おひさま写真館
冬が終わり、だんだん暖かくなってきたある日。
すうちゃんはパパと一緒にお散歩に出掛けました。
風はまだ少し冷たいけれど、お日様の光がじんわりと二人を包みます。
「ねえパパ」
すうちゃんは聞きます。
「お外を暖めてるのってだあれ?」
パパは言います。
「お日様だよ。お日様が空気を暖めてくれているんだ」
「でも冬でも晴れている日はあったよ?
冬の晴れの日はこんなに暖かくなかったよ?
それに、夏の日は晴れてるともっと暑かった。同じお日様なのに暖かさが違うのはどうして?」
パパは、うーんと考え込んでしまいました。
「そうだねえ、どうしてだろう」
そこに、ぶぅんという音がしました。見るとテントウムシさんです。
「どうしてお日様の暖かさが違うかって?人間はそんなことも知らないのかい?」
すうちゃんはちょっとむっとしてテントウムシさんを見ます。
「だって本当に分からないんだもの」
「そうかい、だったらオイラが教えてあげるよ。着いておいで」
そう言うとテントウムシさんはぶぅんとまた飛んでいきます。
すうちゃんとパパは慌ててそのあとを追いかけました。
着いたところは草むらでした。その中に、小さな小さな小屋がありました。
そこには「おひさま写真館」と書いてあります。
中には沢山のお日様の写真が飾ってありました。
雨を降らせているお日様。
風を吹かせているお日様。
冷蔵庫を開けて雪を取り出しているお日様。
雷様と音楽会をしているお日様。
「さあ、ようく見てごらん。どうしてお日様の暖かさが違うか、分かるはずさ」
テントウムシさんに言われて、すうちゃんはじいっと写真を見つめます。
にこにこ笑ってるお日様。
少し恥ずかしそうなお日様。
元気いっぱい歌っているお日様。
雲に隠れてお昼寝をしているお日様。
沢山のお日様の写真。
「あっ」
思わずすうちゃんは声をあげました。
「お日様の顔がみぃんな違う!」
パパは「えぇ?」とすっとんきょうな声をあげて、写真をじいっと見つめます。
「よく分かったねぇ」
テントウムシさんがそう言ってにっこり笑いました。
「その通り。実はお日様は365人兄弟なのさ。1年をかけて1人ずつ、お空に遊びに来るんだ」
「だから暑かったり寒かったりするの?」
すうちゃんの質問にテントウムシさんは頷きました。
「その通り。365人兄弟のお日様の1番目兄さんは雪遊びが好きなんだ。65番目兄さんは風が好きで、70番目兄さんは歌が好き。157番目兄さんは夕焼けが好きで265番目兄さんは雲のお布団が好き」
「みんな違うの?」
「そうさ。早起きなお日様もいれば元気なお日様もいる。色んなお日様がいるんだよ」
「そうなんだあ…」
すうちゃんはそう言うと窓からお空を眺めます。
「今日のお日様は、どんなお日様かな?」
すうちゃんの見たお日様は、優しく笑っているように見えました。
4年に1度だけ、365人兄弟のお母さんが地球に遊びに来てくれる日があるんだそうです。
その日を地球では『閏年』っていうんだって。