へえ、行ってみたいなあ。僕、お腹ぺっこぺこ」
早速ごっちゃんは、ニャアニャアと出掛けることにしました。
ことこと歩くと、お腹も鳴ります。
ことこと、ぐー。ことこと、ぐー。
歩いていると、クマさんに会いました。
クマさんはちょっぴり哀しそうな顔をしています。
「クマさんクマさん、どうしたの?」
「美味しいハチミツを、ミツバチさんにもらったんだけど、
手が汚れちゃって上手く食べられないんだ」
あらあら、クマさんのふかふかの胸には、ハチミツがべっとり。
「だったら僕たちと行こうよ。パンに塗って食べれば、きっと上手く食べられるよ」
「へえ、行ってみたいなあ」
こうして、ごっちゃんとニャアニャアとクマさんは歩き始めました。
ことこと歩くと、お腹も鳴ります。
ことこと、ぐぐー。ことこと、ぐぐー。
更に歩いていると、キツネさんとタヌキさんに会いました。
あらあら? 二人とも何だか怒り顔。ケンカの最中みたいです。
「どうしたの?二人とも」
「美味しいご飯を作ったのに」キツネさんが言います。
「お皿が、一つしかないんだ」タヌキさんも言います。
見れば二人とも、手にフライパンを持っています。
でも、二人の真ん中にあるお皿は一つだけ。
「一緒に乗せられないの?」
「そんなことをしたら、味が混じっちゃうよう」
キツネさんとタヌキさんは、むうう、っと相手をにらんでいます。
「困ったなあ」
ごっちゃんは考えて、ふと、二人のフライパンの中身を見ました。
「キツネさんは、焼きそばで、タヌキさんはハンバーグを作ったんだね?」
「そうさ。僕は焼きそば」
「僕はハンバーグ」
「だったら、僕たちと行こうよ。それぞれ、パンに挟むと良いよ。
そうしたらお皿が無くても、ちゃんと食べられるから」
「へえ、行ってみたいなあ」
こうして、ごっちゃんとニャアニャアとクマさんとキツネさんとタヌキさんは歩き
始めました。
ことこと歩くと、お腹も鳴ります。
ことこと、ぐぐぐー。ことこと、ぐぐぐー。
ようやく、川の近くまで来ました。
一本橋を、ゆっくりゆっくり歩きます。
橋の上は、ふらふら、ぐらぐら。お腹も一緒にぐるりんぱ。
ふらふら、ぐるぐるー。ぐらぐら、ふふふー。
えい、っとジャンプをして、ようやく川の向こうに着きました。
「ええと、パン屋さんはどこかな?」
「どこかな?」
「どこかな?」
みんなで辺りを見回すと…。
「ここここ、ここだよう。カッパのパンや、カッパンヤにようこそ!」
池の中から声がして、なあんとカッパさんが飛び出してきました。
「いらっしゃいいらっしゃいいらっしゃいませ!
美味しい美味しい美味しいパン屋さんだよ。うむうむ、言わなくても分かるさ。
はいはい、細長いパンと、ふっくら丸いパンと、たっぷり大きなパンだね」
カッパさんは、パパパパッと、美味しそうなパンを出してくれました。
細長いパンには、焼きそばを挟んで焼きそばパン。
丸いパンには、ハンバーグを挟んでハンバーガー。
大きなパンには、ハチミツを塗ってハチミツパン。
そうして…。
「うむうむうむうむ!ごっちゃんは、メロンパンがだあいすき、っと。成る程ね。
ほいほいほいよ、メロンパン!」
そう言ってカッパさんは、大きな大きなメロンパンを出してくれました。
カッパのパン屋さん、カッパンヤさんのパンはふかふか香ばしくてとおっても美味しかったんですって。
そうそう、猫のニャアニャアはこっそりシチューを持ってきていて、
シチューのルーにパンをちょんちょんってしながら、美味しく頂いたようですよ。